第57話 星合とユメビト
「あ〜…眠い。昨日の酒も抜け切ってないのに、朝っぱらから何の用?リオン」
「…」
大きな欠伸を手で覆う早朝。薄く広がる朝霧の景色を見つめランスは自分を叩き起こした張本人、リオンに問い詰める。
「ポスポロスに入る前に教えろランス。騎士団の現状を」
「…何で訊く側の方が態度がデカイのか、敢えてツッコまないでおいてやるよ。何処まで知ってる?」
「何とも。最近までメトロジアの様子を見聞き出来ない場所に居たもんで。停戦協定の事すら知らなかったぐらいだ」
「なるほど」
リオンには気掛かりな事がまだ残っていた。メトロジア王国に忠義を尽くす近衛騎士団の現状だ。妙に態度がデカイのが引っ掛かるが突っ込みを諦めるランス。話を早く進めて、二度寝したいのだ。
多くは語れない諸事情。ランスがリオンの誤魔化しを受け入れる理由は唯一つ、彼を信頼しているから。リオンもまたランスを信頼するからこそ態々、訊きに来た。
「霊族が復活して最前線で戦った騎士達は散り散りになったと聞かされたよ。僕みたく故郷に帰った人も居るんじゃないかな。けどノーヴルさんとレグルスさんは…」
「あの二人が何もしない訳がねぇ」
「うん、二人は散り散りになった騎士団を再結成すると話してた。停戦協定の後、誘われたよ。無事なら来ないかって。ま、僕が騎士団に居る必要はなくなったから断ったけど」
「ある程度纏まった数で動いてる…フッ」
「再結成だけじゃなくて国中の状況確認して回ってるから会えるかどうかは運次第だな」
「それが分かっただけでも十分だ」
前騎士団長のノーヴルと副団長のレグルスは停戦協定が締結され王族が滅んでも尚、騎士としての道を絶やさない。メトロジア王国には幾つも街がある。スコアリーズの様にある程度大きく、統治が成されている街は兎も角小さな街は常に人手不足だ。復興の手助けをして回っている為、騎士団に会うには運を味方につける必要があるとランスは話す。
「僕が見かけた時は数十人は居たと記憶してる」
「数十人の中に……アレンとシオンは…」
「見てないね」
「…見てねぇか」
「確定したと決まった訳じゃないさ」
「わ〜ってる」
「…。思い出した」
「何を?」
「起きたら渡しとけよって頼まれてたんだ。リオン少し待ってろ」
知らないなら構わないと言った態度を変えずに居たリオンだが、矢張り共に育った親友の安否が気になるようで。最悪の事態を想定し表情が曇る。
不意にランスが言葉を漏らす。リオンに渡す予定の何かを取りに一度帰宅する彼を見送り朝霧の消える瞬間を目撃した。
――――――
「お祭りの後って疲れが残ってる方が余韻に浸れて良いよね……って誰も居ないし」
予定時間に目を覚まし、朝支度を整えてから階段を降りラウンジで皆を待つ天音だったが向かった先には人っ子一人居ない。独り言が虚しく響く。
(リュウシンにはさっき会ったけど)
『吟遊詩の事で頭主様に呼ばれたから明鏡新星のある地下まで行くけど天音はどうする?リオン待ってても良いけど』
(リオン…全然帰ってこない。ティアナは高台に行くのが見えたし、スタファノも後を追ってった…。リオン置いていこうかな、でも頭主様には私とリオンとリュウシンの三人が呼ばれてるし……)
「まさかっリオン…!?!」
恐らく、三人が呼ばれた理由は吟遊詩の原曲に関した話をする為だろう。リオンは朝早くに出掛けた形跡があったらしく、もぬけの殻だった。先に行ったリュウシンに断りを入れリオンを待つ天音は、思考が悪い方向に流れ始めた。
クラールハイトの前科もあり、天音はリオンが自分に告げずに立ち去ったと不安に思い、急いで外へ彼を探しに宿屋の扉を開けた。
