第88話 宝玉・海神
―回想―
其れは百年前の噺。前兆無く霊族は復活した。一夜戦争時、四人の英雄により封印された霊族は永き眠りから覚醒めメトロジア王国へと足を踏み入れた。
封印解放の絡繰 不明。目的 不明。戦力 不明。
其の日、騎士団団長は霊獣の墓場にて。何者かの手に掛かり眠らせられた。暫くの後、再び目を開けた彼は眼前の光景を疑う。
助けを求める声に応えつつ、アスト感知により敵勢力が霊族だと判明したところで騎士団の仲間が合流した。
彼等から与えられた記憶を頼りに王女の元へ急ぐが、現着した時には、かつての仲間は片腕を失っていた。共闘虚しく、アルカディア王には歯が立たず敗北は濃厚であった。
死に物狂いで喰らいつきアルカディア王の目的が王女であると知るが、劣勢状態は続く。
騎士長が現着する以前より、王女と仲間はとある画策をしていた。決断を迫られた騎士長は遂に王女と共にメトロジア城の最下層へ駆け出した。
『此処が、扉…』
『ええ。ペンダントにアストエネルギーを注いで開くの……。ねぇリオン、ごめんね。ありがとう。…ありがとう』
『カグヤ?』
曖昧に微笑む仕草が切なく、光を生む。首元に飾られた楕円形ペンダントトップにアストを注ぎ込むと眼前の扉は開かれた。
騎士長は扉の先に広がる白一色の景色に警戒心を募らせるが王女に無言で頷かれ、歩を進めた。
―――
「ここは……何処なんだ」
「此処は…うっ」
「カグヤ!?無茶するな、少し息を整えよう」
其処には何とも形容し難い世界があった。先程まで城の下層に居たリオンとカグヤは今、草花に囲まれている。青々しい草木が育生されているらしい空間だったが天を見上げてもそれらしい青空は見当たらない。何処からか降り注がれる光が栄養源と見える。
有り得ない空間にリオンは困惑の声を上げた。カグヤに尋ねようと繋がれた手の先を見つめるが、青白い顔と目が合うだけだった。立っているのがやっとの状態では全容を聞こうにも心が持たない。リオンに催促され彼女は腰を下ろした。
「此処はね、"開闢の歪"と呼ばれた先の世界なの」
「開闢の歪の……先?」
「えぇ。遥か古の時代、空間に生じた亀裂を進むと別世界が在った。別世界で生きる人と交流を始めたの。其れが開闢の歪と呼ばれる所以。…歪を護るように造られたのが開闢の門、私達が潜った扉よ」
「そんな話、…」
「現在は閉ざされた古い逸話だから知らなくとも無理はないわ」
握り手は弱々しくも、言葉を紡ぐ声は強く揺るぎない。子供達に絵本を読み聞かせるような口調でカグヤはリオンに告げた。
ペンダントを用いて開いた扉を開闢の門、二人が進んだ白一色の空間が開闢の歪だ。一口に神話時代と言っても人と霊獣が出会い、神話戦争が起こるまでの期間は壮大で膨大な時間が流れており、必然と知る者は限られてくる。
突拍子もない別世界、異世界人と言われてもリオンは混乱するだろうが、それでも誰よりも信頼出来る人が告げる噺を彼は信じた。嘯くような状況でも無いし、嘯くような人でも無い。
「此処に眠る霊族に対抗する力こそが、五大宝玉」
「五大、宝玉?それがさっき言った神話時代のモノだってのか」
「そう。五大宝玉は超過の力、とても扱えたモノでは無いのだけれど……五つある内の二つが霊族に奪われた」
