学園13
早撃ちというより、息をつかせる間も無い連射。
絶え間無く放たれるコルク弾は、寸分違う事無く黄金の胸像の喉元に食らいつく。
黄金の胸像の質量を考えれば、こんな事で黄金の胸像が倒れるという事は無いが、
「あれ、いけるかな?」
「……厳しいだろ。あれでどうにかなる訳が無い」
「いやでも…勝ったらしばらく生活に困らないんだぜ?」
「んっ?どういうことだ?」
「あっ……」
どうやら上級生の中には、赤髪の少年が勝つ事を願っている者がいるらしいのだが、何か様子が変であった。
「分かってるよな?ガス抜きで、賭けは暗黙の了解で認められている……だけど、破産するレベルの賭け事は禁止されてる事を……」
「いやまぁ……」
「デバイス見せろ」
「ちょっ…まっ……!?」
いきなりポケットに手を突っ込まれてデバイスを奪われると、デバイスに何かを差し込まれて、中身の情報を奪われてしまう。
「……これ金額アウトだからな……お前は見逃してやる……っていうか俺の役職を知っってるんだから、やるなよ……」
違法賭博をしていた彼だけに聞こえるように囁いてから、胸ポケットから手帳を取り出して、
「オラッ!!風紀委員だ!!本部から連絡が来た!!違法賭博した奴は自首しろ!!一ヶ月の強制ボランティアで許してやる!!」
大声で叫んだ。
「やべぇ……!?」
「誰だよ!!見つかったバカ野郎は!?」
「何が強制ボランティアだ!?強制させたらボランティアじゃねぇだろ!!強制労働だ労働!!」
大声と同時に何人かの賭けたであろう生徒達が、悪態を吐きながら、その場から走り出して逃げ出す。
その様子に、風紀委員は無線機を取り出し、
「賭博の容疑者が逃げ出した!!良いか絶対に逃がすな!?犯人は……」
逃げ出していく生徒達の、特長を述べていく。
「…………」
そんな周りが騒がしくしている中、赤髪の少年の動きが止まっていた。
周りがうるさくて集中力が欠けた……からではない、
「どうした!?決着を付けて見せろーーーー!!」
最後の一丁を残して全てのコルク銃は空になってしまい、撃つのを止めてしまったのだ。