地上6
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「はぁ…はぁ……」
「ひぃ…ふぅ…みぃ……」
「……ここで、一回休憩しようか」
「やあ……でも…こう何度も休憩していたら……」
「いや、ここで休憩しよう」
あれから五日経って、一週間が経とうとしていた。
あの後、同じ時間で眠る事によって、全員の生活リズムはリセットされ、早い段階で足並みを揃えて動けるようになったのは、幸運だったのだが、
「二人共、水を飲んだ方が良い」
「ありがとうッス……」
「喉が…焼けちゃう……」
そこから、身体的な差というのが浮き彫りになる。
RLHであるリナと、身体的に優れている火内は山の中の行軍を耐えていたが、
「ふぅ……」
「生き返る……」
一般的な体力しか持たないミィオと小此木は、限界を超えていた。
「火内君は大丈夫?」
「…………」
「火内君?」
シミュレーションとの違い、アップダウンの激しい山を歩き回るのもそうだが、足元には剥き出しの根っこに石、踏めばへこむ土……それはほんの小さな差異なのだが、足元がおぼつかない。
一歩一歩踏み出す毎に、地面に体力が奪われていく。
これが一日、二日ならパワードスーツのお陰で何とも思わなかったが、三日四日五日……一週間となると、
「はぁ…はぁ……はぁ………」
「芋虫になりたい……」
小さな差異が積み重なって大きな問題となり、ミィオと小此木の二人の口から出て来るのは絶え絶えの息か、絶え絶えの言葉だけになっている。
「火内君、どうしたの?」
「…………」
火内は空を見上げて、まだ空が明るい事を確認しながらも……
「……疲れた」
「えっ?」
「俺も、もう限界」
そう言うと、その場に倒れてしまう。
「火内君!?」
それはリナにとって予想外な状態で、いきなり倒れ込んだ火内の様子を見ようと顔を覗き込むと、
「この行進中に思ったんだけど……これって本当に、クリアできる内容なのかな……」
「クリア……出来る?」
火内の眉間には怪訝そうなシワが浮かんでいた。
「最初さ…十日間の内、一週間で着いて、残りの三日間は予備日みたいな話をしたけどさ……確かに、それは理解出来る理屈だけど逆に考えて、クリアをさせないって考えたらどうかな」
「それって……」
「十日もあって、中央基地にギリギリまでみんな必死に近付く……例え全員が中央基地に辿り着けなかったとしても、間違い無く目と鼻の先には来ているんだから、迎えに行く予備日って必要無いんじゃないんかな?」
「うっ……」
リナも火内の言葉で、これが予めリタイヤを想定しての訓練かもしれないと思って、その場でへたり込んでしまう。