始まる者達14
「えっと……昔に助けた事がありましたっけ?それか勘違いしていませんか?」
礼を言われるというのなら、このドラゴンに対して、自分は何かをした事になるのだが、少なくとも爬虫類を飼った事も無ければ、浦島太郎のように、いじめっ子から助けるようなマネをした事は無い。
「ははっ…私は君の中にいたんだ……このままでは魂が霧散して、無に消えるという所で君の魂に引っ付く事が出来たんだ」
「そう…ですか……」
「君にとっては何の話かと思うかもしれないけど、そのお陰で私は形を留める事が出来て……それに大切な人が、どうなったのかも知る事も出来た」
「それは…良かったですね……」
「うん、良かったんだ……だから、ありがとう何だけど……彼が呼んでくれたね」
「えっ?」
地平線の先まで青い世界が広がっていたのに、知らないうちに草が生い茂る緑の大地の上を飛んでいる。
心地良い風が吹き、温かな太陽の光が、自分達の事を歓迎してくれている。
「彼と会うのは久しぶりだけど…あぁ、あそこにいた」
ドラゴンは静かに羽を羽ばたかせて、彼のすぐ前で降り立ち、
「さぁ、彼の前まで」
「は…はい……」
ドラゴンに後押しされて、彼の前に立つのだが、
「………………」
ドラゴンが会わせたいといった彼は、壊れた戦闘機の破片に背中を預けて、力尽きていた。
頭を垂れて、腕も垂れて……眠りに付いている。
「あの…自分はどうしたら?」
彼はもう死んでいる、話す事は叶わない……のだが、
「彼のヘルメットを外してあげて」
それでも、これが無意味だと思わない。
恐る恐る彼のヘルメットに手を伸ばし、ゆっくりとヘルメットを外してあげると、
「ドラゴン……」
そこにいた彼もまた、ドラゴンであった。
自分の事を背中に乗せて連れて来てくれた大きなドラゴンとは違い、目の前にいるのはパワードスーツを身に付けた、人の大きさのドラゴン。
「でも、どうしてドラゴンが自分の中に?」
大きなドラゴンは最初にこう言った、「ここは君の意識の中」だと。
でも、自分にはドラゴンと関わるような事等ないのだが……
「君はね、このドラゴンの魂の欠片を強く引き継いでいるんだ」
「この人の?」
「そう彼はね。この世界で生まれた……そっか、それも話をしてあげないといけないんだった」
「話?」
大きなドラゴンが側に来る。