「リーオーン!!……!」
「深刻な顔は似合わないな」
「居たぁ!良かった…また出て行ったのかとばかり」
「一人じゃ行かねぇって、二日後に此処を出る予定だ」
「何時も早いね。分かった!準備はもう済ませてあるよ」
宿屋の手前で彼の名を呼ぶ。左右に振っても返事はなく天音の不安は益々募ったが、背後から見知った声が漸く降りてきた。リオンの変わらない声と表情を聞き、先程までの不安が嘘のように消え去った。
何時もの調子に戻った天音はリオンの手元に視線を移す。
「ソレって…?」
「お前にだとよ。エトワール技巧師達の餞別だ。杖タイプのエトワール、能力はアストエネルギーの伝達」
「技巧師の三人が私に…!」
「アストエネルギーを込める事で盾変化がスムーズに出来る。最低限身は守れるだろ。ただ…」
「えいっ!ホントだ…!?あれ身体に力が入んな…い」
「ただやり過ぎると倒れる」
「ハハ、頑張ってコントロールします…」
エトワール技巧師三名は加工カラットの御礼として天音の身を守るエトワールを製作し、授けた。直接手渡したかったが生憎、多忙で比較的自由のあるランスを介入した。
杖タイプのエトワールはモードを行った代物だがエトワール式法術は使わない珍しいタイプだった。アストエネルギーを体外へ放出する際にスムーズに出せるように手助けする役割を担う。
リオンの説明を聞き流し、実際に試す。然程勢いを込めた訳ではないが瞬時に杖エトワールの前に盾が出現する。加えて、天音が出せる限界の強度を超え頑丈になっていた。だが、突発的に身体が傾く。倒れそうなところをリオンが片手で受け止め事なきを得、説明を聞かなかった事を後悔した。
「…?どうしたのリオン、立ち止まって」
「天音、俺はずっとお前に対して苛ついていた」
「えっ!!?…私が不甲斐ないから……」
「昨日、訳が分かった。今日お前の顔を見て引っ掛かっていたものが漸く解けた」
「??」
「俺にとって天音は既に日常の一部だ。日常は二度と奪われたくねぇからな」
「ーっ!、…日常って…」
伸縮性のある杖エトワールをポーチに入れ地下へ向かう天音と何故か途中で立ち止まるリオン。不思議に思い振り返って首を傾げる天音に彼は吹っ切れた顔で、日常会話の延長線上を伝えた。
何を言われるのやら、身構えていた天音は自分がそれもリオンの日常の中に生きていると、さも当たり前に告げられ、感情が赤く吹き出す。呂律の回らない口をパクパクと開閉しリオンを見つめる。彼はと言うと天音の変化に何も言わず、見事にスルーしてスタスタと先を歩く。
「…まって!!」
「何だ?」
(何だ…じゃなくない!?かく言う私も思わず止めてしまっただけで…〜〜)
「…まって」
「…おう?」
(日常…日常……日常………う〜ん?リオンにとっての日常ってなに?!多分深い意味は無いんだろうけど…言い逃げはズルい。何か言わないと負けた気分になるじゃん…うん)
「私にとっても日常だよ。リオンはどうだったか分からないけど私は出会う前から夢人のリオンを知っていたし、ずっと日常だった。私も日常の一部は居なくなってほしくない」
「!言うようになったじゃねぇか」
思わず、先を急ぐリオンの足を止める。自分だけ狼狽えている事実に天音は心の中で只管、悶々と考え込む。
両手で熱い頬を覆い隠し、視線を斜め下に向ける。直視出来ないほどの動揺は暫く続きやがて落ち着いた。自分にとっての日常を振り返り、深呼吸してからリオンを真っ直ぐに見つめてようやっと呂律を回した。
