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白骨少女が逝くVRMMO記  作者:
鬼の里
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世界樹・低層-1

ご高覧いただきありがとうございます。

「これが…」


 ノルニルさんの後を追って家の裏手に回ると、横幅だけで100メートル以上はありそうな木の幹と、地面に隆起している無数の木の根が目に飛び込んできた。見上げただけでは全体像を目に移すことは叶わず、途中から幹が雲に呑まれているということしかわからない。さすがに聞かなくてもわかることだけど、一応ノルニルさんに尋ねると、これが「世界樹」だという。


「さて、これからディラさんには内部に侵入していただくわけですが」


「それはいいんですけど、入口なんてあるんですか?」


 今のところは「樹」というよりかは枝も葉っぱも見当たらない、ただのデカい壁という印象だけど。


「入口はありませんが、問題ありません。こちらから送り込みます」


「え、でもそれじゃあ帰りは」


「そちらも問題ありません。内部で死亡した際は先ほどの家に還ってくるようになっています」


 一応宿屋って認識でいいんだろうか。ゲーム的な言い方をするとブクマみたいな。


「それではお気をつけて」


 ノルニルさんが軽く手を打ち鳴らすと、視界がぐにゃっと歪んで上下左右の感覚があやふやになった。ああ、これ『転移』だ。やっぱり心構えしてないとちょっとしんどいな…


・・・


 『転移』の感覚が抜けたことを感じてゆっくりと目を開ける。寝起きみたく呆けている頭を無理やり覚まして周囲を確認すると、薄暗くて狭い空間にいることがわかった。


「キャウ!」


「わふ!」


 床に横たわる私の傍にはワンちゃんズがぴったりと寄り添っていて、私が目を覚ました途端にはしゃぎだした。もーかわいいなこいつらめー。

 ワンちゃんズをまとめてモフっていると、ふとノルニルさんがこの子たちを名前で呼んでいたことが頭をよぎった。


「君たち、スコルとハティっていうの?」


「「ワン!」」


「えっと、スコルは?」


「キャン!」


「じゃあ、ハティ?」


「わふ!」


 若干毛色が黄みがかっているほうがスコル、スコルに比べて毛色が暗いほうがハティらしい。毛並みでどっちかを判断できるのはありがたい、戦ってる途中とか大事な場面で間違えたら大惨事になるもんね。

 自身の装備やアイテムに問題が無いことを確認して立ち上がる。腰を捻って身体に問題が無いことも確認する。


「よし、じゃあ行こっか」


 改めて自分のいる空間を確認すると、三畳一間くらいのスペースで窓のようなものはなく、通り抜けられそうな穴には蔦が伸びていた。

 床や壁を細剣で斬りつけて壊れたりしないことを確認し、穴に絡みついている蔦を断ち切った。


「ついておいで」


 ギリギリ屈まないで通れる高さの穴を通ると、すぐに広い空間に出た。相変わらず薄暗くて見通しが悪いけど、壁に地面に不揃いに生えている茂みがぼんやりと光って照明代わりになっていた。壁伝いに歩いていると、らせん状に緩やかな坂があった。


「これで上っていけってことなのかな」


 上を見上げると、同じような景色がずっと続いていて、ところどころに横穴のようなものが空いていることがわかる。樹の中というくらいなんだからどこかから外の光が漏れ込んでもおかしくないはずだけど、その様子は一切見れず、ただ薄暗い空間が広がっていた。

 少し気になって顔の高さに生えていた茂みの中を探ると、中から手のひらサイズの木の実のようなものが出てきた。


「痛ッ!」


 手に取って確かめようとすると、木の実に触れた指が焼けるように痛んだ。


「なんだこれ…」


◇◆◇◆◇


世界樹の実

効果:なし


世界樹に成り損なった実。放たれる淡い光には強力な聖なる力が含まれている。

衝撃を加えると強い光を発する。


◇◆◇◆◇


「実質敵では?」


 具体的なダメージ量は書かれてないけど、もし攻撃がこの木の実に当たりでもしたら私は即死な気がする。いや、この外套があるから確定でそうなるとは考えにくいけど、さすがにこの状況で命を犠牲に実験している暇は無い。


