地上3
軍用トラックに揺られながら、遠くへ遠くへと運ばれる。
時折、渡された地図を確認して、自分達がどこにいるのかという話をしたり、どの位で中央基地に着けるかの算段をしたりしていると時間が過ぎ去っていく。
空に昇って白い光を輝かせていた太陽が次第に地に落ちて、空が茜色の夕方に染まる頃、
『ブロォォォォォ……』
軍用のトラックのスピードが緩まり、エンジンの音が小さくなっていく。
「来たね……」
「うん……」
「シミュレーションって凄いッスね。そっくりッス」
そこはシミュレーションで何度も見た場所、何度も始まりの地として訪れた場所、そこに自分達が辿り着いた。
「お前達、ここで降りるんだ」
「「「「はい」」」」
運転手が軍用トラックから降りて来て、自分達にも降りるように促される。
軍用トラックに乗せた荷物を降ろし、これから任務という訓練が始まるという所で、
「よしっ、お前達に私からアドバイスがある」
「「「「はい」」」」
運転手が、神妙な面持ちでリナ達の前に立つ。
「良いかよく聞け、無理はするな。危ない、もう無理だと思ったら躊躇無く救難信号を出せ。兵士になれば命を掛けないといけない場面もあるが、学生である君達は、生きて帰る事が第一だ。成績に響くとかそんな事を考えちゃいけない……私みたいな運搬という道もある」
「「「「ありがとうございます」」」」
「頑張れよ」
運転手もその昔、鳥かごの学生であったのだろうか、リナ達に自分が経験して感じた事を伝えると、最後に手を振り、リナ達を置いて空港へと帰って行ってしまう。
「……行こうか」
「うん」
リナと火内は荷物を背負って、車道から木々が鬱蒼とする森の中に入ろうとするのだが、
「待つッス!!」
「どうしたのミィオ?」
そこで待ったを掛けたのはミィオであった。
「周りを見て欲しッス、確かにシミュレーションで訓練した場所ッスけど、全部が全部一緒じゃないッス」
「えっ……」
ミィオに言われて、もう一度森の方を見ると、確かに大まかな雰囲気はシミュレーションと同じだが、ミクロに見てみると違いがある。
「これはトラップッス。鳥かごの中だと、工事でもない限り環境が変わる事は無いスから気付かないスけど、地上は生きてるッス。自然が環境を変えてるのは間違い無いッス」
「そ…そうなんだ……」
「他のみんなはシミュレーションの気持ちで森に入って、足元を取られて酷い目に合うッスね……自分達は、ここで休もうッス」
そういうとミィオは、荷物をその辺の木の根元に置いて、木に寄り掛かるのであった。