天音の不安は完全に払拭されていない。夢人として何度も出会ったリオンに、邂逅した日から彼女の新たな日常は始まった。一息、とまではいかなかったが意志は伝わった。彼女の成長を感じ、フッと笑みが溢れる。無意識に緩んだ口元はリオンと天音、二人分だ。
「私だって成長してますから!」
「だな。俺はもう独りじゃねぇんだ」
――――――
ティアナSide
「スコアリーズとも時期おさらば…か」
「二日後だって〜」
宿屋付近の高台で物思いに耽るティアナ。手入れ布でアルコバレーノを拭きつつ景色を眺めようと顔を上げるが、呑気な顔面が視界を遮り沸々と怒りを溜める。
「ティアナ〜」
「邪魔だッ!!」
「ひっどいなぁ〜。オレだって頑張ったのに…。頑張ったでしょ?オレ!!」
「たすか…」
「お礼言ってくれるの?」
「っ!言わん!!」
「またまた照れちゃって可愛いなぁ」
視界をちょこまかと動くスタファノは反応欲しさに身振り手振りが大袈裟になっていき遂にティアナの怒りに触れた。然し、彼女の怒りなど全く意に介さないスタファノは何時もの調子で承認欲求を満たす。
律儀に御礼を言おうとするティアナだったがカラットタウンで二度と礼を言わんと誓った事を思い出し留まる。危ない危ない。
その代わり、先の戦場で感じた疑問を彼に訊いてみた。
「…あんたが攻撃技を使わなかったのには何か理由があるのか?使えないだけか?」
「うん忘れちゃった〜。そんな野蛮なコトよりオレの旅目的聞きたいでしょ」
「あんたは闘える筈だ。ぎこちなかったが闘える人間の動きをしてた」
「オレの旅目的は〜ジャジャーン!ティアナをオトすこと!!」
「は…はぁ?!!」
「つまりティアナがオレを好きになるようってこと!」
「くだらん。大体あんたにメリットないだろ」
「あるよ。ティアナが好きになってくれるそれだけで良いの」
相手を拘束する法術は使えど直接的な攻撃はしなかった。出来る場面はあった。必ずしもサポート役が後方支援に徹する必要はなく、ティアナはスタファノの戦い方に疑問を抱いた。目を合わせて訊いても彼は答える気など更々無いようで強引に話題を変える。
随分、引っ張った割には巫山戯た旅目的だとティアナは目を見張った。余り取り乱せば、調子に乗りかねんと湧き上がる感情を抑え冷静に跳ね除けるがスタファノはニコニコと笑うばかりで表情を崩さない。
「あたしが誰かに本気の好意を抱くとは思えない。あんただってそうだ。本気って事は無いだろう」
(少し前までは…ね)
「ティアナが言ったんじゃん?あたしの音だけ聞いてろって!」
「アレは…永続的なものじゃない!!」
「え〜?」
「フンッ」
「だからさ、復讐だけなんて寂しいこと言わないでよ」
「…あたしが決めた茨道だ」
「その先の花道はオレが創るから」
"本気"に興味はない筈だった。ティアナが変えてくれたのだ。彼女は微塵も思っていないだろうが。湿っぽい話は互いに好かない、態と明るく振る舞い誤魔化す。
ティアナはかつて茨道を燃やしながら進むと言った。何時か彼女自身も復讐の業火に身を焼かれ消えてしまうのではとスタファノは危惧し、ならば焼き消える前に花道を創ると優しく告げた。
「人の想いなど口ではどうとでも言える。腹の中は誰にも分かりはしない」
「証明してあげよっか?…ん」
「!」
「え〜ひどい…今のはその流れだった」
「…阿呆か」
「ム〜」
さり気なくティアナとの距離を詰め、吐息が掛かるほど密着する。彼女を見下げ、仄かに紅い唇に証明を見せようとするが直前で顎下を持ち上げられ何事もなく終了した。
スタファノの目線はティアナを捉えられず青空を眺めるしか無かった。眼下では一瞬、受け入れそうになった自分に動揺が隠せないティアナが心臓を押さえていた。