「ここ、ダンジョンっぽくなってるけど『看破』は使えるのかな」


 大森林の詳細が『看破』で見れたことを思い出して、この世界樹の内部に対して『看破』を使用した。


◇◆◇◆◇


世界樹・低層


世界樹の内部、その低層。

終末から逃れた双子の神が最期を迎えた場所とされている。

神性を高めた世界樹は双子神の意志を汲み取り姿を変えた。


◇◆◇◆◇


 「低層」とわざわざ名前がついてるってことは中層、高層と続くんだろうけど、世界樹のサイズ感を一度見てしまった今、あれを踏破しないといけないことを考えると少し億劫になってしまう。


「そういえば、ノルニルさんはスコルとハティが場所を教えてくれるって言ってたけど…あれ、いない」


 少し考えに耽っている間にワンちゃんズはずいぶんと先へと進んでいた。坂を半周分進んだ先にある壁に空いた洞の前で忙しなく動き続けていて落ち着かない様子だ。

 急いでワンちゃんズの元へ向かうと、もう待ちきれないと言わんばかりの様子だったスコルが勢いよく洞の中へ飛び込んでいった。


「ちょっと、スコル!」


 スコルを追って中に入ると、直視できない程の眩い光に襲われた。


「ッ!」


 咄嗟に目を腕で覆い、10秒ほど経つと目が少し慣れてきた。ゆっくりと腕を解き、周りの状況を確認する。相変わらず眩しいけど、半目ならなんとか洞の中の状況は把握できる。

 洞の中は凡そテニスコート一面分ほどの広さがあって、その中央にこの眩しすぎる光の原因であろうものが鎮座していた。


「これは…根っこ?上に伸びてるけど」


 根っこらしきものは地面から天井に向かって伸びていて、花の蕾のように上にいくに連れて窄まっている。敵のようにも見えず、どうしたものかと思案しているとスコルが複雑に絡み合った根っこに噛みついていた。


「ちょっとスコル、大丈夫なのそれ」


「グァウ!」


 スコルが噛みついて離れない様子を見て、スコルはこの中身を求めてるとなんとなく理解できたため、少し回り込んで根っこの絡みつき方が特に複雑になっている個所を慎重に切り出していく。

 5本ほど重なった根っこを切り落としたら、根っこの隙間から漏れ出す光が更に強くなる。それと同時に体にピリピリとした微痛が走り始めた。


「嫌な予感はしてたけどさ」


 この光に溢れる場所に入った時からなんとなくそうじゃないかと思っていたけど、やっぱりこの光は聖属性を帯びている。つまり私、というかアンデッド特攻ということだ。

 あまり時間はかけていられなくなった。そこで思い切って細剣を握る手に力を籠め、奥にまで突き刺して横に薙いだ。根っこが下に垂れ、中身が曝け出される。


「眩しくてよく見えないけど、これは…花?」


◇◆◇◆◇


太陽の花

効果:なし


太陽の実のなり損ね。

花の状態でも十分に太陽の光を放つことができる。


◇◆◇◆◇


 根っこの中にあった花を私が認識した瞬間、私に向けて幾つかの根っこが迫ってきた。


「あぶなっ」


 間一髪のところで根っこを躱し、ワンちゃんズの無事を確認する。うん、大丈夫そうだ。

 根っこの方はというと、細かく震えて止まってまた震えて、を何度か繰り返した後、足が生えて自立しだした。本当に突然、同じような根っこでできた足がニョキっと生えてきて立ち上がった。顔とかの部品は一切なくて、体の中心に花が咲いている一頭身ののっぺらぼうができあがった。


「…」


 突然姿を現した生物かも怪しいモノはキョロキョロと周囲を見回すような仕草を見せた後、こちらに向き直った。


「まさか…」


「ギシャアアアアアア!!!!!!!」


「やっぱりぃぃぃぃぃ!!!」


◇◆◇◆◇


名前:‐

種族:樹人(トレント)


Lv:40

HP:5000/5000

MP:250/250


スキル:「寄生」「吸収」


◇◆◇◆◇

梅雨なのに花粉症の症状が出ています。ハウスダスト…お前なのか…?

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― 新着の感想 ―
[一言] 多分、ブタクサじゃないかなぁ
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