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星映しの陣  作者: 汐田ますみ
スコアリーズ編

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43/122

第43話 欠片の行方


(何が起こった…!?)

「敵も策を講じたか」


 一人、神器を求め別行動をするローグだが突然の爆発音により一時足を止めた。一瞬戸惑いはしたが想定内の範囲である為ローグは止めた足を動かす。


「はっはぁっー!行け手榴弾タイプ!!」

「!?…何故居場所が…」

「簡単な事だ。ソプラに吐かせた」

「撚り子…」


「旦那には止められたがな。ちょいと痛めつけてやれば人数、能力、目的、全て吐いたぞ。捨てるべきでは無かったな…ローグ。俺様が相手をしてやる」

「陽動作戦の撹乱、二度目は無いと言う事か。真剣勝負は似合わぬが真っ向勝負を挑まれては致し方無い」


 背後から手榴弾を投擲する人物が居た。ローグは手榴弾を初めて見るので、如何なる構造か知らない筈だが瞬時に先程の爆発音の正体であると見破り、後退気味に盾変化で躱した。


 ファントム等が去った後、リフィトは地下に拘束されているソプラの元を訪れていた。彼は情に絆される性格とは真逆で、ソプラを拷問する事にも一切の躊躇いが無かった。



 リフィトとローグが対峙する。


「エトワール構えろ。甥の仇、取ってやる」


――――――


「鏡の欠片返してもらう」

「台詞が違うな星の民…。"霊族様、魔鏡を献上します"だろ」

「自分の力量を過信するのは良くないとは思わねーか?」


 睨み合いの均衡が続く舞台。隙を見せたが最後、喰い殺す勢いで二人は互いを牽制し余裕の表情を浮かべる。何方が有利か現時点では答えを出せないが、アクトの近くにはファントム所属のコケラが居る。傍から見ると二対一の構図だ。


「力量…?オレから欠片を奪い取れると思い上がる勘違い人間なら目の前に居るようだ。欠片ならここにある。君は指先ですら触れる事が出来無い」

「態々見せるか普通…。はっ!!」

「ふっ!」


「〈法術 サイズパフォーマンス〉」

「っ!」

「今の位置…まさかオレまで狙ったのか?立場分かってないなぁファントムッ!!」


「てめぇらそこ分かってねぇだろ!俺を無視しやがって…!!鏡だ、欠片だ、関係ねぇ…全部ぶっ壊す」

「良いぞファントム、コイツの相手してろ」

(マズイな…このまま霊族に逃げられたら)


 アクトは懐から取り出した欠片を見せつける。未だ見せぬ彼の実力は高く、傲岸不遜な態度も理解出来るが相手を見下す理由にはならない。タクトは欠片を手にしたままのアクトに攻撃を仕掛ける。身体の流れを止めずに太刀タイプのエトワールを抜刀すると力を込めて斬りつけた。


 アクトは一回転し、攻撃を避けただけで無く着地点を前のめりになったタクトの背中に決め、踏み付けた。タクトはエトワールの勢いを殺さずに力を込める場所を太刀の柄から刀身に変え、空を斬るようにして背のアクトの方を振り向きざまに斬ろうとした。然し、振り返った時にはアクトは居らず舞台下に移動していた為、タクトも移動した。


 先程の一瞬の攻防でエトワールの間合いを見切り、アクトは一歩後退した。彼の隙を突かなければ、もう二度と間合いへは入ってくれないだろう。タクトが息を付いた時、コケラの法術が発動した。投げ付けた小枝が巨木となり襲いかかる。所詮は只の木なのでエトワールで容易に斬れた。


 アクトの言う通りコケラは敵味方関係無く狙ってきており、蚊帳の外に追い出された事で頭に血が上ったようだった。コケラに対応すればアクトに逃げられ、逆にアクトに対応すればコケラが自由の身となり暴れる。何方を取っても避け難い状況でありながら、タクトは笑っていた。


「先ずはてめぇからだ霊族ッ!!〈サイズパフォーマンス〉」

「そんなの効かねぇよ」


「なにッ?!」

(鎖…。エトワール…いや、アスト能力か)

「グッ!」

「これで分かっただろ。圧倒的な力の差を」

「…」


 コケラも舞台から降り、三竦み状態となる。最初に飛び出したのは矢張りコケラだった。飛び出したと言っても拾った小枝をアクトに向かって投げただけだ。再び巨木となった小枝が迫りくる中、アクトは身体の一部から赤色の鎖を生み出し巨木を受け止めた。


 鎖は巨木を粉々に砕くと消えてしまった。どうやら彼のアスト能力と思われる鎖は法術を発動しなくとも自由自在に出現させられるらしい。


「まだだッ!」

「時間の無駄だ」

(どーすっかな?)


