始まる者達11
________
「ぐっ…ごほっ……ごほっ……」
土の上で苦しそうに呻く者がいる。
RL達と絡まるように山の斜面を滑り落ち、落ちる所まで落ちた所で、
『バァガァッ!!!!』
邪魔だと言わんばかりに、肥大化した腕で体を吹き飛ばされた。
吹き飛んだ体は宙を浮いて、地面に叩き付けられて転がり、
「ぐっ…ごほっ……ごほっ……」
たった一撃の攻撃で致命傷となる。
『パワードスーツを強制排除します』
たった一発の拳でパワードスーツはオシャカになり、身に付けていてもただのゴミとなったパワードスーツは、自らその役目を終えたと装甲が剥がれる。
「ごほっ…げほっ……げほっ……」
押し潰された装甲に圧迫されていた胸が解放されると、息が吸える。
(たったの…一発で……)
ミンクのフルスイング、その衝撃はシミュレーションの時に味わったものと違う、本当の苦しみ。
たった一発の攻撃で、自分ではミンクにかすり傷一つ負わせる事は出来ないと思い知らされてしまう。
(RL…RLH……)
あの日、体力検査を行った日……リナと初めてあった日、体力には自信があったが、どの種目でもリナには勝てなかった……足元にすら及ばなかった……
(生まれが違うって…こういう事なのか……)
小此木は、去り際に自分の事をRLHの可能性があると言っていたが……このような様になっては、RLHとはいえない。
『ゴゥ……』
『グゥ……』
RLであるミンクは、火内の事を気には留めるが「こいつはどうするか」と困ったかのように会話している。
単なる人間、武器すら持たない非力な人間をどうするかと。
斜面から転げ落ちさせられたのは気に喰わないが、もっと大事な事があると話、
『グゥグォ』
『オゥオォ』
二体のミンクが残ると言って、残りの四体のミンクは小此木達を追い掛ける。
「舐めるな……」
小此木が言っていた我慢強さを武器に、潰れた胸の痛みを我慢して、足をふらつかせ……よろよろと歩いて、ミンクへと近付き、
「この……」
『バッシン!!』
「うごっ……」
拳を振り上げたが、ミンクは虫を払うように腕を振って、火内を弾き飛ばした。
「うっ…うぅ……あぁ……」
たった二発の振り払いで、火内の体は言う事を聞かなくなり、戦意を失った心ではもう立つ事すらままならない。
『ゴゥ』
『グゥ』
たった二回殴られただけでと思うかもしれないが、ミンク達は逆に二回も耐えて息がある事に感心している。
『ゴォゥ』
『グゥア』
踏み潰された虫のようにヒクヒクとする火内に、止めを刺してやれと言い、その言葉に応じて片方のミンクが火内の側に近付いて拳を振り上げて、
『ガッッァアアァァァァァアァァァァァ!!!!!!』
突如として雄叫びが聞こえるとともに、振り上げた拳に焔が纏わり付いた。