始まる者達6
『ブォン!!!!』
「ちっ!!」
それに加えて、人の手程の大きさの石を投げるのが効果的というのも理解して、最近では離れた所からの攻撃というのもしてくるようになった。
『ガサガサガサガサ!!!!』
「舐めるな!!」
『ドッドッドッドッドッドッドッドッ!!!!!!!!』
『グォオォオォォ!!!!!!』
こちらの体勢が崩れた所で一体のミンクが、まるで獲物に喰らい付くサメの様に、弾丸に構う事無く突進して来る。
「ミンクが突っ込んで来る!!」
止まらずに突っ込んで来るミンクに、マシンガンの弾丸では止められないとヒートソードを抜きながら身を躱すと、
『ドォゴンッ!!!!』
信号無視をして突っ込んで来た車の様に、トラックの横腹にぶつかり、トラックがグラつく。
「この野郎!!」
通電されて灼熱に燃えるヒートソードを真っ直ぐに突き立てて、ミンクの方へと突進するのだが、
『ブォン!!』
「くそっ!!」
筋肉で肥大化した腕を振り回して、ユナの攻撃を振り払い、その場から離れて森の中に逃げようとする。
「逃すかよ!!」
距離を離したのならマシンガンを使えば良い、雑に銃口をミンクに向けて撃とうとするが、
『グォオォオォォ!!!!!!』
「またかよ!!」
続け様に、森の中から同じように腕を盾にしてミンクが突っ込んで来る。
「二人共銃を持て!!小此木はユナを援護しろ!!一人のユナが狙われている!!」
「「はい!!」」
そう今現在、偶然、教官の方は三人いる形で、こっち側はミンクも警戒しているが、トラックを挟んでユナは反対側に一人でいる。
群れから離れている獲物を狙わない馬鹿はいない。
執拗に狙われるユナを助けるためには、頭数が必要になる。
その意味を理解している小此木はミィオを連れて、身を低くしたままトラックの中に入り込み、マシンガンとヒートソードを取り出そうとしたが、
「パワージャケット…完成していたのか……」
トラックの奥に固定されている、パワードスーツに目が奪われてしまう。
パワードスーツの人間の体に外装を引っ付けたのとは違う、甲虫を思わせる外骨格のあるパワージャケット。
パワードスーツとパワージャケットのコンセプトには明確な違いがある。
「ミィオはこれを持ってユナさんの方に!!」
「小此木は!!」
「パワージャケットを起動させる!!」
パワードスーツが色んな環境に適応し、従来の武器を軽々と使えるようにする……いわば補助的な意味が強いのだが、
「これならいける!!」
パワージャケットは戦車やヘリコプターのように、それ単体で兵器として成り立つように作られた物。
小此木は自分のパイロットカードを引き抜き、パワージャケットの胸を開いて挿入すると、
『起動エラー、前回のパイロットカードを差し込んで下さい』
「なっ……!?」
パワージャケットは、小此木を拒否するのであった。