?「〈法術 火箭・三連武〉」

「!」

?「タクトさん!此処は僕達に任せて霊族から欠片を!!」


「済まんな旅人さん達…ありがとう」

「誰が来たって全部潰すまでだ!!」


「霊族に聞きたい事があるが今回は譲ってやる。ファントムにも聞こう」

「僕も、ファントムには聞かなきゃならない事がある…」


 三竦みの均衡が崩れた。少々、出遅れて駆け付けたリュウシンとティアナが到着した。二人は遠目から巨木を視認して、この場に向かう事を決めたのだ。自分一人だけでは捌き切れないと踏んでいた為、二人が来てくれて大いに助かったとタクトは礼を言う。


 リュウシンとティアナ、コケラが会敵し、タクトとアクトが対峙する。


――――――


「この辺…なら安全かな」


 自分に出来る事は極僅かかも知れない。自分には何も出来無いかも知れない。そんな事天音自身が一番よく分かっている。けれども天音は立ち止まる選択肢を捨て、爆発音の現地近くまで来ていた。現地近くと言っても彼女が思う危険域には絶対に近付かないようにした。安全域から風に吹かれる。


(遠いから見えづらいけど…多分あっちに居るのがリュウシンとティアナ。それから、向こうがリオン?)

「天音!?」


「やば…目があった気がする…!!」

(アイツ…あんな所で何やってんだ)


 両手を双眼鏡の形にして仲間の位置を確認する。前後左右を見渡す途中でリオンの青目と天音の赤目が交錯した。リオンはランスと共にソワレを倒すべく動いているが視界の端に見知った人物を捉え、動揺した。彼の声は天音には聞こえなかったが、ガッツリと目が合ってしまい瞬間的に天音は目を逸らした。


 リオンにバレたら間違い無く叱られると考えた天音は右手を使って顔を隠し、ソロリと移動するも既に遅い。別の場所に気を取られ、自身に迫る脅威に気付いたのは"ソレ"が眼前に迫った時。


「うわっ…!?」

(しまった!向こうには天音が!!)

(盾、出して身を守らなきゃ……っ)


?「伏せて!!」

「へっ?……ん!!?」

?「危なかった…」

「フォルテ!」

(何今の、かっこいい…!)


(良かった…)

「ティアナ、向こうには天音が来てる。飛ばす方向は反対側にしよう」

「分かった」


 コケラの法術により巨大化した小石だった物をリュウシンとティアナが躱していたのだが誤って天音の居る方角へ誘導してしまい、絶体絶命のピンチに陥る。何とか思考は正常に働き盾変化で対処と言う答えに辿り着くが間に合いそうに無い。迫りくる衝撃に身を縮こませた時、一線に伸びる声が聞こえた。


 上体を低くした天音はクルリと振り返り声の主を見やる。正体は軽装のフォルテだった。風を切るように天音の頭上を通り過ぎた物体は彼が投げた稽古用のエトワールだ。迫りくる巨石に向かって一直線に伸び、直撃したと思ったら何と軌道が変わった。巨石が稽古用エトワールに負けたのだ。

 驚嘆する天音の側に駆け付けると彼女を守るように、身を自分の方に引き寄せ膝を曲げる。そのまま軌道が変わった巨石は天音達に当たる事なく頭上を通り過ぎ後方に落ちた。


「ありがとうフォルテ助かりました…!」

「良いって事よ!俺は戦士じゃないから正面切って闘えないけど身体の動かし方は誰よりも知ってるつもりだ」

「……かっこいい!」


―――


「あまっ!?」

「ボクを無視してドコ行くの!?!」

「リオン?」


「!……んん」

「エトワール頂戴って言ってるじゃん!!」

「神器返してって言ってるんだけど?!」

「しっ!しっ!ボクは槍使いのおにーさんに興味無いんだけど」


 天音とフォルテの一部始終を屋根伝いに動き回っているリオンが目撃した。天音に危機が迫り、身体が勝手に動いたのだが自分が天音を助ける前にフォルテが助けた事で行き場の無い伸ばした手を静かに下ろした。


 立ち止まったリオンを好機と捉え、法術発動前のエトワールで背中を斬りつけようとするソワレだが彼女の後ろで槍を構えたランスが隙を窺っており、リオンへの攻撃は不発に終わった。


