学園14
手元に残されているのは、コルク弾が一発だけ装填された一挺のコルク銃……それが意味するのは、
「あぁぁぁあぁぁぁぁ俺の食券がぁぁぁあぁぁぁ」
「なんで一年生が勝つと思ったんだよ……一年生云々じゃなくて無理だろ」
「だって倍率考えたらぁあぁぁぁぁ」
正規の賭けで、赤髪の少年に賭けた者達が、嘆く姿からでも察する事が出来る……赤髪の少年が勝つ可能性は無い。
何発のコルク弾を当ててビクともせず、一発の弾丸を当てただけでは、どうにもならないのは最初の一発で判明している。
「撃たなければ結果が出ない何て、甘い事を言うなよ!!」
店主の言う通り前例があり、前例以上の事をした以上、ここで撃たなかったから結果は出ないという言い訳は出来ない。
『カタッ……』
たった一発のコルク弾では、結果がどうなるか分かっていると言っても、このコルク弾を無駄に出来ない。
「うぅ……頼むよ~~」
「学食でデザート付けてあげるよ!!」
周りの期待を一身に受けて、赤髪の少年はコルク銃のトリガーに指を掛けて、
『パン……コンッ……』
「あぁぁあぁぁぁぁぁぁ」
「あちゃ~~~~」
最後に放たれたコルク弾が跳ね返されて、明後日の方向に飛んで行くのと一緒に、賭けに負けた者達の声もどっかに飛んで行く。
「…………」
決着は付いた。
赤髪の少年は、黄金の胸像を脳裏に焼き付けるかのように睨み付けたが、借りたコルク銃を何も言わずに台に置くと、無言でその場から離れて行き、
「はっはっはっはっ、見たか御神体の力を!!」
その姿を見た店主は、体を震わせて嬉しそうに高笑いをして、赤髪の少年が去っていくのを勝ち誇る。
「アタシの勝ちだから、ご飯よろしく!!」
「ハァ~~……店主が勝つのは分かっていたんだから遠慮してよ……」
「ぐわぁ~~俺のコレクションがぁ~~~~!?」
「だから無謀だって言ったんだよ」
そして、この戦いに賭けをしていた者達のそれぞれが、喜びと悲しみを入り交じらせながら、最後の清算を始めた。
ざわめく時間、宴の最後に店主は、
「まぁ、最後まで諦めずに立ち向かって、負け犬の遠吠えを吠えないのは立派だがな!!」
この祭りを盛り上げた赤髪の少年を、称えるのであった。