学園11
下級生を本気で怒らせてしまった……からではない。
お祭りとはいえ、赤髪の少年を怒らせたのは良くない事、普段なら店主を怒り、下級生である赤髪の少年を宥めている所であるが、彼の赤い目を恐れて、誰も声を掛ける事が出来ない。
「やばいって……」
「あれって…なにさ……?」
赤髪の少年の赤い目。
怒りで目が完全に見開いた赤い目の……目の中の瞳が、炎のようにゆらゆらと揺らいでいる……それは、抽象的な表現ではなく、赤い目の中の、赤い瞳が揺らいでいる。
赤い絵の具で塗りたくったかのような髪と目……それは、言ってしまえば染めたかのような偽りの色であるのに、その偽りの色の中に、本物の炎が燃えている。
目は口程に物を言う……常人とは違う目が、怒りを包み隠さずにこちら睨み付けている……その恐怖が、上級生達を威圧する……のだが、
「そうだ!!それで良い!!お前が、最後の最後で勝負を捨てる程度の器じゃないというのを俺に見せてみろ!!」
何かに憑りつかれているかのようにキレている店主は、その燃える瞳を見て、さらにヒートアップする。
「待ってろ…………」
赤髪の少年は挑発に乗ると、低い声を残してその場から消えてしまう。
「ふはははははは!!待っているぞ!!いつまでも!!いつまでも!!」
「やり過ぎだよ……まぁ、こうなったら……なぁ?」
「そうだな……どっちが勝つかな?」
「校長じゃね?伊達に光ってる訳じゃないだろうし」
子羊のように怯えていた上級生達が、野次馬になって騒ぎ始め、どっちが勝つかの話で盛り上がり、
「それじゃあ、あの子のレクリエーションが終わる頃に」
「了解」
「は~い」
ある程度話がまとまった所で、また後でお祭りを楽しもうと、各々が散らばろうとした時だった。
「待たせたな……」
赤髪の少年が、戻って来た。
「うおっ……もう戻って来たのか!?」
「シミュレーター室行かないのか?」
赤髪の少年が急に戻って来た事に、野次馬が驚いたのはもちろんだが、
「全てのコルク銃を借りるぞ……」
赤髪の少年が、店にあるコルク銃を全て借りて、全てにコルク弾を装填していく。