始まる者達44
『シャァァァァ!!』
『スッ……』
相手を過小評価せず、自分を過大評価せずにいれば……
「ミィオ!!二人掛かりなら!!」
「小此木⁉」
『ヒュッダッン!!!!』
「うげっ!?」
この突っ込んで来た兵士にのように、足元を掬われて地面に叩き付けられる事は無い。
確かに二人掛かりなら、こちらの方が人数的には不利なのはそうなのだが、あの武器……あらゆる物を切り裂くであろう剣と、一緒に戦うというのは現実的ではない。
強力過ぎる武器。
間違って、剣を振った所に仲間が来てしまえば取り返しのつかない事態……腕を切り落としたり、あそこに転がる遺体のように、体が真っ二つになるかもしれない。
仲間を犠牲にするというのなら話は別だが、
「小此木!!」
「…………」
「もぅ小此木!!下がってるッス!!」
気絶した仲間の事を担いで、敵から遠ざける為に遠くへと投げ飛ばすあたり、仲間を犠牲にするというのは出来ないらしい……少々羨ましくも思う。
原人は、新型のパワードスーツにやられないように距離を取る。
そんな事をしているだけでは時間稼ぎにしかならないが、時間稼ぎをする価値がある。
『…………』
原人は、少しだけ目線を端に寄せて後ろの方を気にする。
この戦いの決着を付けるのは自分でなければ、向こうで人類のRLHと戦っている相棒でもなければ、ひたすら弾丸を避けている奴らでも無い……この戦いの流れを掴むのは、
『グゥオゥゥッゥオォォオォオォォオォォォオオォォ!!!!!!』
『『アァギャアァアァアァァアッァァアア!!!!!!』』
ドラゴンとドラゴンもどきの勝敗であろう。
________
『バッッギィィッ!!』
ドラゴンもどきの拳は、火内の体とほぼ同じ大きさであり、殴られた木は一撃で割れてしまう。
それは火内が殴られたら、どうなるかという暗示。
『バッッギィィッ!!バッッギィィッ!!バッッギィィッ!!』
「くっ!!」
火内がいる所に躊躇無く、ドラゴンもどきの拳が飛んで来る。
デカい体だから鈍重で当たりはしない……という単純な話ではない、確かに火内の方が素早く動いて、ドラゴンもどきの拳を躱してはいるが、それは火内の方が小さい体で小回りが利くからであり、決してドラゴンもどきの動きが鈍重という訳ではない。
少しの油断が命取りとなる……それを分かっているからこそ、しっかりとドラゴンもどきの動きを見て
「そこっ!!」
ドラゴンもどきの拳が気を殴った瞬間に合わせて、首に向かって回し蹴りをかますのだが、太くて分厚い皮膚の下に感じる、硬い骨……これでは首をへし折れない。
『ギャァオォオォ!!!!』
「このっ!?」
首を蹴られたドラゴンもどきは、首を体を大きく振り、体を大きく暴れさせて、自分の体にまとわりつく
小動物を振り払う。
質量の暴力、いかんとし難い問題。
何か策を考えなければと思うが……全てにおいて自分を凌駕している……流石はドラゴンを模倣しているだけはある……とは口が裂けても言わない。
対ドラゴンの為に、ここまで強靭に創られたのか?それともドラゴンを知るからこその、ここまでの模造品なのか?妥協の無い仕上がりのキメラに、手をこまねく事しかできない状況なのに……
『ギョォオォエェエェエェェェ!!!!!!』
もう一体のドラゴンもどきが、こちらにやって来る。