始まる者達42
リナも今一度身構えて、相手を見据えると、
「…そういう事……苦労したタイプかな……」
原人の腕には、他の修行僧のような電気を溜める腕の膨らみが無い。
雷撃が使えない故に、体術を学んだのだろう……その苦労は筆舌し難い物があったに違いない……兵士なのに戦えない兵士となれば、厄介者として爪弾きにされながらも「戦える者」になろうと苦しんだのだろう。
随分と面白い相手…体術を学んだRLH……厄介な相手だが、下手に電撃だけを撃つ奴よりも、よほど好感を持てる。
「アンタの努力が、ツバメよりも強いか試してあげるよ」
今度はリナが大地を蹴り飛ばすと、原人の方に駆け出し、
『…………』
原人がこちらの動きに合わせて、またゆったりと構えを取ったが、
「あの動きが、自分だけの専売特許だと思わない方が良いよ」
『……っ⁉』
それはツバメと同じ動き、相手の間合いを読み、相手の間合いすれすれで足を止め……
『ドンッ!!』
『グッ!?』
相手が硬直した所で、相手の懐に一気に飛び込んで肋骨を殴る。
すると、原人の方も反射的に手刀をリナの首に目掛けて打ち込んで来るので、
『トッ!!』
リナもまた自慢の脚力で、相手の間合いから離れる。
「…………」
『…………』
これで、互いの挨拶が終わった……リナは目の前の相手を強敵と……ツバメと同じ厄介な相手と認め、ミィオ達の事を気にするのを止めて……
「いくよ……」
『…………』
互いに全神経を集中させて、戦いに挑む。
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「来るスか……」
あんなバカデカい化け物が現れて、気付かない訳が無い。
バカデカい化け物は奇声を上げながら火内を襲い、そこから飛び降りた原人の片方はリナと対峙し、
『スタスタ……』
もう一方の片割れが、自分の方へと歩いて来る。
『シュゥゥゥ…………』
ガトリング砲は使えない、奴が来る方向にはリナ達がいる。
高周波ブレードを鳴らして、こちらに来る原人に迎え撃とうとしたのだが、
『…………』
原人は、ミィオの足元に転がる遺体をマジマジと見つめる。
あまりにも綺麗に真っ二つに切り裂かれている遺体……これがヒートソードによる物では無いというのは切断面から分かり、そこに不吉な音を鳴らす剣があるとなれば、これをやったのは正面にいる、普通とは違うパワードスーツを着た相手と、原人は勘付いていた。