「!!」
「宝玉は宝玉を以てしてのみ、撃つ事が可能。それだけ危険で…存在してはいけない、闇に屠られた力。三つの内、居所が判明しているのが此処だった。ねぇリオン、中心まで私を連れて行って」
「あ、あぁ…」
突拍子もない噺は続く。常日頃側に居たカグヤが初めて知らぬ顔を見せた。底抜けの笑顔でも愛しげな微笑でも無い、王族の娘としての覚悟の顔。きっとリオンに見せまいとしていた表情。
自分は無知で不甲斐ない男だとこの時ばかりは自覚した。隠していた一国の王女としての顔に騎士長は気圧され息を呑んだ。喉を伝う唾が、酷く吐き気を催す熱を持って流れ落ちる。
五大宝玉、存在してはいけない超過の力、五つある内の奪われた二つ。霊族に対抗するとは名ばかりで此処へ来た真の目的は霊族側が所有する宝玉に対応する為の宝玉を取りに来た、だ。残りの三つで唯一、居所が判明しているのが此処だったと続けざまに話す。
何もない中心にカグヤを連れて行く。支えていなければ直ぐにでも崩れてしまいそうな身体で何をするのやら。
「《有史の業 悠然の王
我が名はカグヤ・A・メトロジア
開闢の歪より来たれり 遊星
我が身を以て 顕現せよ》」
見えない球体を下から抱えるようなポーズで両手を調節するとカグヤは詠唱を発した。瞬く間に擬似球体に収縮されていく光、光が意思を持っているかの如く数度波打ち風を生む。瞬くのも惜しいほどの壮大な光は次第に一つの形へと形成・圧縮されてゆく。
「これが…ー!」
「宝玉には其々を冠する名がある。……とある方が開闢の歪へ置いていったソレの名は"五大宝玉・海神"」
「ワダツミ……」
「もうこれしか対抗手段が残されていない」
光が一点に留まる。宙に浮く不可思議な物体こそが"五大宝玉・海神"。
外形はカグヤの所有するペンダントと大差ない大きさで、立体的な菱形であるのが特徴だ。恐ろしく精巧な装飾が宝石らしき菱形に模られ、下方へと根を張る。上方を見れば針のような長円が五つ浮かんでおり、菱形の中心を見つめると得体の知れない文様と目が合う。
宝玉・海神が体現する色は青。残り四つが如何なる造形か想像出来る筈も無いが其々、色彩が異なるのだろうと辛うじて予測を立てられた。
「カグヤ、これが…本当にコレが宝玉なのか」
「えっ」
「超圧縮された禍々しいアストエネルギー。コレをどう使えと……?」
「だからこそ宝玉は存在してはいけない力なの。ごめんね。…力に身を任せてはいけない。呑み込まれてしまうから。……宝玉を今から貴方に宿します」
「俺は、これでも騎士団のトップを名乗ってる。宝玉を宿すには相応の代償が必要になる。そうだろ」
「!……リオン」
「扉を開くとき、海神を出現させるとき、二度もアストエネルギーを使い過ぎてる。これ以上アストを浪費すれば命に関わる…、それでなくともカグヤは身体が弱い。……無茶するな」
開闢の歪を抜け二人っきりの空間へ足を踏み入れた折、リオンはアスト感知を解いた。気の緩みからか、はたまた感知が働かぬほど浮世離れした噺に思考を乱されたか。何方にせよ騎士長としての性を思い出したリオンは宝玉・海神に対してアスト感知をした。
アストエネルギーは星の民と霊族で質が違う。故に対霊族に於いて感知の重要性が増す。では、高密度アストの宝玉は?