「…チッ」

「まだボクを無視するんだ!?おにーさん、ボクに勝てた事無いよね!!!ね!!!」

「リオン、おい!リオン!!」


「!悪い、ランス…」

「ー!」

(うわっ……この感じ知ってる。最悪だ…)


 リオンの様子が可笑しいと感じたランスは肩を揺さぶり、覗き込む。分かりやすく叫ぶソワレよりも厄介な事になったと、彼の様子から察知し頭を抱える始末。抱えた頭で騎士団時代を回想した。


――――――

―回想―


 騎士団に所属していた頃、リオンとランスとその他大勢で定期的に組手を行っていた。今日もまた賑やかな訓練に精を出し、程良く組手の切りが付いた所で休憩を挟んだ。


「カグヤ!」

「リオン…フフッ頑張ってるみたいね」

「おう。今のところ全勝だ」

「凄いわ!訓練頑張ってね。そうだ、アレンが何処に居るか知らない?」

「アレン?」


「あー、アレンならさっき組手の決着がついたみたいなので、もう時期此処に来ると思いますが呼びましょうか?」

「良いの。ありがとう」


 タオルで豪快に顔を拭くリオンはカグヤを発見しパッと咲くように笑うと手を振り彼女に近寄る。二言三言、言葉を交わした後ふと、思い出したと言った仕草でアレンを探し出す。偶々近くに居たランスはササッと汗を拭うとカグヤに所在を教えた。


 ランスの提案をやんわり断るとカグヤは優雅に微笑む。近くのベンチに腰を下ろしアレンを待つようだ。リオンも地面に胡座状態で待ちを決めた。騎士長が姫様の目の前で胡座なのは、どうかと思うが二人は昔っからの仲らしく問題は無い。今のリオンは騎士長として、では無く一人の人間として接しているのだから。


「ぐぬぬ…次は勝つ!」

「ふん、次も勝つ!!」

(お、来た)

「アレン!」

「カグヤ……様!一体どういった御用で」

「少し良いかしら話があるの」

「話?」

「なんの…」


(嫉妬、分かりやすい)

「内緒。すぐ終わるわ」

「てな訳で大人しく待っとけ」

「んん…」


 待つ事数分。アレンは組手相手のライムと一緒に休憩スペースまで来た。アレンの姿が見えるなりカグヤは立ち上がり彼を呼んだ。旧知の仲、である呼び声に思わず砕けた口調になりそうになるもアレンは何とか堪える。

 情人に内緒だと言われ、嫉妬心が芽生えない訳が無かった。胡座のままムスッとした表情を嫉妬先アレンに向けるも効果無し。


「…」

「リオン、付いてきたら駄目よ。二人で話がしたいの」

「!…」

「じゃあな!番犬忠犬」


「プッ」

(確かに犬だ)


 リオンは徐に立ち上がると当然のようにカグヤとアレンの後を付いていこうとする。然し、カグヤに拒否され何も言えずにリオンは二人を見送った。番犬忠犬の言葉にランスも含めた周りの人間が一斉に吹き出す。しょんぼりした犬の耳と尻尾が見える見える。


 二人が去った後、暫く帰りを待っていたが中々姿が見えず、リオンは仕方無く組手を再開するのだが……。


「ぐっ…」

「へ?」


「だっ!?」

「…リオン」


「う…っ」

(分かりやす過ぎない…か?)


 カグヤと会う前は全勝だったリオンが忽ち、全敗の結果に。嫉妬は人を駄目にする一例である。


―回想終了―

――――――


(そう…これは紛れもなく嫉妬だ。しかも、自覚させたら結構厄介なタイプの!!)

「このポンコツ!」

「んだと!!?」


「ボクを無視するなッ!!」

「ーっ!」

(言ってるそばから…!)


 一人脳内で暴れ回るランスは低俗な罵倒しか口に出せず、リオンの肩を叩いた。ソワレは自分が無視されている事が我慢ならないようで早速リオンを斬りつけた。ランスを攻撃しない辺り余程眼中に無いと見える。普段の彼なら攻撃が入る前に盾変化で対応するのだが、現状は攻撃に対する反応速度が著しく低下し無様に胴体を斬りつけられ、流血した。


 共闘の空気から一変、能無しとなったリオンを如何に素早く元に戻すかランスの手腕が試される。


――――――


「フォルテは誰かに止められなかった?」

「すんごい止められた」

「だ、大丈夫なの?!」

「身代わり頼んだから大丈夫!」


 投げたエトワールを拾うフォルテに天音はシンプルな疑問を尋ねた。スコアリーズに於ける舞子の重要性は十分理解しているので彼が危険域に行くとなると間違い無く大勢が全力で止めるだろう。


「天音も欠片探しに来たんじゃない?」

「!まぁね、鏡…元に戻してあげたいの」

「同じだよ」


―――


『キャロル、君が帰って来てるって知って嬉しかったよ。身代わり、頼まれて!』

『はぁ!?何であんたの為に?』

『ありがと!これ着て部屋に籠もってれば問題無いから』

『許可してないけど!!?』


(戻って来たら覚悟しなさいよ…!!!)


