始まる者達26
『『『『シャン…シャシャン…シャン…シャシャン……シャンシャンシャンシャン!!!!!!!!』』』』
修行僧達が腕を振る度に、鈴の音が鳴る。
シャンシャン、シャンシャンと鈴の鳴る音のリズムが速まっていくと、
『バチバチバチバチバチ!!!!!!!!』
「くっ……⁉」
次の瞬間には鈴の音が雷鳴となり変わって、リナを襲う。
(あの腕をへし折らないと……)
雷鳴が響く一瞬、周囲が明るくなって見えるのだが、修行僧の片腕は鬼灯のように膨れている。
その中で鈴のように、何が擦れて音を鳴らしながら、蓄電をしているのだろう。
修行僧は、雷鳴を鳴らすと、また鬼灯のような腕を振り始める。
(……でも、どうやって)
リナは、森の中を縦横無尽に走り回りながらも、自分を追って来る修行僧に攻めあぐねている。
ミンクのような、ゴリラのような屈強な肉体をしている訳ではないので、拳を一発ぶち込めば、一撃で修行僧の肉体を破壊できる自信はあるのだが、
『サッサッサッサッ…………』
(特殊部隊…RLHなの……?)
修行僧達は、逃げるリナを追い掛けて来ているのだ。
森の中という、平地ではない足場の悪い場所なら、体力のあるリナの方が人間よりも身動きは速い……けれど、
『サッサッサッサッ…………』
修行僧達は、山の中を平地を走るかのように滑らかにヌルヌルと追い付いて来る。
(足が速い……足音が静か……何か特殊な走法を駆使しているのか?)
リナの全速力の、荒れ狂うトラックのような走り方に対して、電気自動車の静穏な走り方は、
(敵……)
まるで、自分の事を殺すかのように特殊な訓練をさせられたかのようで、悪寒を感じる。
それでも、リナを追い切れないのは、リナの方が足が速いから……
『サッサッサッサッサッサッザッザッザッザッザッザッザッ!!!!!!!!!!』
「なっ…⁉」
修行僧達の中から、足音を強く鳴らすのが聞こえると、リナを追い抜いた。
「くっ……!!」
リナの力強い走りは、修行僧達に勝っているが、それでも、通れる所を走る走り方と、山の中を縫う走り方で差を縮められた。
「このっ!!」
ここまで走って来たのは、あくまでも自分の方が身体的に優れている自負があったからであるが、修行僧の方が鍛錬を積んでいるというのなら、肉弾戦に持ち込んだ方が有利。
リナは腹を括って、自分の事を取り囲む修行僧の一人に飛び掛かるが、
『サッサッサッサッ…………』
「待てっ!!」
森の中へと、滑っていくかのように逃げてしまう。