答えは単純、最悪だ。リオンが感知した海神のアストは禍々しく、人の手で生み出されたとは思えぬ…いや思いたくない。象られた姿が偶々宝玉だっただけで悪魔となりても可笑しくない。存在してはならない力が四つ、その内の二つは霊族が所持していると考えたくもない。
青白いカグヤに待ったを掛けた。遠くへ消えてしまいそうな彼女を繋ぎ止める為、再度無茶はするなと言葉で伝えるが無言で首を左右に振られる。
「…ずっと考えていたの。私が生まれた意味を。私が為すべき事を。沢山考えて出した答えが此処にある」
「向こうに帰ってからでも宝玉を取り込む事は出来る筈だ。帰ろう、俺が守る」
「扉を開ける力は残っていないの。そして扉は王族の血とペンダントが揃わなければ決して開く事もない」
「だったら回復するまで休めば良いだろッ。この世界にも人は居る。宿は俺が探すから」
「宝玉が希望となるか絶望となるか、宿り主次第で如何様にも変えられる」
「カグヤ……っやめろ」
「貴方の血が貴方のものである限り、宝玉に蝕まれる事実を覆す事は私には出来ないけれど、どうか打ち勝って」
「守らせてくれ……」
カグヤには何が見えているのだろう。リオンには何が見えていないのだろう。カグヤの身体に負荷と代償が掛かると判っていてアストを使わせる訳にはいかない。
断固として言葉を改めず、先へ進み続ける彼女の瞳に苦痛に歪むリオンが映る。常に最悪の場合を考えるのが騎士としての性だ。見え隠れする真実の時は刻々と迫っていく。
徐々にズレ始めた言葉が風となり、双方を吹き抜ける。交錯する目が同じ景色を見ているとは限らない。
「黙っていた事、謝るわ。そして知って、貴方の使命と未来を」
「……俺は守りたかった。お前の方がよっぽど格好良いよ」
(リオンっ…!)
今にも濡れてしまいそうな面が本音を呟いた。覚悟を決めた人間は梃子でも動かせない。動かせるのは僅かな琴線のみ。リオンの一言がカグヤの心に流れ落ち心臓を鳴らす。何もかも擲って抱き締めたい欲を堪え彼女は真を綴った。
「《汝 深水源への到達 畏れる事無かれ
鏡水の映り絵 水明の浮き絵 画して渦中
天中筆を取れ 彩らせてみよ俄の雨
天中覆せば 天上の河と為す
祖は柱か 礎は柱か 否。 其は器なり
降り注がれゆく細流に澄ませば 形象宿る
超覚醒法術 海神》―――」
詠唱術をリオンは識らない。何時かの日和に知識として習ったが自分には関係ないと上の空だった。雲行きの怪しさにすら気付かないとは。
一等麗しく、宝玉から光が解き放たれ宙をふよふよ移動する。リオンの心臓部に留まると光を引き連れて体内に侵入していった。此れがカグヤの云う"宿す"行為なのだと気付くのにはそう時間が掛からなかった。
「宝玉が俺の中に……うぐっ!?!」
「血に抗って、良いのよ。……ーーッ」
「カグヤ!!」
「やっぱりリオンは支えてくれた。フフッ当たるのよね私の勘」
「こんな時になんの冗談だ」
「……はぁ、…はぁ。冗談じゃないのよ。…支えてくれるから痛みは感じないわ」
一秒前まで眼前に存在していた物質が己の体内に在るとは些か薄気味悪さすら覚える事態だ。…その程度なら苦労はしない。脳内処理が追い付いた途端、リオンに異変が起こる。
突如として猛烈な嘔気に襲われる。禍々しいアストの塊が体内に有るのだ、多少の不快感は構えていたが意味を成さなかった。まるで体内を暴れ牛が駆け巡り肉を喰い千切ろうとしているような、そんな嘔気だった。
気を抜けば意識が乗っ取られそうな視界の端、身体が傾く彼女が過ぎった。気張っていたカグヤはリオンに身を預け、柔らかく笑う。暴れ牛の嘔気などどうでも良くなる程に支えた身体には力が無かった。蒼白な指先が彼を求め絡み付く。膝を曲げたリオンはカグヤを地面には下ろさず、引き寄せた。
「駄目ね。失敗……アストエネルギーと私自身の実力が足りなかった」
