表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
溶けて解ける  作者: ぼん
5/5

第一章

「秀島先生に用事があって来ました。失礼します」


 誰も聞いていないであろう定型文を言って職員室に入る。


 秀島先生を探してみると、パソコンを神妙な面持ちで眺めていた。


 なんだ、教師としての一面もあるんだな。

 

 なんて思ったのもつかの間。

 パソコンのディスプレイには今流行りのマッチングアプリの登録画面が表示されていた。


「おい、エロじじい!何やってんだ!」


 慌ててマウスを操作してブラウザを閉じる。この間約一秒。


「おい、バカ生徒!何やってんだ!」


 もう一度がマッチングアプリを開く。この間約一秒。


「八尋。男にはやらなきゃならん時があるんだ」


 なぜだろうか。そう言った先生の顔は今まで見てきた中で一番かっこよく見えた。

 …じゃなくて。


「大体この前も合コン行ってたじゃないですか…。また失敗したんすか」


「失敗したわけではない。それを誤りだと言ってはいけない。勉強したのだと言いたまえ」


 おいおい、まるで教師だな。


「かっこいいこと言ってるけど誰の言葉ですかそれ」


「かのトーマスエジソンの言葉だ。俺も発明王ならぬ開発王だからな」


「生徒の前でどぎつい下ネタやめてもらっていいですか」


「で?なんの用だ」


 どうやら自分が呼んだことすら忘れているらしい。


「先生が俺を呼んだんでしょ。マッチングアプリに夢中になりすぎですよ」


 先生は「ああ、そうだったな」と言って席を立った。


「まあ、何だ。ここじゃ何だし場所を変えるか」


 先生の後について職員室を出ようとして、足を止める。


「失礼しました」


 誰も聞いていない定型文を言って職員室を後にするのだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