 一方的に押し付け、キャロルの許可を貰う前に羽織りを被せフォルテは行ってしまった。面倒事に巻き込まれるのは嫌だが、断って更に拗れるのも面倒だと考え大人しくフォルテの居た部屋に籠もるが怒りは沸々と募らせていた。


――――――


 リュウシン達とは離れた位置に移動したタクトとアクトは互いから視線を逸らせずにいた。一瞬でも瞬きしようものなら速攻で懐に入られる。漂う緊張感を先に破ったのはタクトだった。彼はエトワールを抜刀すると構えの姿勢を取った。


「〈エトワール式法術 大立ち振る舞い〉」

「…」

「!」

「で?斬撃波飛ばすだけか?他愛もない」

「かっこいいねー。言ってみたいよ。そんな台詞」


 太刀の間合い外から法術が発動する。タクトがエトワールを真一文字に振ると、斬撃波が飛び出した。直撃すれば結構痛いがアクトは最小限の動きのみで斬撃波を避けて、煽る。煽れるだけの実力が伴っている証拠だ。エトワールから飛び出た斬撃波は石畳の壁へめり込んで消えた。


「魔鏡の部屋に行くまでの肩慣らしにも成りはしない」

「そー言わずに付き合ってみな。案外、面白いかもよ?」


「フン…コレが欲しいんだったな。オレの鎖の前では到底太刀打ち出来やしないのに…」

「大立ち振る舞いは発動した。続きだッ!」

「叩き落としてやるッ!!」


 再び欠片を掲げて見せつけるアクト。一刻も早く、地下へ向かいたいとは思うものの同時に眼前の星の民を叩き潰したい欲も芽生えていた。余裕ぶる人間を圧倒的な力の差で制圧し、再度煽る為だけにアクトは背中から鎖を出現させた。


 タクトは一定の間隔で斬撃波を飛ばし続け、距離を詰める。アクトは後退しながら鎖で斬撃波を叩き落とし続けた。エトワールも鎖も頑丈なので接触しても火花を散らすだけで折れはしなかった。


「ハハハハハハ!どうした?!弱いぞ!!」


 一、二、三、四と地面にめり込み小さな亀裂を生み出す斬撃波。高らかに嘲笑うアクト。鎖は四本程度しか出していないにも関わらず四方を移動しながらの攻撃に対応し切る。斬撃波が途絶えた瞬間、アクトは致命傷を負わせんと太い鎖を一直線に伸ばした。


 盾変化で対処するタクトだったが鎖の威力が強く、破壊させられた。己の心臓部に到達するまでの僅かの間でエトワールを滑り込ませて鎖を防ぐ。が然し、鎖は防げても威力は落とせずタクトは後方へと飛ばされた。伸縮自在の鎖にも限度があるのか、アクトは押し込みの途中で鎖を引き戻した。


 これ以上、飛ばされないようにエトワールの刃の部分を地面に突き刺して衝撃を和らげるが、それでも飛ばされ続けてエトワールは数メートル分地面を抉った。


「勝てない勝負に挑む人間居るよね…。そう君みたいな雑魚の事だ」

「おっと、ソコは通らない方が身の為だぜ」

「負け惜しみかな?…っコレは!?」


 エトワールを支えに片膝を付くタクト、何を考えているのかイマイチ判別出来ない表情もアクトには心底どうでも良かった。四本鎖をゆらゆら揺らしながら、トドメを刺す為に近付く。

 数秒前にエトワールが抉った地面に彼の爪先が触れた直後、地面の空いた空間から白い光が漏れ出て一秒も経たぬ内に爆発した。


「忠告は素直に聴いておくもんだ」

(一体どうなっている!?)