「どうでもいい」
「良くない。…っ半端な力は身を滅ぼす。……詰まらない枷が出来てしまった」
「どうでもいいッ」
「これでは戦いの邪魔になってしまうのよ。最期に未練が出来たなぁ……」
「俺は!!…カグヤを守ってきた…守って此処まで来たんだ。死なせる為に連れて来た訳じゃねぇ………ッ!!!」
「あぁ…泣かない、で……」
「……ーっ」
ある種の主人公の様に、格好良く男泣きを決めたかったが現実は非情だ。守り抜いた気で居た。此処が墓場になるなどとは考えもしなかった。自分に悟られぬよう彼女は気丈に振る舞っていた。滂沱の如く、溢れてやまない後悔が流れ行き着く先は何処か。嗚呼、己は何と恰好の付かない男だ。
霊族に対抗する力、の代償を開闢の歪を抜けて初めて知った。騎士長が聞いて呆れる。自分は何の為にカグヤを連れて来たのだ。彼女は全身をリオンに預け、なけなしの力で頬に触れた。雫を拭う動作すら出来ずに指先を伝い流れる涙に泣かないでと言った。
急速に奪われる体温が生温かい水滴によって保たれる。生命活動も残り僅か……。
「未来へ託す為に、最期のアストエネルギーを使うわ。よく聞いて」
「……」
「転生術を発動させる。……って実はもう発動してるの。…」
「転、生?!……いくな…俺が守るから…っ」
「ペンダントの欠片を持っていて。必ず手放しては駄目よ。王家の血が途絶えぬようにと生み出された術で私は生まれ変わる。いつか話した……ね」
「嗚呼、覚えてる。転生術は魂の映し換え。そこに人格は作用されない。カグヤ自身は死ぬんだぞ」
「受け取ってくれる?ペンダント……」
「カグヤ…ッ」
王族の血筋は、何よりも重い。リオンもカグヤもよく理解している事実だ。正義云々の話をしているのではなく一国の統治者、その血縁者で有る事の重圧の話をしているのだ。
王族の血が途切れぬよう生み出されし転生術を発動させてしまったカグヤは金色の光に包まれてゆく。光の粒子が天へと登る度、彼女の身体に亀裂が走る。無情に砕ける鏡の様に何時かは跡形もなく片付けられてしまうのだろうか。
一層強く抱き締めた時、カグヤの手が離れペンダントを掴む。一瞬、光が首元に集まると瞬きの間にペンダントはパッキリと割れた。勿論、力任せでないのは明白だが二人の声以外に存在しなかった音が現れ、今際の際を告げるので心が締め付けられる。
「五大宝玉は王族の指示により生み出され、王族の身勝手な振る舞いで葬り去られた。大勢の無辜の民が、…犠牲になった」
「もう何も言うな」
「だから貴方の手で国を変えて」
「!」
「霊族との蟠りを、今度は宝玉で失くすの」
「守りたい人を目の前にして守れないような人間に出来る事は少ない……」
カグヤは瞳は既にリオンを映していない。虚ろの赤目で彼女が見つめる先は未来、アレンが言った"繋ぐ未来"を只管に願う。熱くなる身体で冷たくなる身体を抱き留めたい一心だったリオンは涙を一時止める。
メトロジア王国興って以来の闇の歴史、五大宝玉を闇のままで終わらせぬ強き意志が心に響く。響いたものの自分は力不足だと卑下する。守りたい人を守れずして何が出来よう。
「泣かないで…、必ず……あなたの元へ………辿り、着いて、みせるから…だからまたね…
"ペンダントの欠片が道標になってくれるわ"」
「カグ……ヤ…!カグヤーっ!!!」
光が彼女を攫い、逃げ切った。世界中を探しても居ない彼女を呼び寄せるように名を叫ぶが、返ってきたのは醜い嘔気のみ。それでも尚、狭い空間世界に光が注がれるからやるせない気概に囚われる。
どれだけ自分を責めても後悔しても彼女は帰って来ない。遺されたペンダントの欠片を握り締め、そっと胸元に当てた。彼女の言葉一節一節を心中で反芻し、ゆらりと立ち上がる。
「何年、何十年、何百年経とうが待つさ。お前の想い確かに受け取った。……俺はこの国を変える―――!!!」
