始まる者達17
「Bの世界では、最初の頃は異世界があるというのを一部の者達が知っている程度で、特に興味を持っていなかった。異世界がちょっかいを掛けて来る程度で気にも留めていなかったある日、Bの世界で世界大戦が起きた……それは分かるね」
「はい、それは歴史の勉強の話ですから」
世界大戦、各国での急激な文明の開花により始まった戦争。
隣国と戦争するのが精一杯だったはずなのに、とある小国がレシプロ機を開発し、そこから石炭が採掘されて、海洋を安定して航海出来るようになると、技術が広がって戦争が始まった……かなり噛み砕いた表現になってしまうが、それが史実。
「世界大戦は多くの国を巻き込み、資源を湯水の如く使う……戦争で物を言うのは、資源となっていった」
「多くの小国は、大国に飲み込まれて、場合によっては資源を確保する為に小国は潰されたというのは聞いいてます」
「そう、資源を求めて小さな国は潰されて……それでも、何年も続く戦争に多くの資源が足りなくなってしまった……そこで考えたのが」
「そこで考えたのが?」
「Cの世界の資源を奪う事だったんだ」
「Cの世界の資源?」
「Bの世界とCの世界で違う事は、Bの世界では資源を使って発展し、Cの世界ではマナを使って発展した事なんだ。だから、Cの世界では資源が唸るほどあったんだ」
それは言われると分かる事だが、確かに異世界のイメージと言えば、自然豊かで広大な大地に煌めく海……そこには資源が唸る程あると言われたら納得する事が出来るが、
「でも、問題は異世界と扉を繋げる事……そこで使ったのが人間だった」
「人間?人間をどうやって?」
そこで、人間が出て来るのは理解し難い。
「ちょっとオカルトに聞こえるかもしれないけど、人の思念…魂には重さがあるという研究をしたように、魂というのは存在する。そして、重要なのは魂は思念のエネルギーだという事」
「思念のあるエネルギー……」
「多くの人間を一度に、一気に殺す事で異次元を繋ぐ、異次元に飛び出た魂が、還る場所を求めるのを利用して、魂で扉を創ろうとしたんだ」
「でも……そんなのは戦争をしていても創れなかったんじゃないんですか?もしそれが成功していたら、この世界は向こうの存在を知っていないといけないのでは?」
それはその通りであった。
長い歴史の中で、そのような実験が行われたという記述はどこにも無く、もし成功していたのなら、異世界の存在を知る事になっていただろう。