始まる者達24
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青いドラゴンは、散々殴りつけたミンクから手を離すと、暴力を振るうのをやめた。
「………………」
手は赤く染まり、爪の先まで赤い。
「…………」
目の前にはミンクの死骸。
ミンクがボロボロになるまで殴りつけたのは自分。
「……これがドラゴン」
人間という皮を破り捨てて、ミンクという化け物を倒した高揚感は……無かった。
正義のために、この世界のために戦った者達の遺志を継いでとか、復讐のために戦った訳ではない……ただ与えられた力に任せて、暴力を振った。
圧倒的な力の差があるにも関わらずに、手を下すのは気分が良いものでは無かった……ミンクが恐怖に怯えて、命乞いをしていたのは感じていたが……
「……助けに行かなきゃ」
他のみんなは、ミンクの脅威に晒されている。
自分だけ戦えるようになったからといって、一方的に狩る事に罪悪感を感じたとしても、やらなければみんながやられる。
青いドラゴンは、自分の手が真っ赤に染まっている事に気持ち悪さを覚えながらも、
「どっちから行けば……」
自分がした行為を忘れようとするかのように、リナと小此木達、どちらを助けに行こうかと悩む。
先に一人で戦っているリナも危険だが、単なる人間である小此木達も危険。
選択を誤れば、どちらかが死ぬかもしれないと思い悩んでいると、
(RLHの方…行ってあげ……て……)
「ジン……」
死んだはずジンの声が聴こえた。
「ジン、話せるの?」
あの日飛び降り自殺をしたはずのジンが、焔の狼となって助けに来てくれた……それはとても嬉しい事であったのだが、
「…………もう行っちゃったんだね」
また別れが来てしまった。
あの日、飛び降りたジンの亡骸に泣きながら、悲しみと怒りに苛まされたが、今は違う……というより、
「…助けに来てくれて……ありがとう」
あの焔の狼が火内 刃の、魂の欠片を持つ者だったという事を感じたから……まだ、本当に出会う時では
無いと感じたから、彼を追わない。
『バサァッ……』
羽を広げると、青いドラゴンは空に飛びあがる。
自分に課せられた使命とか、そんなの関係無く、今の友達を助けるために空に飛びあがると、
「……あれは?」
リナがいた方角で、閃光が走る。