始まる者達12
「うっ…ぐぅ……」
それはあっさりと終わるはずだった。
抵抗という抵抗を一切出来ずに、何の脈絡も無く終わるはずったのに、
『ガッッァアアァァァァァアァァァァァ!!!!!!』
『グゥオゥゥッゥオォォ!?!?!?!?!?!?』
ミンクに歯向かう者がいる。
その者のお陰で、まだ物語は終わらない。
「ぐぅ…がぁ……」
立つ気力すら失っていた火内だが、体を捻って地面にうずくまり体を動かそうと必死になる。
『グゥルゥアァアァァァァアァァ!!!!!!!!』
『グォオォゥオウォォォ!!!!!!!!』
ミンクは、手に纏わり付く焔を消そうと腕をブンブンと振り回すが、太い腕に絡み付く焔は唸り声を上げて、絡み付く続ける。
「…ン……ジ……ン………」
火内は、何でも良いから力を奮い立たせたくて、地面に頭を擦り付けて立ち上がる気力を……マッチの先程の小さな火でも良いから、戦う気力を燃やして立とうとする。
『グゥルゥアァアァァァァアァァ!!!!!!!!』
『グォオォゥオウォォォ!!!!!!!!』
『ガァァアァァァァアァ!!!!!!!!』
火内が必死に立ち上がろうとする横で、焔に纏わり付かれている仲間を助けようと、もう一体のミンクが焔を掴み、
『グゥアァアアァ!!!!!!』
『ギャィン!!!!』
掴んだ焔を地面に叩き付けると、焔が鳴いた。
「んっ……くぅ……!!!!」
火内の目には、彼の姿が見える。
『グルゥゥゥゥ…………!!!!!!』
低い唸り声を上げて、獣の声を上げて、ミンクと対峙するその者の姿は人間では無いが、彼の姿見える。
あの焔のような赤く煌めく色は、ジンと同じ髪色の毛の色。
『グォォウ!!!!』
あの焔の瞳の色は、美しいと自分の心を恋焦がした特別な色。
「ン…ジン……!!!!」
あの日、飛び降りた彼の……ジンの姿がそこにある。
理由なんて分からない……理由なんてどうでも良い……彼が、焔の狼となって自分の目の前にいるのが、全ての事実。
「はぁ…ぁぁ…………う…ぁあぁあぁぁっぁぁぁぁあっぁあぁ!!!!!!!!」
声をまともに発する事すら出来無い状態でも、もう限界を超えて死に体となっている体でも、構う事は無い。
それは望んだ事。
ジンと共に生きて、ジンと共にRLと戦って……そして…そして二人で英雄になる事を望んだ……が、
『グゥッオァ!!』
「…………?」
『雫!!』
最後の力を振り絞ってミンクに立ち向かったが、全てを打ち砕かれてしまった。