「くっ…!!此処もかッッ」

「天然の地雷、作ったンはお前さんだよ」

「は…?クソッ」


 アクトは俊敏に飛び退き鎖を一点に集めると盾代わりに爆風をガードしたが、始まりに過ぎなかった。着地した場所からも爆発し、一つ起爆すると連鎖するように何度もアクトを襲った。小規模ではあるが、数が多いので身体を鎖で覆い爆風を凌ぎつつタクトから離れて行った。


 エトワール式法術 大立ち振る舞い。その真価は斬撃波を飛ばす事に非ず、斬撃波自体が一定の爆発力を備えた爆弾のようなもので、任意のタイミングで爆破させられる。地面に潜らせれば天然地雷の完成と言う訳だ。

 爆発した場所は先程、タクトの斬撃波を叩き落とし亀裂が生じた地面である。説明されずとも仕掛けを理解したアクトの表情は見る見る内に険しくなっていった。


「覚えてるか?後ろの壁…」

「チィッ!こんなもの仕掛けが分かれば取るに足らないんだよ!!」


「…」

「盾で軌道を変えただと!?」

「勝負に勝とうだなんて端っから思ってないさ。ただ…欠片を取り戻したいだけだ」


 アクトは誘導されていた。大立ち振る舞いを発動して最初に避けた位置にまで。石畳の壁から放たれる白い光、アクトの不意を突いた筈が彼は起爆前に前方を鎖で完全に覆った。


 のだが、タクトの方が一枚上手だった。アクトが前方を覆ったのを見計らい、爆発する斬撃波の軌道を盾変化で変えた。衝撃が来ない事を疑問に思ったアクトが鎖を解くのと同時に彼に直撃するように仕向け、成功した。


 直撃した影響でアクトは欠片を手放した。欠片は緩やかに放物線を描き宙を舞う。


(してやられた…こんな奴に!!!)

(ぐっ…欠片が地面に落ちる前に掴め!)

「テメェの手に渡るぐらいならッッ!」

(ーっ!しまった……!もし、このまま欠片を見失ってしまえば同時に霊族も見失う!)


 欠片を掴もうと躍り出るタクトとアクト。位置的に有利なのはタクトだが、只では済まさないのがアクトだ。欠片に触れる既のところでアクトは勢い付けた鎖を伸ばし、欠片を弾いた。遠退く欠片を見失うと言う事は俊敏なアクトが欠片を取りに行く為にタクトの前から消えると言う事なのだ。今、彼を見失ってしまったら二度と見つからないどころか、街の被害は甚大なものになる。


?「っー…!届いた。タクトさん欠片は無事です!!僕が欠片を届けます!」


「「!」」

「その声は…」


 救いの一手を担ったのはリュウシンだ。欠片を掴む為に滑り込むように身体を浮かせ掴んだ後は受け身を取った。スタファノの独り言をティアナ越しに聞いてから二人の様子を視界に入れ、何時でも助太刀出来るようにスタンバイしていたのだ。


(そーか、ラルゴ様の最後を看取った者…)

「丁度良い。奪い返せば済む話だ。今は君を完膚無きに潰す!」


?「貴方の相手は私です」

「頭主様、やり過ぎない程度に…」

「タクト…御武運を」


「何勝手に戦う気になってるの?」

「頭主として、貴方を下します」


 話には聞いていた、リュウシンとラルゴの関係を。ラルゴとは良く酒を酌み交わした仲だった。彼の奇縁が巡り巡って救いとなる、奇跡に似た現実を噛み締めた。アクトは既に怒り心頭で欠片を二の次にした。


 亀裂の入った石畳の壁がボロボロと崩壊し、頭主カノンが現れる。タクトと連携して霊族を連れてくるようにお願いしていたのだ。一言だけの会話から二人の信頼が窺える。

 タクトは場を離れ、アクトとカノンが対峙する。


――――――


(居た!)

「天音!受け取って!!」


「リュウシン!?」

「〈法術 辻風〉」

(優しい…!)


 リュウシンは天音を探し、欠片を託した。自分が明鏡新星の元へ向かうのも一つの選択肢ではあるが、第一線を退く訳にもいかない。天音の側にフォルテが居る事も知っている。なら自分が行うべきは欠片を託す事だ。


 戦闘能力を有さない天音にとって、空中から迫る硝子片を正確に掴み取る事など出来やしない。フォルテも同じだ。掴めても怪我をするに決まっている。目で欠片を追いながらジタバタしているとリュウシンが法術を発動させた。欠片が威力調整した辻風に乗って天音の元に辿り着く。とても優しい風だ。お陰で天音は怪我をせずに欠片を掴めた。



「アカメさんの所に…」

「行こう!」


 天音とフォルテ、非戦闘員の二人はアカメが待つ明鏡新星の置かれていた地下へ向かう。

状況整理


オルクとキャス

リフィトとローグ

リオン、ランスとソワレ

ティアナとコケラ(リュウシンは一時場を離れる)

カノンとアクト(タクトは一時場を離れる)


天音とフォルテは最後の一欠片を持ちアカメの元へ

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