始まる者達40
口から炎を吐く……それもドラゴンの物まね。
余程、エルフにとってドラゴンは神格化されているのか、ドラゴンに畏怖を覚えているのか……
「この程度!!」
ドラゴンもどきの吐いた炎に巻かれた火内であったが、ドラゴンにとっては、致命傷になるような代物ではない。
人の体なら炎に巻かれて悲鳴を上げたかもしれないが、ドラゴンの体にとっては、温かいシャワーを浴びたようなもので、こんなのは目くらましにしかならない……
『ギョォオォエェエェエェェェ!!!!!!!!』
「ぐっ!?」
が、その目くらましが目的であった。
ドラゴンもどきは、その巨躯な体から伸びる腕を炎の中から突き出して火内を掴むと、握り潰そうとする。
これに付いてはドラゴンもどきが見事というより、火内が原因というのが正しい。
ドラゴンの似せた醜態な姿に怒りを覚えたのもそうだが、ミンクや修行僧相手に気が乗ってしまい、この程度の相手なら力でねじ伏せる事が出来ると勝手に算段してしまったが、
『ギョォォオォォォオォォォォ!!!!!!!!』
「ぐぅぅううぅ!!!!!!」
その腕力はミンクや修行僧の比ではない、その巨躯に相応しいだけの力があり、自分の事を握り潰そうとする手は、決して伊達ではない。
「火内君!!」
火内が向かった先で炎が舞い上がり、その炎が晴れる時に、火内が得体の知れない巨大な生物に握りしめられているのを見て、リナはそっちに助けに行こうとしたのだが、
『ドッッッスゥゥン!!!!!!』
それよりも早く、もう一体のドラゴンもどきがリナの前に立ちはだかると、
『『スト……』』
二人の原人が、リナの前に降り立つ。
「な…なに……」
リナは突然現れた二人の原人に、先程までの高揚感が失せる……それは増援が現れたからという訳ではなく、何か危険なものを感じたから。
原人の二人は、リナを値踏みするように観察して、お互いに顔を見合わせてアイコンタクトでコミュニケーションを取ると、片方の原人の方が手を挙げて、ドラゴンもどきにリナの相手をさせようとしたのだが、
「この模造品がぁあぁぁぁあぁあぁぁ!!!!!!!!!!」
『ギャッゥォォオォォォオォォォォ!!!!!!!!』
火内の事を掴んでいたドラゴンもどきから、鳴き声が聞こえると、
『…………』
『ギョォオォエェエェエェェェ!!!!!!!!』
その手を火内の方に下ろして、ドラゴンもどきを助けに行くようにと指示を出すのであった。