始まる者達13
『グゥゥゥゴォオォガァァァアァァアァァァアァア!!!!!!』
焔の狼は怒り狂う。
護ろうとした者を傷付けられた事に。
(ジ…ン……)
遠退く意識の中で、彼を見る。
『ガァアァァァアァ!!!!!!』
『グゥアァアアァ!!!!!!』
『グゥゴアァアァ!!!!!!』
怒りを滲ませた声を上げながら、ジンがミンク達と戦う姿を……
(ごめん…ね……)
自分もジンと一緒に戦いたいと願うが、それは叶わない。
視界が狭まり、暗い場所へと連れていかれて行ってしまう。
(にげ…て……)
せめて、君だけは生きて欲しいと願いながら、
(……………………)
暗い世界へと落ちてしまうのであった。
________
(…………………)
『バサッ………バサッ…………』
意識が途切れて、次に感じたのは浮遊感であった。
(…………)
壊された体の感覚はどこにも無く、胸の苦しさはどこにも無い。
『バサッ………バサッ…………』
誰かが自分の事を運んでくれている。
(……)
どこに連れてい行って貰えるのか?この人は誰なのか?そんな事を考えていると、
「目を開けられそうかい?」
「…うっ」
自分の事を運んでくれている誰かが、声を掛けてくれた。
「うぅ……」
小さな呻き声を上げて、一度は閉じた目を開けるとそこには、
「良かった…気が付いたんだね」
そこには大きなドラゴンがいた。
「ここ…は……」
「ここは君の意識の中、死の狭間と言っても良いかもしれないね」
「死の狭間……それじゃあ、あなたは僕をあの世に連れて行くんですか?」
ドラゴンは背中に、自分の事を乗せて空を飛んでくれているが、もし、あの世に連れて行くというのなら、今すぐにでも飛び降りたいと思ったが、
「ううん、違うよ。私は君に会わせたい人がいるんだ」
ドラゴンは優しく、思っている事を否定する。
「そう…ですか……」
それが出まかせかもしれないのに、何故だかドラゴンのいう事をすんなりと信じて、ドラゴンの背中に頬をすり寄せる。
赤ん坊が眠るように、リラックスした状態でドラゴンに身を預けて空を旅する。
陸地の見えない青い空と、青い海が広がる世界。
そんな世界をドラゴンは飛び続ける。
「………………」
どこを目指しているのか、それを聞いてみようかと体を起こすと、
「ありがとう」
「ありがとう?」
ドラゴンから急に礼を言われるのであった。