Vol.5 ロンリーズをぶっ潰せ!
ロンリーズ。スラムを支配するロリコン集団である。
スラム中のロリを集めるロリ狩りを行い、スラムに圧政を引くまさに支配者。
アミアはロリ狩りから生き延びた唯一のロリだった。
帰ってこなくなった友達を思い、今日この日まで生きてきた。
それが今……。
アミアは。スーツ姿の男たちに連れられて細い道を歩いていた。スラム街の細道を何度も曲がって、ついにある場所に辿り着く。
路地を何度も曲がった先にある行き止まり、スーツ姿の男たちはそこで足を止めた。
「ここだ」
「……」
「もう少しで“楽園”だからな待ってろよ」
楽園。
得体の知れない響きがそこにはあった。
甘ったるいオブラートで包んだ毒のような違和感がそこにある。
スーツの男のうち一人が、壁に雑に張られたポスターに向かって手を掲げた。
機械的な駆動音が響く。その直後、壁がずれていく。開いていく。地下へ続く階段が、口を開ける。
「ココを降りる。ココはボスのいるところまで直接続いてるんだ、もうすぐでうちのボスに会えるからな? ボスは幼女には優しいから、いい生活ができるゼ」
スーツの男がアミアの顔を覗き込んだ。
その直後。
「最強の矛」
空気を引き裂くような音が響いた。
あまりにも小さな音だった。赤い光が矢のようなスピードとで飛来して、精密機械のような正確さで、男を真後ろに吹き飛ばした。
「……!? なんだ!?」
動揺が遅れてやってきた。突如吹っ飛んだスーツの男を見て目を見開いたのは男と同じロンリーズのメンバーたち。
「何が起きた!?」
「ま、まさか……」
「敵襲だ」
重たい声が響く。うろたえるスーツ男の後ろに回り込んだ久遠寺がそのまま男に手をかざした。
たったそれだけのことで、男の体が遠くに向かって吹っ飛ばされた。
引き延ばされたゴムにはじかれるような挙動で、男があっという間に見えなくなる。
「こ、こいつら……!」
「まさか……」
「アミア。伏せろ」
「ッ!」
声が響くのと、アミアがその場に伏せるのは同時だった。
一秒未満の後。ドガァァァァァァァァッ! という爆音が何もかもをも薙ぎ払う。
スーツの男たちも、裏路地の壁も吹き飛ばして、階段だけをきれいに残す。
例外は事前にしゃがんだアミアと、自身の周りの空気を壁として変質させた久遠寺だけだ。
「ふぅ。うまくいったな完璧だ」
「……」
「全くだな。それにしても敵襲への対応がまだまだであるがな」
「俺たちならこうはいかねぇよなァ!?」
「……あなた方もたった一人に拠点を壊滅させられたと噂になっていましたが?」
その場にしゃがみこんだままのアミアが突っ込む。
そのとおりである。
反論の余地はない。
「よし、この先にロンリーズのリーダーがいるわけだな」
「うむ。早くぶっ飛ばしに行くぞ……」
ロンリーズの拠点は解らない、正しそのメンバーはロリ狩りを行っている。
狩られた幼女は一先ずボスのところに運ばれる。そこで幼女か否かの判定を受けて、幼女であれば楽園と称される空間に連れていかれるらしい。
そこまでわかっていれば話は早い。
「アミア。貴様はショタではないが中々見どころがある。我々死与太珍教団の仲間になるつもりはないか?」
「それは嫌です」
「考えておいてくれ」
定彦は階段を覗き込む。と顔をくしゃくしゃにしながらため息をついた
「先は長そうだせこれ……」
「いいではないか、昔を思い出すな」
「女神のやつを倒した時か。ま、その時から考えればずいぶんと減ったな、俺たちも」
「あぁ……」
久遠寺が頷く。
「王の席に座り、死与太珍教団を作って、第一位に戦いを挑んで、負けた」
「……」
「死与太珍教団“六芒星”は壊滅的な被害を受けた。アイツは今はどこにいるかもわからない……。第一位をぶっ殺す為の計画も滅茶苦茶にされて俺達はこんな場所まで落ちてきた」
「負け続きであるな、俺達は」
「だが、それであきらめる俺達じゃねぇ……」
定彦は階段から視線を外して二人を見た。
久遠寺と、アミア。
二人に向かって定彦は告げる。
「負けたなら次。それでだめならその次だ……。俺達は負けない、俺達は絶対最後には勝ってみせる。くだらねぇ世界も、ルールも、神様気取りの馬鹿どもも、全員ぶっ殺してやる。行くぞ。俺たちでロンリーズをぶっ潰す」
そして。定彦は宣言する。
「新生死与太珍教団、快進撃の始まりだ」
「ボクは死与太珍教団何て言う気持ち悪い組織のメンバーではありませんけどねぇ」
「まぁそういうなよなぁ! 俺たち、ズッッッッッッッッッ友ってやつじゃねぇか!」
「ここまで来たのならもうあきらめろ。我々は地獄の果てまで一緒だ」