始まる者達43
触れれば容易く獲物を裂くような代物……それは気を付けないといけない物であり、気の抜け無い事態であるのだが、
『…………』
原人は溜息を吐いてしまう。
決して臆病風に吹かれた訳ではない……だが、自分達の置かれている状況が嫌になる。
仲間……と言って良いのか?
人間による弾丸の牽制を避ける者達は、真っ二つに斬られる様子を見ているはずなのに、こちらに一声も「警戒しろ」と伝えて来ない。
弾丸から避けているから、そんな暇は無いと言えばそうなのかもしれないが……
『…………』
エルフとして魔法が使えない自分達が死んでも、何とも思わないのだろう。
『パンッ!!』
原人は、手の平を一度叩いてから気を取り直してから構えを取る……こちらから仕掛けるのは、少々分が悪い……そんな気がする。
見た事の無いパワードスーツを着た相手は、余程自信があるのか、剣を鳴かせながら歩いて来る。
少し緊張するが、算段がある。
見た事の無いパワードスーツは、雰囲気的に新型なのだろう……普通のパワードスーツよりも硬く、力もある……そんなのは容易に想像出来るが、もう一つ予想が出来る事がある。
『キュィィ……』
新型のパワードスーツ剣を掲げる、それが我が身に当たれば、真っ二つに屠られるかもしれないが、
『サッ……』
「避けた!!」
当たらなければ、真っ二つにされないで済む。
「この……!!」
袈裟斬りに振った高周波ブレードを避けられたミィオは、返す刀で横一文字に刀を振るが、
「スッ……」
それも後ろに下がられて、避けられてしまう。
『…………』
これが原人の出した答えだった。
確かに、このパワードスーツは新型なのかもしれないが、中の人間の事を考えたら超えてはいけない事がある。
『シャァァァァ』
『スッ……』
『シャァァァァ』
『ヒュッ……』
旧式のパワードスーツよりも力も硬さもあるのだろうが、人間の速さを超えられない……いや、機械は人間の動きよりも速く動けるかもしれないが、中の人間を壊しては元も子もない。
パワードスーツはあくまでも人間を強化し、人間に追従する鎧なのだ。
中の人間の腕は、決して悪い訳ではないが、RLHを相手にするにはパワードスーツの動きも合わさって鈍重。
『…………』
地面に転がる者達には悪いが、相手を過小評価せず、自分達を……魔法が使える事を過大評価しなければ死なないで済んだはず。