始まる者達45
『ギョォオォエェエェエェェェ!!!!!!』
『ギョォオォエェエェエェェェ!!!!!!』
二体のドラゴンもどきは呼応するかのように鳴き声を上げて、手を伸ばす。
まるで引き裂かれていた恋人が再び出会えたかのように、お互いを求めて手を伸ばすが、
「そんなのに!!」
その間に挟まれるつもりはない。
何をしたいのかは明白、伸ばした手と手の間に挟み込んで、握り潰そうというのだ。
『バサッ!!』
ラブロマンスをするなら勝手にやっていろと、羽をはばたかせながら、大地を転がって魔の手から逃れる。
『『バッシン!!!!』』
ドラゴンもどきのプレスに挟まれていたら、骨が砕けていたかもしれないが、小柄な分だけ火内の方が動きは素早く、ドラゴンもどきに動きを捕らえられる事は……
『スッ……』
「なに!?」
『グッ……』
繋いだ手を離したドラゴンもどきは、火内を挟む立ち位置に回り込みと、片方は手を広げ、片方は握り拳を作る。
その光景はボクシング選手とコーチが向かい合い、
『ブゥン!!!!』
「うぉ!?」
『バッッッチィィィィ!!!!!!』
ミット打ちをするかのよう。
片方のドラゴンもどきが拳を打ち、片方のドラゴンもどきが受け止める……一見すれば無駄な事をしているように思えるかもしれないが、火内を叩き付ける事で一撃で仕留めようというのだ。
さっきドラゴンもどきが、火内に躱されて木を殴っていたが、あれは偶々では無く、木に火内を叩き付けて一撃で殺そうとしていたからこそ、避けられて木を殴ったのだ。
『ブゥン!!!!』
「このっ!!」
『バッッッチィィィィ!!!!!!』
そして、このややっこしいのが、さっきは後ろにある木に叩き付けようとしていたからこそ、ストレートに真っ直ぐに拳が飛んで来たのだが、
『ブゥン!!!!』
「うっ!?」
『バッッッチィィィィ!!!!!!』
『ブゥン!!!!』
「くそっ!!」
『バッッッチィィィィ!!!!!!』
本当にミット打ちをするかのように、受ける側の手の位置が縦横無尽に動き、それに目掛けて拳も縦横無尽に打ち込まれる。
『ブゥン!!!!』
「がっ!!!?」
速さでは補いきれない、拳の乱打が火内の肩にぶつかってしまい、火内は吹き飛ばされてしまう。
不幸中の幸いは、体の中心を殴られていたらそのまま、手の平に叩き付けられていただろうが、肩だったお陰で殴られた時の力の向きが片方に寄り、吹き飛ばされる形になった。
「ぐぅ……」
『バッサァァァァァァァ!!!!!!!!』
自分が空に逃げる事で、あのドラゴンもどきがみんなの方に行ってしまうかもと懸念して、地上で戦っていたが、ここまで執拗に狙って来るのなら少しの間だけ地上から離れても……
『『バサッバサッバサッバサッ!!!!!!!!』』
「なっ!?」
あれだけの巨体、ドラゴンを模倣しただけのお飾りの羽で空は飛べまいと思ったのに……
『『バサッバサッバサッバサッ!!!!!!!!』』
二体のドラゴンもどきは羽をはばたかせて、空に逃げた火内を執拗に追い掛ける。