始まる者達21
死んだはずの人間の雄叫び。
骨を砕いて、肉も断ち切った感触もあったが……
『グゥォ……』
『グゥゥ……』
人間は息を吹き返して立ち上がった。
『グゥオゥ……』
『ウガァ……』
どんな方法で蘇ったかは知らないが、もう一度殴り飛ばせば人間は死ぬ。
やれやれと言わんばかりに、お互いに顔を見合わせてから、人間を処理しようとするが、
『…………』
『…………』
体が震えて動かない…体が怯えている……恐ろしい物に出会って、体が硬直するかのように……本能が訴えている……あれは怖いモノだと……
「うぉおぉおぉぉぉガァアァアァァァァアァァァ!!!!!!!!!!!!』
『グッゥ……』
『ウゴッ……』
人間の雄叫びが変わっていく……新しい命に生まれ変わっても、過去の記憶が蘇るほどの恐怖……
『ウッウッ………………』
『アィアゥ………………』
余りの力の差……狩る者と狩られる者の差……神が下した、生まれ持っての差別……
『アアァアァアァアァァァアァアァァアァアァァ………………!!!!!!』
記憶が蘇った……
「…………」
余りの力の差に戦う事を諦めて命乞いをした記憶。
「…俺は……」
地面に膝を付けて頭を地に付けて、手を頭の腕で握り締めて祈りを捧げた記憶。
「…俺は……」
どうか殺さないでと、見逃して下さいと祈りを捧げたのに……
「…俺は…………」
無慈悲な炎で、焼き殺されて灰に帰された記憶が蘇る。
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『うわぁあぁあぁぁぁ!!!!!!』
声が聞こえる……怯えた声。
『ブゥォン!!!!』
古い記憶を振り払おうと、ミンクは怯えながら大きな腕を振るが、
「…………」
『バッチンッ!!!!』
人を軽々と吹き飛ばす拳を、恐ろしい者は両手で受け止める。
生まれ持っての差、覆せない力の差……人よりも一回り大きい体は強者の証。
『ドッスン!!』
『うぎゃっ!?』
片腕だけ太い不格好な化け物とは違う、古代の彫刻を思わせる隆々たる筋肉。
「…………」
恐ろしい者は、ミンクの腕を掴む。
『ひっ……』
ミンクを力任せに持ち上げる手足は、獅子のように屈強。
『バサッ……』
空へと飛び上がった羽はコウモリの様に薄くとも、ミンクを軽々と空に運ぶ程に強靭。
『どうか…見逃して下さい……』
細長い首を持ち、爬虫類の独特な瞳を持つ、究極の生命体といえる、その生き物は……
『バッサッ!!!!』
『ぁあぁああぁぁ……あごぉ!?』
青い鱗を持つ、ドラゴンであった。