閉ざされた扉を前に青年が独り決意を改める。
開閉には王族の血筋と完全なペンダントが必要だ。転生術の成される日を彼は待つ。
―回想終了―
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現在軸。
水龍と話を付ける為、水晶石へ入ったリオンは火龍も含めた場で、百年前を思い起こし双龍に五大宝玉は譲らないと宣言した。
「梶の葉って奴が何の為に開闢の歪に向かったのか俺には想像する事しか出来ねぇが、戦を終わらせたかった想いは同じな筈だ」
「黙れっッ小僧が梶の葉の何を理解する!?」
「少なくとも双龍……いや霊獣か?兎に角お前らより人間の事は分かってる」
「霊獣の呼び名は棄てた」
「そーかい」
「フンッ。逆に考えれば良い見物が出来たとも言える。宝玉に苦しむ小僧は良い暇潰しだ」
「悪趣味な奴だ。話は終わっただろとっとと帰せ」
「アレンの友よ。くれぐれも宝玉に乗せられるな」
「!…ったりめぇだ」
五大宝玉は戦を左右させる力を持つ。一介の人間が取り込んで良い代物では無い。誰でもない自分に託されたのはある意味不幸中の幸いだったとも言える。
国を変える者として双龍を突っぱね、意志を固めるが双龍の恨みは益々根深いものになった。
最後に零された火龍の言葉を胸にリオンは水晶石を追い出された。当分、戻って来れそうにない。戻って来る理由もないか。リオンの消えた水晶石でまだ少し会話は続いた。
『許して火龍、水龍。わたしはこの世界を出て行くよ。後は頼む』
「……水龍よ」
「何も言うでない火龍」
「話さなくて良いのか」
「話す義理など無いだろう」
「ドラグ家の窮地を救った。そして何より水龍が認めた相手だろう。義理はそれで十分」
「生意気小僧を追い出す為に力を与えたに過ぎん」
(アヤツの両親について、死んでも口を割るか)
「何時かの人間が言っていたなツンデレと」
「なにをォォッ!!?!」
話さぬのなら語るも惜しい。双龍の会話は誰に聞かれる事も無かった。
――――――
―――
「おかえりなさい」
「おう」
ジンジンと痛む鼓膜を押さえ、地上へ戻ってきたリオンはイリヤからエトワールを受け取る。双龍の居ない地上は清々しいほどに空気が美味しく、ほんの少し静か過ぎる。
「その様子だとまたどやされた?」
「声と態度がデカイのが取り柄みたいな奴等だからな」
「フッ。双龍が話していた事、少しでいいからお裾分けしてね」
「少しだけな」
掌に収まるサイズに戻った水晶石を抱え、イリヤはリオンの隣に並ぶ。自分の役目は終わり、後は出発するのを見送るしか無いが気分は爽快であった。陽射しに照らされた雪ののように程良い溶け具合で笑みを浮かべた。
「おーっいリオン!イリヤ!」
「アロマ!」
「さてリオン、また手伝ってもらおうかな」
「なっ。少しは休ませろ」
「冗談よ!」
「アロマったら……ん?」
「……っ」
「出て来てもいいよ」
「イリヤさん……」
「変に意識して挙動不審にならない!」
「っはい!」
「天音、外に居ると風邪引くぞ」
「うん……すぐ入る」
「今日休んだら明日出発するから準備しとけ」
「え!?また早い!もうちょっと休もうよ〜」
分家の前には宗家の皆が揃っていた。彼女等は吹っ切れたような表情で二人を出迎える。最初に声を掛けたのはアロマで、イリヤは駆け足で寄る。冗談めかしな小言を言いつつ、感謝の念を忘れないアロマは口角を上げ水龍の水晶石とペンダントを受け取る。
他にはリュウシンが居たのだが彼は苦笑し、自身の背後に視線を送った。背後には気まずそうに影に隠れる天音が居た。出る幕ではないと知っていながら、リオンが心配でついつい出て来てしまった。
イリヤに背筋を正され、リオンと向き直る。と言っても積もるような話もなく、他愛ない会話で再会を喜んだ。
ポスポロス入りは間もなく……。




