地上10
それは形だけの警戒であり、少し気を緩めてしまえば火内も眠ってしまいそうであったが、
「…………」
こんな時だけはというのはおかしいが、小此木は決して目をつぶろうとしない。
遠くでRLと争いが起きている方角を、目を細めて見ている。
ここからでは決して見えるはずが無いのだが、その眼差しは真剣であった。
何が見えるのか…何を見えているのか聞いてみたいと思い、静かに立ち上がって小此木の側に行こうとした時だった。
「……!!」
「……!?」
とんでもない生臭い匂いが風に乗って、鼻を曲げようとする。
「…………」
「…………」
生臭い…食材を腐らせてしまった時のような臭い……漂う悪臭に火内は悪寒を感じて、何事かと目を丸くして中腰の姿勢で固まるが、小此木は逆に静かに腰を上げる。
小此木と火内は目を合わせると、小此木が火内にハンドサインでその場にしゃがむように指示を出す。
それに対して火内は頷き、中腰の姿勢から片膝立ちでしゃがみ、視線を寝ているリナとミィオに向けると、
「…………」
その意図を理解した小此木が、リナの方に静かに近付いて口を塞いだ。
「…………」
小此木の動きをマネて、火内もミィオの口を塞ぎ、
「起きてリナ…声を上げないで……」
「起きてミィオ…声を上げないで……」
小此木の言葉をマネて、ミィオに声を掛ける。
「「……?」」
まだ寝てから時間が浅かったお陰で、二人は声を掛けるだけで目を覚まし、
『『トントン……』』
「声を上げないから」と、自分の口を押さえている手を軽く叩く。
二人も何かが起きていると気付いてくれたので、口から手を離すと、
「この臭い何……?」
リナが小さな声で、周囲に漂う悪臭が何のかと小此木に聞くのだが、
「RL…RLが近くにいるッス……」
この腐ったかのような臭いが何なのか、ミィオが答える。
「Rっ……!?」
「刺激しちゃダメッス……」
リナが、RLが近くにいるのかと驚いて、大きな声を上げようとしたが口を塞がれる。
「良かった…変な臭いがするから静かにしてたけど、これはRLの臭いなんだね……」
小此木はしゃがんだままの態勢で、ヘルメットを着用する。
その動きに習って、全員が最小の動きでヘルメットを着用して、赤外線カメラに切り替えると
「いるね……」
「囲まれてる……」
首を少しだけ動かして、周囲の闇に溶け込んで隠れているRLを見付ける。