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白骨少女が逝くVRMMO記  作者:
鬼の里
83/96

訳とお願いと

ご高覧いただきありがとうございます。

「―――というわけで・・・」


 あれから、私の身に起こったことを粗方お姫様に説明した上で、何とか王様に話を繋げないかということを伝えた。


「それと、これがその紋章です」


「確かに、これは鬼の里長・・・こちらで言う王族の紋章で間違いないわ」


 というわけで、私たちに助けを求めてきた子供の言ったことがほぼ間違いないことが確定したんだけど、個人的にそれよりも気になることがある。いやでも触れられたくないことかもしれないし・・・


「何かしら?ずいぶんと熱心に(わたくし)の顔を眺めているようだけれど」


「あ、す、すみません!」


「別に怒ってなんていないのだけれど・・・まあ、気になるのも仕方がないものね」


「嫌なら無理に話していただかなくても」


「でも、私はお友達に隠し事なんてしたくないわ」


 そうして、お姫様はポツポツとこれまでの経緯を話してくれた。


「だけれど、本当に大したことじゃないの。だって、気が付いたらこの見た目になっていたんだもの。ああ、でも1つ良いことはあったのよ」


 お姫様はそう言って右手の人差し指を立ててボソッと何かを呟くと、お姫様の指先に青い炎が灯った。


「それって・・・」


「私は直接見たわけじゃないんだけれど、私の体を乗っ取ったスルトとかいう神の力の残滓らしいわ」


「体に異常はないんですか?」


「今のところは問題ないわね。こんな体になっちゃったせいで廃嫡まっしぐらだけれど」


 お姫様は自分の顔をペタペタと触りながら眉を下げた。


「アリアーナ様・・・」


「湿っぽくなっちゃったわね。で、ディラはお父様に話を通したいというわけだけれど、今お父様はあの出来事の影響で寝込んでしまってるのよ」


「え、じゃあ」


「そうね、お父様に直接嘆願が届くことはないわ。でもちょうどいいことに、ディラの目の前には一時的に政務の一部を担ってる王族がいるのよ」


「アリアーナ様、それは流石に越権行為になってしまうのでは・・・」


「いいの。どうせ私に国軍なんて動かせないし、最期のワガママで押し通すわ。というわけで王都に滞在してる異界人たちにお触れを出す準備よ。トゥーリ王国第一王女アリアーナの最後の仕事というわけ」


「なるほど、下手したら国軍よりも強力な援軍を送ることができると・・・」


「そういうこと。国を救った英雄たちにお願いするとしましょう。ディラ、とりあえずこれでいいかしら?」


 私にはわからない会話が繰り広げられてボーっと聞いていると、お姫様が私の顔を覗き込んできた。


「えっと、じゃあ、それでお願いします・・・?」


「はい決まりね。私も一筆したためるから、シンシアは根回しをお願い」


 お姫様がパンパンと手を叩くと、どこからともなく現れた黒装束の人たちが紙束をバサバサと置いて、その後すぐに上に飛び上がって消えていった。なんだか忍者みたい。


「ああ、それと1つお願いがあるの」


 お姫様が私を手招いてきたから傍まで寄ると、私の耳元に顔を寄せてきた。


「あのねーーー」


・・・


「ということがありまして」


「じゃあ、ディラがプレイヤー巻き込みのイベントに昇華させたってことなの?」


「いや、さすがに最初からこうなるようになってる・・・と思うんですけど、私がお姫様と仲良くなった経緯が特殊だと思うのでなんとも」


「だからさっき私たちにも通知メールが届いていたんですね」


「え、メールですか?私のところには何も届いてないんですけど・・・」


 改めてメールBOXを確認しても何も届いてなかった。あったのは既読済みのイベント報酬メールのみ。


「イベントを起こした当事者だから・・・?」


「まあただの不具合だと思うの。で、問題はそこじゃないの。天羅たちはまだここを動けないということなの」


 天羅さんがベッドの上で眠りこける子供を横目で見る。少なくとも眠りが浅くはないようで、近くで話していても身じろぎすらする様子はない。


「さすがにこの子を置いていくという選択肢はないですからねぇ」


「仕方がないの。この子が目覚めたら出発するの。動けないようなら最悪天羅が背負っていくの」


「じゃあそれまで一旦待機ですね。私は適当に魔法玉準備してきます」


「天羅はこの子を見ておくついでに掲示板を覗いておくの。行動が早い連中はもう出発してるはずなの」


 というわけで、一旦自由時間になったから私は地下の訓練所を貸してもらって、細剣を振ったり魔法を試しながらお姫様が別れ際に私に言った言葉を心の中で反芻していた。


・・・


「あのね、私はお父様が目覚め次第僻地に軟禁状態になるの。余計な情報を持った用済みの王族が何もできないようにするためなのだろうけれど、私はそんな人生はまっぴらごめんだわ。そこで、ディラに助けてもらいたいの」


「へ」


「私は王都から西南西にあるドワーフの谷を越えた先に移されるはずだわ」


「ど、どうして私に」


「シンシアもどうせ弟妹のお付きか何かになるだろうし、私は独りになってしまうの。それに学園に通う前ということもあって同年代のお友達もいないのよ。じゃあ頼れるのは?」


「・・・」


「そういうこと。言っておくけれど、これは絶対に他言無用よ」


「わ、わかりました」


「じゃあお願いね?私だけの()()()()()


・・・


 ・・・最後のあの一言、いつ知られたのかはわからないけど脅しの意味合いもあるんだろうな。特に何かアナウンスが流れたわけでもないけど、一応クエスト・・・なのかな。


「ディラさん、子供が目を覚ましました!」

意味深ですねぇ。

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― 新着の感想 ―
[一言] この世界のAIなにかと運営の想定超えた行動しがちだしね 王女の行動も想定(クエスト)から逸脱し掛かってる証拠なのかな?
[一言] ちょっと姫様にヤンの気配を感じる
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