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ゴブンリンを退治して冒険者の宿でミルクを飲む運命 (1)

転生した、

着の身着のままで。


陽光が木々の葉を通してちらちらと踊る。だが気分は最悪……その理由はいわずもがな、前の世界と大差のない気温だ。

運がいいのか予定調和なのか、目の前には道しるべと立て札がでんと構えている。左右は森に囲まれた広い一本道。一応、石で舗装されているので歩くのには困らなそうだ。泥に足を取られるようなことにはならないと、安堵したのもつかの間、しばし立て札の前で立ち尽くし考える。


――この転生の危険性について。

考えてみれば危ない。なんで、誰も指摘してくれなかったんだ?!「移動先が溶岩の上とか、海の上とかの可能性もあったんじゃないか!」いや、そんなことは考えても仕方ないかと疑念を振り払おうとする。しかし、転生したてで興奮した頭は、冷めやらなかった。みんな俺のこと嫌いなの……?


「あ、そうだ!だからアイツ、『死ぬの?』って聞いてきたのか?!」出オチ女のことを思い出し、「魔法陣の先で、突然の死を迎えてから転生するパターンもあったのか!」と、今頃になってあれこれ考えが浮かび恐怖する。不意に、汗と後悔で冷えた体に頬を突き刺す陽ざしが夏であることを思い出させた。まぁ、いいか。気を持ち直し、とりあえず立て札を読むことにした。


「今いるここは街道だとは思うが……街道であることを祈ろう」

え~なになに。

「『ゴールデンミカン』まで徒歩25分。注意!!この先、ゴブンリンが群れで現れることがあります。いたずらされたり、刺されたりしないよう注意してください。――ゴールデンミカン&冒険者ギルド一同」


ゴブンリン!!何者かは分からないが雑魚なのはわかる。経験値は2~3ってとこだろう、相場では。

道しるべに従い行き先に目をやると、道は曲がりくねっており、道路の幅の外は、木が立ち塞がり見通しが悪い。25分なら、少し歩けば森を抜けて街が見えてきてもおかしくないだろう。ゴールデンミカンは、まさかミカン畑じゃあるまいな。まぁ、冒険者ギルド一同の文字もある、どっちにしても人は見つかるか。ゴブンリンとの対峙は運命だから気が楽だ。そんなことを考えながら歩き始めた。


進むうちに道がUの形に近いと気が付いた。「これ戻ってんじゃん……」果たしてたどり着けるのだろうか。そんな不安がよぎる。道幅が変わらず狭まっていないのだけが救いだった。


ゴブンリンがいつでも飛び出してきてもいいよう、なるべく道の真ん中あたりをゆっくりとした歩調で行く。初めてのモンスター討伐に気分は浮かれていた。誰からも依頼されたわけではないが

。歩を進めるごとに、その時が近づいていくのを感じ、緊張と期待が高まっていく。「はやく出てこないかな~」そんな期待に応えるように、ガサゴソっと音がしたかと思うと、ゴブンリンが5mほど離れた位置に3匹ほど飛び出してきた。手にはそれぞれ折れて柄だけになった武器のようなものや、木の棒など先の尖ったものを握っている。


はわわわわ。

その姿を一目見て運命を感じる。こいつらは、間違いなく、「ハーレム王の力を知らしめるため一瞬で倒される役をもらったゴブンリン」だ。あ~なんて素敵な瞳なんだ。飛び出してきた3匹の生贄の羊は、何かを訴えかけるかのようにこちらを「じーっ」と見ている。その姿はあまりにも愛おしい。何かを訴えているのは分かるが何を言いたいのかはわからない。何という甘酸っぱい時間だろう。

俺は、ついに決断する。その要求に答えるべく、運命の力を行使して、なるべくかっこよく倒さなくてはならないという使命感に駆られる!


「フンッ!」軽く手をかざすと、「グチャッ」っと音を立て、ゴブンリン達は、運命の力によりねじ伏せられ、一瞬のうちにぐちゃぐちゃにつぶれる。さぁ、あっという間に終わったぞ!彼らも本望だろう。


フゥ、と一息ついたところで、今度は、群れで現れた!また来た!胸がときめく!

ざっと20匹ほどの数だ。見れば先ほどのゴブンリン達と変わりはない――「劇的に倒される」一匹を除いて。まず、おおざっぱに対象へ向けてかっこよく手を伸ばし、能力でその他大勢の19匹のゴブンリンをまとめて宙に浮かせ、いい感じに手を動かしながら花火のように爆発させる。最後に残った一匹は、宙に浮かべたうえでゆっくり手足をもぎ取っていく――そのたびに反動で体がくるくると回転する。とどめは、心臓に風穴を開け運命的に倒す。倒す際に痛覚は取り払っておいた。「ありがとう」最後の一匹の散り際、どこからともなくそんな声が聞こえた気がした。


達成感で満ち足りた気分で、そのまま曲がりくねった道を進むと、ある瞬間から途端に森が切り開かれ、見通しがよくなった。まだ少し遠いが、先の方には、家などの建築物と街の姿が見える。「やったぁ!ミカン畑じゃなかった!」俺は急いで街の門へ向かった。

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