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第12話 襲撃者


「まずは、改めて言っておくわ。助けてくれてありがとう本当に助かったわ」

「……あぁ、それはもういい。気にすんな。照れるだろうが」


 明良の向かい側に座った心は、開口一番にそう言って頭を下げた。その様子に少し面喰いつつもそう返した明良は妙に居心地が悪くなってきて身をよじった。


「アンタって結構かわいいところあるのね」

「おちょくってんのかお前」

「ほめてるのよ」

「舐めあがって……」


 依然、心はニヤニヤとしながら明良の顔を覗き込んでくる。頬を指先でかきながら、明良はわざとらしく咳払いをした。


「か~わいい」

「どうでもいい。というかお前、これからどうするんだ?」


 強引な話題の転換だった。が、ここはどうしても話し合わなくてはならない。

 心もそれを聞けば真剣な表情で口を開く。



「西条定彦と戦う」


 即答だ。がしかし、それは明良の望んでいた答えとは真逆のものであった。


「お前のやるべきことは何だ」


 重ねて問い掛ける。今度もまた、迷うことなく心は言う。


「守と一緒に生きる。あの子に不自由ない平和な暮らしを提供する。それが私のやるべきことよ」

「なら……」


 と、食い気味に言葉をかぶせた明良は心を鋭くにらみつけた。

 夕焼けをそのまま反射したかのような瞳がそのまま心を射抜く。


「なら、お前のやるべきことは西条定彦と戦うことじゃない。奴の支配が及ばない場所まで逃げることだ。変に恩を感じていて、だから最後まで付き合いたいとか、そういう動機ならやめたほうがいい」


「そんな場所はジェイルにはない」


 きっぱりと、心はそう言い切った。そして、力を込めて続ける。


「恩はもちろん感じている。アンタがいなかったら、私は普通に殺されて、それで終わっていたわ」

「あぁ、お前雑魚だもんな」

「否定できない。でも、だから、アイツを倒すしかないの」

「……」

「守に平和な生活を保障するためには、西条定彦を倒すしかない。あいつが、究極のショタだ何だって喚いているうちは守に平穏は訪れない」

「……その通りだな。だが自分勝手な理屈だ。俺は興味ないけど定彦にも定彦の事情があるんじゃねぇのか? お前は奴を近くで見てたんだろうが」


「かもね……、でも」


「でも?」



「そんなの私には関係ない」


 強い意志の込められた瞳だった。金色の瞳は一切揺らぐことなく明良を見ていた。

 自分勝手な願いだ。ただ自分の弟に平和に生きてほしい。その為にジェイルの王のうちの一人を打ち倒すと、心はそう語っている。


 大真面目に、何の冗談もなく。


 見るものが見ればめちゃくちゃだと糾弾しただろう。或いは不可能だと鼻で笑ったかもしれない。


 自分勝手で荒唐無稽。とても現実が見えているとは思えない。


 そして明良は……。



「お前最高だな」


 前のめりになって、真正面からそういった。


 ジェイルの王に自分勝手な理由で戦いを挑み、その撃破を試みる。

明良もまた自分勝手で荒唐無稽。いいや、異能性癖者とは、人とは結局のところそういうものなのだろう。


「……」


「俺好みの巨乳っぽい考え方だ。お前、貧乳なのにやるじゃねぇか」


「わけわかんない」


 明良は静かに手を差し出す。テーブルを挟んで薄く微笑んだ心は緩やかにその手を握り返した。


「共に定彦をブチのめそう」


「……。そうは言っても私はアイツが反省してくれればそれでいいんだけどね」


「甘ちゃんだな」


「それでもいいの。守の手本にならなきゃだから、厳しいだけじゃダメなのよ」


 心は笑っている。しかし、対する明良は思わず顔をしかめた。まるで万力のようにゆっくりとした圧力が明良の手を圧迫する。


「お、おい……?」


「なに?」


「い、いたい……」


「何が」



「お前……! お前!」


 心の手を握る強さがあまりにも強い、その強さは明良ですら思わずうめくほどだ。



「お前! キレてるな!? 事実にそう怒るなよこの壁女!」


「れが……」


「ッッッ!」


 直後、明良の体が空を舞う。


「誰が貧乳よ! このセクハラ野郎ッッッがァ!!!!!」


 直後、大きな体が地面にたたきつけられて凄まじい音が鳴り響いた。


「つっぇぇぇ……」


「頼る相手間違えたかな……」


「俺も助ける相手を間違えたよ……」


 思いっきり投げ飛ばされた明良は転がったまま呻くようにそう返した。そんな状態の明良のことなど気にも留めず、心はそう言えば……とつぶやいてから尋ねた。


「アンタって結局何で西条定彦のこと狙ってんの? 何か因縁とかある感じ?」

「あぁ……それはだな」


 直後、世界が真っ暗闇に染まる。驚く間もないほどに一瞬の出来事だった。

 暗がりの中で、それが停電だと気が付いたのは十秒も沈黙してからだった。


「ッ! な、なにこれ! どうなってるの!?」


 要約状況を飲み込んだのか、心がかすれる声で叫ぶ。


「焦るなよ、ただの停電だろ。サブ電源もあるはずだからしばらくすれば……」


「そこを動くな」


 直後、冷たい声が、二人の背中を冷たく撫でた。

 暗闇の中に、誰かがいる……。


「動くなよ」


 男にしては高く、女にしては低い。そんな印象を受ける声だった。

「気を付けろ……。コイツ……」

、その主は解らず、性別さえも測れない。しかし、これだけはわかる……。この人物は。

 敵性異能性癖者。


「「異能性癖(リビドー)ッ!」」





 直後、二つの声が激突した。

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