始まる者達33
接近戦をあれほど嫌っていた修行僧だったが、ここで接近戦を望んでくる……何かしらの策があるのかと、身構えたが、
『カチャン……!!』
取り出したのは十手だった……昔の日本ドラマに出てくる、あの鉄の塊。
「良いもん持ってるじゃない!!」
『ガッゴッ!!』
単なる硬い鉄の棒だが、されど鉄の塊。
パワードスーツの小手をしているから、鉄の塊を受け止める事も出来るが、生身だったら骨が壊される。
『ガッゴッガッ!!!!!!』
修行僧の動きは、ミンクのような力任せな戦い方ではない、しっかりと鍛錬を積んだ者の動き、相手を叩くだけでなく十手の先を相手に向け、十手の長さをばれないようにし、そのまま目を狙って突いて来たりする。
普通の兵士相手なら、RLHの優れた身体能力を生かしての奇襲から、相手のヘルメットを十手で殴り、そこからの打突でバイザーを壊して目を潰すという事をするのだろうが、
『ヒュッ!!』
「見えてる……よ!!」
リナの持ち前の運動神経、反射神経は、同じRLHである修行僧を凌駕し、修行僧の攻撃を受けては躱す。
魔法のような事を出来るエルフのRLHではあるが、身体能力という部分ではリナに劣るというのが、これによって証明されてしまい、
『ヒュッ!!』
『……っ⁉』
リナは、易々とカウンターを入れて、RLHを追い込む。
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『シャンシャンシャン!!!!』
森の中に飛び込んだ火内も、RLHを追い詰める。
こちらはリナの方と違って、RLHが離れながら腕の鈴を鳴らして蓄電するのは、それは接近されないように逃げているから。
ドラゴンとの接近戦だけは何が何でも避けたいと、木々を飛び移って複雑な挙動で逃げるのだが、
「遅い!!」
地形等関係無く、森の中を羽で飛ぶドラゴン相手には遅延行為にしかならない。
『シャンシャンシャン!!!!』
腕を振らずに全力で逃げれば、まだこの戦いの場から逃げ出せたかもしれないが、
「捕らえたぞ!!」
『……⁉』
戦うことを選んだRLHは、逃げきれずにドラゴンに捕まって地面に叩き付けられる。
『……っ!!』
体が弾ける、体が壊れる……体が一瞬でおかしくなり、視界に映る光景が理解出来ずにいたが、
『ドンッ!!』
そんなのお構い無しに、地面に叩き付けられてバウンドした体を再度掴まれたかと思えば、今度は地面に押さえ付けられ、
『グゥルゥゥ…………』
無理矢理に、ドラゴンの姿をまざまざと見せ付けられる。