学園9
「我等に戦う知識を与え、我等に誇りを与えし、偉大なる指導者よ……」
「悪魔でも呼ぶ気か……」
店主がブツブツと何かを口ずさみながら祈る姿は、まるで悪魔を呼びをしているかのよう。
肩を背中をブルブルと震わせているのが次第に大きくなり、湯気のような……何かモヤモヤしたオーラみたいなモノが見えているような気がして、
「もぐもぐ……」
赤髪の少年は、お菓子の中から酢漬けされた加工品を口にして咀嚼し、気持ちを落ち着かせる。
おどろおどろしい怨念……店主の意気込みがプレッシャーとなって、嫌な予感を加速させると、
「刮目して見よ!!これが我々の御神体様だぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
店主が棚からバッと離れたそこにあったのは、
「うぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「久しぶりに見たぞ!!黄金像!!」
小瓶くらいの大きさの光り輝く胸像が姿を現す。
「あれは校長?」
いつのまにか用意されていた、小型のスポットライトによって煌びやかに光り輝く胸像には見覚えがある……入学式の時に壇上で話をしていた校長。
何故ここに校長の黄金の胸像があるのか、それが一体何を意味しているのか理解出来るものでは無く、
「やっぱあれってモノホンの金なのか?」
「元々は等身大の黄金像だった物を溶かして、イベントの時に貸し出せるように小さくしたらしいぞ……」
「やっぱそうなのか……この間の冬休みで学校を閉める時と、商店街のクリスマスセールが重なった時に学校の玄関前と、商店街の協賛者として飾られてたんだよ」
周りの野次馬である上級生達ですら、この黄金の校長胸像の全容を掴めていないらしい。
「…………」
出所不明ないわくつきの黄金像……だが、棚に並べられているというのなら景品であるのは間違い無い。
片眼を閉じて、台に肘を付けてコルク銃を構え……
『パンッ……コッン!!』
「……っ!?」
黄金像はピクリともせず、ぶつかって来たコルク弾を弾き返してしまう。
「すげぇ!!すげぇよ校長!!」
「流石は我等の校長!!」
(そういう事か……)
それは上級生の威厳を保つ為の保険。
景品はあくまでも取れるのを前提にしてあるので、ここで取れない景品を置くというのはルール違反であり、白旗を上げた事になって、倒れない細工をしたと興醒めをして、周りの上級生達もブーイングの嵐をしていただろう。
だが、これが校長の黄金像となれば、見た目の煌びやかさで祭りとしても盛り上がり、元からの重さで細工をしていないというオマケ付き。
尚且つ、この学校の長である校長が倒されないというのは、ラスボスが序盤から現れて、倒されるという負けイベントに通ずるものがある。