彼女の状況は見れないが、しっかりと鼓動の速さは伝わってしまっていた。
―――――― ―――
「……何かあった?」
「な、なななにも無いよ!?!」
(こっちまで恥ずかしくなってくる…)
リオンと天音が地下へ合流し、役者が揃う。些細な変化に気付きやすいリュウシンは天音に問い掛けるが予想以上にテンパったので、訊いた本人も気恥ずかしくなっていた。
「宜しいですか」
「はいっ頭主様…!」
「思っていた通り明鏡新星は吟遊詩のマコトを映しました」
「貴方方には見る権利があります」
痺れを切らしたカノンは事を進めたいと、天音達の会話を遮る。顔色がはっきり見える程度には明るい部屋で慌てて姿勢を正す。
現状で明鏡新星が扱えるのは朧しか居らず、彼もこの場に居合わせ見事、吟遊詩の原曲を取り戻してみせた。因みに外には万一の事態に備えタクトとビワが待機する徹底ぶりだ。
「《星合とユメビト》…」
《何れ昔々の御伽噺と成るであろう
乙女を遣わす五芒星 穢れた理の片道
宝玉の繰り手と成る 選ばれた我等は英雄
其の名を轟かし給う
繰り返し 繰り出した 解放せし力
始まりを告げる 星影
失われた乙女の微笑み 探し彷徨う
御霊 掲げたるは 万の叡智 蓄えし童子
憧憬の背潰え 仄かに 戸惑い 雫伝う
天壌無窮の悟は 彼方へ続く 道標
白魔 掲げたるは 誉れ高き蕾なり
花籠りの貴方 命尽きる迄 踊り狂え
非業の往生際にて 哀姫麗しく 華散らす
天魔 掲げたるは 脣星落落の心 唄いし若人
囃す弦音 玲瓏たりとも 光陰惜しげむ
己の天命 託し 輪廻巡る
我が身 朽ちゆく運命ならばと
終わりを告げる 海神
永別の時 開闢の歪 求め往く
袂を分かつ 我らが片割れ
渡り日 目先には 幻想映したのだろう
違えた先には 紅涙すら消ゆ 顛末
せめて星合には逢瀬願いたい
木霊 木霊 刻む星幽 祖の幕下ろしは
結えた契 解かれぬように
言の葉 散らぬうちに 何時しか姿視えず
其方様の啓示すらも 乱世に攫われ泡沫
星欠片は 降り注がねば 下向く心根に映らぬ
帝の威光 讃え謳えども 絡め取られ
徒花 知らぬと 枯らせ綻ぶ
我等の偽り御伽 態々実らせる》
カノン、朧は全員が揃う前に見終わっていた。二人が何を思ったかは問題ではない。リオン、天音、リュウシンの三人は 《星合とユメビト》を知った今、何を思うのか。
「《眠る願い星》とは違う…。もっとストレートな言い回しだ」
「王族が殺した詩…」
「五大宝玉が如何に神話に生きる者達の運命を狂わせたかが良く解ります」
「…」
「リオン?」
(また、その顔…)
「私には想像も尽きませんがきっと募る思いもあるのでしょう」
吟遊詩に対する思い入れも内容の重要度も三者三様で。天音とリュウシンが神話時代の御伽話に目を向ける中、リオンだけは別の時代を振り返っていた。
最近は互いの信頼関係が築かれ、心の距離が遠のくと言った経験はなかったのだが、霊獣の墓場やカラットタウンの銅像前で見せた話し掛けにくい横顔を、リオンはしていた。天音だけが知っている天音の苦手な面だ。
「ねぇリュウシン」
「ん?」
「重い物の3分の1ってどのくらいだろ?」
「ん??」
「天音さん何時かで構いません。メトロジア城に眠る生の原曲を見つけてください」
「勿論です。必ず見つけてみせる…。それと約束もします。王族は絶対スコアリーズを蔑ろにしないって」
「ありがとうございます」
「宝玉を宿す者と互角に戦えんのは、同じ類の人間だけだ」
「え?リオン、何処行くんだ…無視?」
「…」
