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夢うつつ  作者: oyama
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祭りの町

   一日目


 カエルの姿の店主。お面をつけた剽軽(ひょうきん)な店主。異形頭の店主。物がたくさん吊るされてあったり、置いてあって、まるで夏祭りに来ているような楽しさのある場所。

 多くの客がいるが、どれも人間ではないように見える。話し声も、聞き取れない。騒音が理由で、ではなく、ノイズがかかっているように聞こえる、というわけでもなく、ただ聞こえない。聞き取れない。不思議な光景だ。

 僕は何かに追われるように、人混みをかき分けて走っていた。Y字路になっている屋台の群れを通り過ぎながら、どうにか走った。どこまでも続く屋台と人混み。人間がいない。いや、いた。斜め前を同じように走る民族衣装のような素敵な服装の人間がいる。時節こちらを向きながら、早く走れと言っているようだった。勿論、彼の声も聞こえない。

 随分と長い間走った気がするが、目が覚めてしまった。


   三日目


 また祭り会場のような場所。

 暖色系の色が目立ち、屋台の背後は真っ暗で何も見えないような場所。不安を煽るような無音の世界。しかし、確かに彼らはそこにいる。人間ではない何かが何かを売っている。楽しそうに、買い物客も店主の言葉に踊らされて楽しそうに買い物をしている。中には射的や、籤引きの屋台もあり、本当に祭りのようだ。この世界は、年中祭りでもしているのだろうか。楽しげに羨ましい。

 しかし、僕や彼はまた走っている、と思えば、立ち止まった。歩いて、彼は通りすがりの買い物客に話しかけた。何を話しているのか聞き取れない。しかし、今回は何故か喧騒だけは聞こえてきた。この夢を見ることで、音が聞こえるようになるのだろうか。それはそれで怖いな。

 何言か会話をしたら、僕を無視してそのまま歩いて行ってしまったので、僕は急いで彼の後について行った。

 なかなかこちらを見ようとしない。彼も、人間ではないのかもしれないと思い始めた。

 出口が見えそうだ。屋台が途切れて闇が近づいてくるところで、目が覚めてしまった。


   五日目


 大きな門の前にいた。周囲に人はあまりいない。門は、神社や寺にありそうなデザインの門構えだった。美しく荘厳な雰囲気で、今回は僕一人だけのようだ。だが、誰かを探していた。誰を探しているのだろう。あの不思議な青年だろうか。

 門の周囲にいる人は、人間ではなく、やはりあの買い物客で、動物ともとれる、異形の人々。よく分からない種族だが、漫画やアニメに出てきそうな面をしている。

 音は、聞こえない。門を潜って、向こう側を散策すると、門の手前に戻ってきていた。ループするタイプだろうか。怖くなったので、今度は後ろ側に走った。彼を見つけることは叶わなかった。走っていると、通行人がこちらを見てくる。それに関する恐怖はそれほどなかった。だが、孤独という恐怖は、僕を支配していた。

 早く、早く、夢から覚めて欲しかった。

 また、門の前に戻ってきた。

 くすくすと笑っているような、女性らしき通行人数名が群がって僕を見ていた。

 人間ではない。

 彼らにとって、僕はきっと、異形なのだろう。


   六日目


   七日目


 随分と長い間経ったのだろうか。

 それとも、ループしているのだろうか。

 また同じような景色だ。一日目と同じ。夢。


   八日目


 今度は、五日目と同じ夢。


   九日目


 同じ、同じ夢を見る。

 起きると、その大半を忘れてしまうが、ふとした時に思い出す。

 彼の顔だけは、思い出せなかった。

 すらりとして、後ろ姿がとてもかっこよくて、印象的だったが、思い出すたびに彼の姿が違って見える。和装だったり、どこかの民族衣装のようだったり、ぼんやりとした記憶しかないのに、周囲にある屋台や買い物客だけは思い出せる。

 彼のことが知りたい。

 正直、恐怖しかないが、また同じ夢を見たいと思った。

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