孔明の罠
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私にまとわりついていた黒い靄が晴れ、視界が開けてきた。どうやら無事に進化が終わったようだ。自分の変化を確かめるように少し動き回ってみる。骨格とか身長に変化はないし、相変わらず視界はサーモグラフィのままだ。ただ、ある一点だけ明らかに変化していた。
「なにこれ、尻尾?」
そう、なんと私のお尻の少し上あたりから尻尾らしきものが生えていたのだ。意識すれば私の意志で動かしたりもできる。骨だからどこに神経通ってんのって話だけどね。今更か。
見た目はどうなってるのかまだわからないけど、それはともかくとしてステータスだよステータス。私、強くなれたのかな?ワクワクする。
◇◆◇◆◇
称号:セットなし
名前:ディラ
種族:劣種竜骸兵
職業:‐
所持金:10000ギル
Lv:‐
HP:2190/2190
MP:487/487
SP:43
装備:なし
スキル:「闇魔法Ⅰ」「錬成」「瘴気」「念話(邪)」「看破」「吸魔」「竜の因子」
パッシブスキル:なし
取得称号:『管理者のお気に入り』『艱難辛苦を求めし狂人』『最速の異界人』『邪王龍の友』『超オーバーキル』『弱点克服への一歩(聖)』『暗愚の屍』
アイテム:存在進化のスクロール、聖水×16、瘴気に染まりし錆びた長剣
◇◆◇◆◇
「つっっっっっっっっっよ!!!!!!!!!!!!」
強い、これは強すぎる。HPが進化前と比べて約11倍に伸びているんだけど、運営調整ミスった?大丈夫?と心配になるくらいに強くなってる。それにMPも比べ物にならない程の数値になってる。まだ魔法を主体に戦う魔物さんと遭遇したことないから比べられないけど、まるで魔法特化型みたいなステータスだ。
しかし、進化する前から疑問に思ってたけどなんでレベルが『‐』なんて表記になってるんだろう。レベリングして簡単にボスが倒されないようにでもしてるのかな。進化で強くなったからいいけど、敵を倒してレベルアップという楽しみがないのは悲しい。いつか私もレベルが上げれるのようになるかな。
あとなんか『竜の因子』とかいうスキルが増えて『鑑定』が『看破』っていう名前のスキルになってるっぽい。どんなスキルなんだろう。
◇◆◇◆◇
『看破』
効果:対象との実力差にかかわらず、力量と技能を見抜くことができる。隠蔽された情報がある場合、対象の許可を得ない限り隠蔽された情報を見抜くことはできない。
『竜の因子』
効果:???
上位存在である竜の遺伝子。これは汝が頂へと至る架け橋である。
◇◆◇◆◇
『鑑定』はいいスキルに変わってくれたようだ。効果を見るに、ステータスに加えてスキルの情報まで覗けるようになったのかな。それはいい、どんな行動をとるか事前に予測できるのは戦闘での大きなアドバンテージになる。
しかし、また物騒なものが増えてしまった。スキル効果もわからないし、あまり深く考えるのはやめておこう。しかし竜、竜ね。そういえば、ステータスばっかりに目がいって種族にはあまり関心が向かなかったが、《劣種竜骸兵》とかいう種族に進化してる。名前からして私が最初に破邪ポで倒した劣種竜骸の人型バージョンみたいなものだろうか。なるほど、あの魔物さんの遺伝子を取り込んだのなら尻尾が生えても不思議ではない。
「よく見たらSPもめっちゃ増えてる」
そう、SPだ。このシステムは、SPを消費することで既存のスキルを強化したり、自分が取りたいスキルをSPを支払って取得したりすることができる。だが、なんでも取得できるわけはなく、自分が今まで『鑑定』で見たことがあるスキルや、一度取得したがスキルが変化したり、何らかの理由でスキルを失ったときにそのスキルを再取得出来たりするものだ。
これまで、スキルを持ってても生かす場所がなく、使いこなすだけのMPがなかった私には無用の長物だったというわけだ。だが!私は進化をすることによって莫大なMPを手に入れることができたのだ。つまり、これまで倉庫の肥やしみたいになってた『闇魔法Ⅰ』を使うことができる。リアルが爆ぜてシナプスがはじけそう。
冗談はさておき、『闇魔法Ⅰ』に『看破』を使用する。どうやら今のスキルだと、「闇撃」という魔法が使えるらしい。闇属性の衝撃波を放てるみたいだ、なにそれカッコいい。早速試し打ちしてみよう。
「『闇撃』!」
何も起きない。もう一度。
「『闇撃』!」
やっぱり何も起きない。衝撃波だから見えないのかと思ったけど、私は魔力が見えてるんだし成功してるのなら魔力の塊みたいなものが見えないとおかしい。何がダメなんだろうと改めてスキルに『看破』を使うと、どうやらスキルごとに詠唱というものが設定されていて、それを読み上げるとMPが消費されて魔法が放たれるらしい。なーんだ、そりゃあ何も起きないわけだよ。
ん?詠唱?読み上げる?
「・・・詰んだ」
そう、今の私は何を隠そう骨、進化したところで骨なのだ。声帯があるはずがない。つまり声が出ない。つまり詠唱して魔法を放つことができない。詰みなのだ。
「あのクソAI絶対許さない」
クソAIへの恨み言を漏らしながらステータス画面を閉じ、辺りを見回す。そういえば、私が進化する直前にこの部屋に魔物さんが何体か入ってきてたけど、今はどうやらいないみたい。ダンジョンの中だから時間経過がわからないのが地味に痛い。そうだ、進化前に倒した魔物さんたちのドロップ品も回収しておかないと。
◇◆◇◆◇
瘴気に染まりし骨
効果:なし
瘴気に染まった骨。通常の骨よりも硬度が高い。
瘴気に染まりし魔骨
効果:なし
骸骨から取れる希少な骨が瘴気に染まったもの。一部の好事家が高く買い取ってくれる。
瘴鉄の細剣
耐久:258/300
効果:攻撃した相手に瘴気を与える
◇◆◇◆◇
なんかレアっぽい骨と耐久値がまだまだある細剣が落ちてた。この武器はいいかもしれない。小柄な私でも扱えるくらいのサイズで重量もそんなにない。装備しておこう。しかし瘴鉄ってなんだろう、瘴気を浴びすぎて変質した鉄みたいな感じだろうか。なんか闇堕ちっぽくていいね、そそられる。
「んじゃ、思いがけず進化が済んじゃったし、探索する前に王龍さんのとこに戻ろっかな」
念話で王龍さんに呼びかける。が、少し待っても返事が来ない。お取込み中なのかな。一応もう少し待ってみたけど、やっぱり返事はなかった。
「しょうがない、奥に進もうかな」
気を取り直して部屋の左奥に見える通路へと足を運ぶ。まあHP増えたし大抵のことは大丈夫でしょ。いやダメだ、油断せずに慎重に進もう。もう死にかけるのは御免だ。
・・・
『闇撃』
消費MP:3
効果:闇属性の衝撃波を放ち、ダメージを与える。詠唱は「我が敵に衝撃を与えよ」
ステータスチェック回です。
かなり強くなりましたが、劣種竜骸兵は本来、HPが2300でMPは200というステータスです。一体何が悪さしたんでしょうか。
SPさんは闇魔法の魅力の前に敗れましたが、またすぐに出番が来ます。