思い重く。カノンから穢れた血族だと言われ塞ぎ込んでいた時、リオンは折半すれば良いと言ってくれた。そして、彼の抱えるものを3分の1譲ってくれるとも。リオンの横顔を眺める彼女の横顔も自然と揺らぐ。
不意に発したと思えば、踵を返し地下を後にするリオン。リュウシンの声すらも聞こえてない。当然、天音の横顔も。
「行ってきたら?」
「な、ん!?」
「気になるって顔に書いてある」
「!…行ってくる」
「リオンさんは今のところ歩いていますので駆け足で向かえば地下を出る頃には合流出来ますよ」
リュウシンの後押しと明鏡新星でリオンの様子を伝える朧の気遣いもあり、天音は決断を早め駆け出した。
――――――
天音Side
「はぁ…はぁ…!」
「…」
徒歩と言っても歩幅は大きく、駆け足の天音が息を切らす頃にようやっと追い付く。返事が来なくてもいい、思い切って背に尋ねた。
「カラットタウンでのリオンの力は宝玉が原因?」
「嗚呼。そうだ」
「さっきの言葉、まるで霊族が宝玉を持ってるかのような言い方だった。まさかとは思うけど、アースも宝玉を宿したの?」
「…カグヤから聞いた内容だ。霊族側に奪われたと。現在の所持者は知らねぇが十中八九、奴が絡んでる」
天音の声に立ち止まったが振り返らずに質問に答えた。淡々と響く低い声は、五大宝玉に対してではなくカグヤの面影とアースの陰謀に対する募る思いから来るものだった。
(もし、宝玉同士がぶつかり合ったら一体どれだけの被害が…!?)
「だからこそ俺はこの国を変えなきゃならねぇ。宝玉を生み出し使い捨てたこの国を」
「…。また暴走したら」
「心配要らねぇよ」
(そもそも今の俺は"宝玉が使えない")
何時か来るかも知れない宝玉同士の末路。遠い未来のような隣合わせのような世界線に息を呑む。
(また暴走したら、私が止めるから)
――――――
スタファノSide
「今頃、天音ちゃん達は地下に居るのかな〜」
「あんたは何時まで居るつもりだ」
「ずーっと」
高台のティアナの側に居座るスタファノ、彼女の苛つきを見て見ぬ振りをして過ごす。何度、睨まれようが引き返す気はない。
「ティアナは興味ない?ホーギョク」
「あたしには神話の遺物は手に余る」
「リオンがホーギョクを持ってたなんて全然知らなかったよ」
「何処まで本音か判らんな」
「全部だよ全部!でも頭主様の話す前からホーギョク自体は知ってたけど」
興味が無い訳では無いが、神話時代の代物はティアナからすれば遠い世界だ。普段から軽薄なスタファノに露ほどの信頼も無いので軽く受け流して終わるも最後の最後に微妙に気になる一言を残される。
(カラットタウンの暴走と昏睡、もしかしたらって思ってたけど、本当に宝玉が原因だったなんてビックリ)
「五つある内の一つをリオンが持ってるなら残りの四つは誰が持ってるんだろうね」
「知らん」
レオナルド戦で敗れたリオンを治療したのは他でも無いスタファノだ。天音達の前で昏睡の原因に心当たりがあると説明もした。その答えが宝玉だった。
昼下りの太陽は気紛れに世を照らす。
――――――
―――
?
某日。
「ぐはっっ!!?な、にしやがる…!!」
「煩いなぁ。用済み」
ラルカフスで拘束され地下牢に這いつくばる霊族が一人、アクト・ビューネン。
檻は壊られアクトは今、正に血溜まりに死を見た。彼の目線の先には少年らしき影一人。
「誰だてめぇ、この街の人間じゃないだろ」
「アスト能力に恵まれた筈の霊族さん、野望果たせず無様に死ね」
「ゔっぁあ…!!!!」
影が伸び、アクトを喰らう。
「要らないんだ魔鏡は。どうでもいい。さて、仕事を始めよう」




