始まる者達22
空に飛び上がった青い鱗を持つドラゴンは、バックドロップをする要領で、ミンクを地上の岩に頭を叩き付けた。
『うっ…うぅ……』
どんなに屈強な肉体を持ったとしても、空から落下して、頭上に硬い岩に叩き付けられては、無事でいられるはずが無い。
間違い無く脳出血……砕けた骨の破片が脳に刺さって損傷もしているだろう……が、
『ガシ……』
『うっ…あぅ……』
まだ息がある以上は生きている。
今度はミンクの足首を持つと、叩き付けた岩に目をやり、
『バァッガァッ!!!!』
『ごっほ……』
『バガァツバガァツバガァツバガァツ!!!!!!!!!!!!!!』
幼児が人形を振り回すように、ミンクを振り回して頭を岩に叩き付ける。
岩が赤く染まり、濃い血肉片がベチャベチャと周囲に飛び散り、頭が潰れて形を変えた所で、
『ドサッ……』
青い鱗を持つドラゴンは、ミンクを振り回すのを止めた。
『あっ…あぁ……』
連れ去られた仲間を見捨てられずに、助けに来たもう一体のミンクだったが、目の前に広がるのは絶望的な光景。
捉えられた草食動物が、肉食動物に力任せに引きずり回されて、ズタボロになった所で肉を引き千切られて捕食されたかのような光景。
どちらが強くて、どちらが弱いかなんて議論する必要性も無い。
RLとか進化した命なんて、ドラゴンの前に何の価値があるのか?
完成された命、種の頂点に立つ事を許された命……その前に、ただ腕が肥大化しただけの命に、何が出来るというのか?
『バサッ……』
『はっ…はぁ………』
ドラゴンの羽が軽く羽ばたく……それは獲物を見付けたという合図。
何とかその場から逃げなければと、戦う事を放棄して、ドラゴンに背を向けて森の中を走り出す。
これは見殺しでは無い……もう死んだ仲間を助ける事は出来ないのだから。
光の届かない森の中に逃げ込んで…木々の間に挟まれるように身を隠せば……
『バッサァッ!!!!』
『あぁあぁぁあぁ!!!!』
後ろから抱き着かれるかのようにぶつかられると、そのまま地面に組み伏せられてしまう。
『うわぁあぁ!!!!ぁあぁぁ!!!?』
逃亡という逃亡すら出来なかった……ほんの少しの、良かった事を思い出す時間すら与えられない。
『あぁあぁ!!!!』
「…………」
それはちょっとだけの抵抗だったのに……殺されたくないと腕を振っただけなのに、それがドラゴンの癇に障る。