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白骨少女が逝くVRMMO記  作者:
鬼の里
87/96

空前絶後

ご高覧いただきありがとうございます。

 たどり着いた鬼の里の周辺には、他のプレイヤーも続々と集まりだしていた。天羅さんのような亜人の姿のプレイヤーはチラホラと見かけるけど、どこからどう見ても魔物のようなプレイヤーは見当たらず、なんだかアウェイ感を感じてしまう。


「奥の大きいのがおばあちゃんのお家!レオル、急いで!」


 マイちゃんが急かすようにレオルの背中を叩く。

 里の中は閑散としていて、外に出歩いている人は見られない。それどころか露店と思われるお店は屋根がひしゃげて商品棚が破壊されているし、民家らしき家も壁が一部崩れていたりと生きた人が住んでいるようには思えない。


「待ってマイちゃん」


「な、なんですか?」


「里の様子がおかしいと思うの。この里はマイちゃんが出てくる前からこんなにボロボロだったの?」


 レオルを止めて辺りを見回すマイちゃんの顔色がどんどん悪くなっていく。


「ち、違います!私が王都に行く前はこんなじゃなかったです!」


 マイちゃんは最初に「里が魔物の群れに襲われた」と言っていた。もしそのまま里が魔物たちに轢き潰されていたのならこの人気のなさに説明がつくけど、それにしては建物の外傷が少ないようにも感じる。


「…向こうの家からなんか出てきたの」


 天羅さんが指をさす方を見ると、玄関の扉が開け放たれたままの民家から見覚えのある人型の黒いヘドロが地を這いながらゆっくりと出てきていた。どうやら私たちは眼中にない様子で、ヘドロは里の奥にある大きな建物へと進んでいく。


「とりあえず処分しとくの」


「ですね」


 天羅さんがインベントリから持ち手のついていない小さめのナイフを取り出して投擲した。ナイフが後頭部に突き刺さったヘドロはそのまま動きを止めて地面に溶ける…ことはなく、突き刺さったナイフを飲み込んで、何事もなかったかのようにずりずりと這い続けている。


「違う個体なんでしょうか」


「『鑑定』使うの」


◇◆◇◆◇


名前:■かな私は貴女の■を。しかし貴女は■を■■■■だけ。ならば?ならば?ならばならばならば私は私は私は????

種族:???


Lv:1

HP:1(+99999)/1(+99999)

MP:1(+99999)/1(+99999)


スキル:■■■■■■■■■、■■■■■■■■■■■■■


◇◆◇◆◇


「…バグだと思いたいの」


「イベントの進行を邪魔させない為のステータスなんでしょうか?」


「だったら素直に無敵にでもしたらいい気がしますけど…」


 新たに現れたヘドロは、それはまあ酷いステータスをしていた。こいつだけは絶対に倒させはしないという強い意志を感じるし、名前も変わっている。

 謎のめちゃつよヘドロに若干引いていると、他の家や露店からヘドロが次々と這い出てきた。里の入口の方を見れば、集まったプレイヤーたちが攻撃を仕掛けているがどれも効いているようには見えず、ヘドロたちはヘドロたちでプレイヤーの攻撃など一切気にせずに奥の家を目指している。


「おばあちゃん!」


「あ、マイ!危ないの!」


 私たちが大量のヘドロたちに気を取られている隙に、マイちゃんがレオルの背中から飛び降りて奥のお屋敷の方へ走って行ってしまった。私たちもレオルから降りてマイちゃんを追っていく。幸いなことにヘドロたちの近くを通っても何かをされることはなく、何事もなく目的地に着いた。

 大通りの先にあった大きなお屋敷の扉をマイちゃんが開け放とうとすると、引き戸の扉が内側から吹き飛んだ。当然扉の前にいた私たちは吹き飛んだ扉に巻き込まれ、玄関前の長い階段を転げ落ちる羽目となった。


「みんな!大丈夫ですか!」


「なんとかなの」


「私も大丈夫です」


 マイちゃんは天羅さんが庇っていたようで、3人とも特に目立ったダメージは負っておらずホッと胸をなでおろした。私?HP半分以上削れたさ!ガッデム!


「おばあちゃん!あそこ!」


 天羅さんに抱えられているマイちゃんが指さした先には、私たちを襲ってきた元猪の金色のヤツが立っていた。左腕で豪奢な着物を着た小柄な女性を肩に担いでいる。どうやらあの担がれている人こそがマイちゃんのおばあちゃんらしい。


「その人を離し…て…え?」


 いつの間にか私たちの周りには里中のヘドロが集結しており、足の踏み場もない状態になっていた。ヘドロの向こう側にはプレイヤーたちが押し寄せてきているけど、誰も彼もヘドロを踏み越えようとはせず見守ることしかできない状況になっている。


「キ、キモいの!どっか行くの!」


「ちょっと天羅ちゃん、どろどろの飛沫が飛んでくるから大人しくして!」


「そんなこと言ったってキモすぎて…っ!あ、マイ!」


 2人が姉妹(?)喧嘩をしている隙に、マイちゃんが天羅さんの腕から抜け出て足元のヘドロを気にすることもなく金色の人型に向かって走り抜けていった。


「おばあちゃんを…あ、あれ…?」


 どこから取り出したのか、マイちゃんが金色の人型にとげ付きの棍棒を振るおうとするも、マイちゃんの動きはどんどん失速してしまい、地面にぺたりと座り込んでしまった。

 マイちゃんがへたり込んだことを確認した金色の人型は、マイちゃんの額を人差し指で軽く小突く。するとマイちゃんの体から完全に力が抜け、遂には地面に倒れ伏してしまった。


「マイ!」


『…これで全てか』


 これまで一切言葉を発しなかった金色の人型がここにきていきなり流暢に話しはじめた。


『感謝するぞ。そこな人間…いや、魔物どもよ』


 それだけを口にした金色の人型は、小さな声で何かを呟く。

 次の瞬間、私たちの周りにいたヘドロたちが一斉に地面へ溶けていった。


「なに!?何が起こってるの!?」


 立っていられない程の揺れが起こる。ガクガクと揺れる視界の中、お屋敷が地面ごと持ち上がっていく。足元が自由になっていることを確認して、『魔装』を発動し翼に魔力を籠めて宙へ浮かび上がった。ただ、私が浮かび上がる速度よりも地面がせり上がる速度が上回っていて追いつくことは叶わない。せめて最後にあの金色の人型の人型の情報を得ようと、見えなくなる寸前に『看破』を使用した。


◇◆◇◆◇


名前:オッ■ル

種族:人間


Lv:25

HP:1700/1700

MP:990/990


スキル:「愚者」「変身」■■■■■■■■■■■■■


◇◆◇◆◇


《古代遺跡No.017「混沌孕む女神の胎」が出現しました》

《ヘルプメニュー「古代遺跡」が更新されました》

《古代遺跡出現中、鬼の里内にNPC商人が現れます》

《王都内に新たなNPCが現れました》


◇◆◇◆◇


古代遺跡「混沌孕みし女神の胎」


堕ちた女神の力により混沌に塗れた遺跡。

かつて皆が愛した女神はそこには無く、かつて女神が愛した皆の姿も無い。

ただ無秩序にすべての快楽が生まれ、希望も絶望もすべてが呑まれゆく混沌の穴。


◇◆◇◆◇

名前だけチラホラ出ていた古代遺跡とやらがようやく登場しました。

自分で書いといてなんですが、センシティブですね。

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― 新着の感想 ―
[一言] オッタルという事は女神フレイヤ関連って事になるけど
[一言] 黒いのが女神由来の何かなのかな?
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