始まる者達10
竹を割るように、腕が縦に割れる。
ミンクは慌てて腕を上げて、自分の知らない武器から身を引こうとしたが、
『シュゥゥゥゥ!!!!!!』
唸りを上げる高周波ブレードは、ミンクの肉を求める。
ミィオは無造作に高周波ブレードをミンクの胸に突き立てると、これもまた溶けているバターを切るかのように滑らかに刃先が入り込み、
『ブゥオゥオウオウォォ…………!?!?!?!?』
横に高周波ブレードを振り切ると心臓も肺も溶かすように斬り捨てた。
それはミンクにとって、嘘のような話であったであろう。
並の弾丸なら耐える自慢の筋肉、灼熱に燃える剣すらも耐える肉体が簡単に裂かれた。
『オォオ……ォオオォ…………』
自慢の肉の盾が崩壊して、命が崩壊する。
両方の肺と心臓を断ち切られたミンクに生きる術は無く、先程まで雄叫びを上げていたのが嘘のようにグッタリと地面に倒れ込む。
『ガッシャッ!!』
息絶えたミンクに一瞥もくれる事無く、沙羅曼蛇を手にすると、
『ブゥゥゥブルッッゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!!』
『グゥオゥゥッゥオォォ!?!?!?!?!?!?』
森の中に隠れている最後の一体である、ミンクの体と命を削り取って、事を終わらせるのであった。
(あれがパワージャケット…GーC24の力か……)
小此木は、目の前にあるパワードスーツの次世代のパワージャケットに感嘆する。
問題点は装甲とバッテリーに駆動系、パワージャケットの見合った武器等と色々言われていたが、こうやって実物を見せられると、これが本格的に量産される事を強く願わずにはいられない。
「ミィオ、そのパワージャケットの着心地はどうなの?」
「うん…凄いよ……パワードスーツが玩具みたいに感じる位には……実際着てみると、安心感が凄くて……」
「本当に?良いなぁ……僕にもこの武器使えるかな?」
小此木はミィオの使った武器を持ってみるが、
「……パワードスーツじゃダメだね、この武器の反動で蜂の巣にするのが精一杯かな」
沙羅曼蛇を持ち上げてみようとするが、重量オーバーなのか銃口が水平にならない。
小此木は試しにと、今度は高周波ブレードの方も持ってみようとしたが、
「何してんだ小此木!!二人を助けに行くぞ!!」
「そ…そうでした!!申し訳ありません!!」
ユナに遊んでいるなと怒られてしまう。
「武装を整え直すぞ!!」
ユナはボコボコになったトラックの荷台に乗り込むと、自分達が使った兵装を取り出して教官と小此木に渡し、
「……ミィオ、そのパワージャケットはお前が使え」
「自分が、そのまま使って良いんですか?」
「あぁ、パイロットカードの問題もあるが、お前はそれを上手く使いこなした……それに、ゲン担ぎをしたくなるのは兵士の常さ」
ミィオには、そのパワージャケットを脱いで渡せというのでは無く、そのまま使わせる事を決意するのであった。