学園10
『パンッ……コッン!!パンッ……コッン!!パンッ……コッン!!』
この負けイベントに、赤髪の少年は抵抗するかのように、コルク弾を込めては黄金の胸像を撃つが、何にもならない。
『パンッ……コッン!!パンッ……コッン!!パンッ……コッン!!』
銃口の先を変えても、コルク弾は決して黄金の胸像を倒す事は無く、それ所か、この無駄な抵抗をしてしまった事により、
「ここまで良くやった!!」
「引き際も肝心だぞ!!」
上級生達は、勝っていたはずの赤髪の少年が、まるで健闘して負けたかのような扱いをしてくる。
これはエキシビジョンマッチ、勝敗が決まった後のお遊び……なのに、本当なら赤髪の少年が勝っていた試合が有耶無耶にされてしまう。
「…………」
赤髪の少年は、倒れない黄金の像を睨み付けていたが、腕時計に視線を移して数秒ほど身動きせずにいたのだが、
『コトッ……』
コルク銃を台の上に置いて、射的の店を後にする。
「おっ、もしかしてシミュレーター室に行くのか?」
「そうだな、もうそろそろ行かないと遅れちまうな」
「頑張って来いよ!!」
赤髪の少年の様子に、彼もまたシミュレーター室に行く事を察すると、ここまで盛り上げてくれた彼に声援を送りだすのだが、
「やはり御神体には勝てないか!!そうだろう!?」
店主は何かに憑りつかれたかのように叫び、赤髪の少年に対して追い打ちを仕掛ける。
「おいおい、止めておけよ」
「そうだぞ、お前負けてたんだからな」
さすがに追い打ちを掛けるのは違うと、周りの者達から注意されるのだが、
「負けてなどいない!!現に、こうして御神体様はここにいるのだ!!」
店主のテンションは留まる所を知らない。
店主の変なテンションに、赤髪の少年は腕時計をしている腕を上げて、時間だと伝えるのだが、
「だからどうした!?時間が無いなら、お前が帰って来るまで、いくらでも待っていてやるぞ!!」
「…………」
勝手にいきり立っている店主を無視する事にして、赤髪の少年は背中を向けたまま、無言で立ち去る……
「燃える闘志は無いのか!?その赤い髪が泣くぞ!!」
店主は何の気も無しに「燃える」と「赤」を掛けて、挑発的な事を言っただけであったのだが、
「なんだと……」
その瞬間、赤髪の少年の足が急に止まり、後ろを振り返ると、周りにいた野次馬全員が黙ってしまう。