始まる物語46
こっちの方が素早く動けると言っても、これでは八方塞がり……だからと言って、このまま逃げ続けて万が一にでも、ドラゴンもどきが自分よりもみんなの方に狙いを変えたら……
「…………やるしかない!!!!」
火内は、空に向かって一際高く飛び上がり、
『グゥオゥゥッゥオォォオォオォォオォォォオオォォ!!!!!!』
片方のドラゴンもどきに狙いを定めると、一気に急降下する。
古典的な技、古びた考え方だが……
『ォオォォォオォォォォおぉ…………」
急降下する勢いで、相手の首を掴んでそのまま、相手の体重を利用して地面に叩き付けよう……としたが、体重差があり過ぎる……急降下した勢いは、全て巨大なドラゴンもどきに吸収されてビクともしない……
もちろん分かっていた……ドラゴンもどきと殴り合いをしていた時から、自分の拳が効いていない時から……こちらが軽いという事は十分に分かっていた……分かっていたからこそ、相手の重さを利用しようという発想が生まれて……
『ガシィ!!』
「がっ!?」
どうしようもならない状況に、ドラゴンもどきの首を掴んだまま放心していた所を掴まれてしまう。
今度は手からすり抜けられないように、しっかりと握られて……
『『ギョ…ギョ…ギョ…ギョ…………』』
二体のドラゴンもどきが、あの炎を吐く動作をするのだが、さっきよりも胸が大きく膨らみ……
『『ギョョョオォオォォオォォォオオォォォェェェェェェェ!!!!!!!!』』
「ぐぅうぅぅううぅ!!!?」
先程よりも、闇夜を明るく照らす炎が吐き出される。
まるで料理をしている時に、熱湯に触れてしまったかのような、熱による痛みが体を包む。
ドラゴンを殺すための本気の炎、そんな事をすれば火内を掴んでいる手も、無事では済まないであろうが、
『『ギョョョオォオォォオォォォオオォォォェェェェェェェ!!!!!!!!』』
それは覚悟の上、片手一本を失ってでも、ドラゴンを殺そうというのだ。
「がぁあぁぁあぁぁあぁ!!!!」
痛みを伴う炎……即死ではないとはいえ、このまま炎を浴び続けては生死に関わる。
まだドラゴンの体が壊れてしまわないうちに、ドラゴンの体が耐えてくれいる間に、何とかしなければならないのだが……自分が持ち合わせている、ドラゴンもどきより身軽という利点は完全に殺されている。
「うっ…うぅ……」
焦げる臭いがする……それが自分の体なのか、それともドラゴンもどきの手が焼けているのか……
「うぅ……」
炎に抱かれて、火内の意識が遠退いていってしまう……