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白骨少女が逝くVRMMO記  作者:
鬼の里
81/96

サンドバッグ

ご高覧いただきありがとうございます。

「渾身の一振りなの。受け取るの」


◇◆◇◆◇


瘴紅合金の細剣[作成者:天羅]

耐久:1100/1100


効果:攻撃時、対象と装備者に瘴気の状態異常を付与

    攻撃時、対象に燃焼の状態異常を付与

    耐久値自動回復(微)


瘴気を放つ石英と熱を放つ金属の合金で作られた細剣。魔力との親和性が高く、この細剣を媒介に魔法を使用すると魔法に瘴気が乗る。


◇◆◇◆◇


「合金?」


「せっかくだから少し残ってた刃の部分をインゴットに混ぜてみたの。割とすんなり定着してくれて助かったの」


 天羅さんから受け取った細剣は、前の状態のような刀身全体が透き通ったようなものではなくなっていたけど、全体的に赤みを帯びていて角度によっては透けて見えるところがあるお洒落な仕上がりになっていた。


「早速試し斬りしてみるの。天目、アレ出すの」


「はいは~い。訓練所に変えますね」


 また訓練所に切り替わった部屋の真ん中に、天目さんがどこからともなく取り出した長い杖を向けて、目を閉じてブツブツと何かを唱え始める。


「大いなる大地の精よ、根源よ、仮初の姿にその身を遷せ」


「『召喚(サモン)土之傀儡(ゴーレム)』」


 天目さんが呪文を唱えると、訓練所の真ん中に地面からいかにもゴーレムですといった見た目の魔物さん?が出てきた。全体的にゴツイ、2メートル半ばはありそう。

 最初は天目さんが何をしているのかよくわからなかったけど、そういえば魔法ってそういうものだったね。運よく初期に『詠唱破棄』を手に入れてたから感覚が麻痺しちゃってる。


「また詠唱が短くなってるの。『簡略詠唱』のレベルが上がるスピードがおかしいの」


「生産に魔法を絡めるともしかしたら内部経験値の溜まりが早いのかもね。ディラさんに使ってもらう魔法玉作ってたらⅦまで上がっちゃった」


「ディラ、あれは天目の魔法でできたサンドバッグなの。耐久はそこそこあるから遠慮なくやるの。それと天目もディラがどれだけ戦えるか確認しておいた方がいいの」


 そう言われて召喚されたゴーレムの目の前に立つ。天羅さんはサンドバッグって言ってたけど、ゴーレムなんじゃないの?


◇◆◇◆◇


名前:サンドバッグ

種族:土傀儡(ゴーレム)[召喚者:天目]


Lv:‐

HP:8000/8000

MP:300/300


状態:従属


スキル:-


◇◆◇◆◇


 ・・・サンドバッグだ。何の混じりっ気も無い純粋なサンドバッグだ。

 これ人道的に大丈夫なのかと思ったけど、別に非生物だし・・・そういうもの・・・なのかなぁ?何だか天目さんの闇を少しだけ垣間見た気がする。

 気を取り直してピクリとも動かないゴーレムの前に立って細剣を構える・・・んだけど、相手が攻撃してこないと違和感がすごい。


「天目さん、このゴーレムって動かせたりします?」


「一応中立と敵対にはできますけど、何か変なことでもありましたか?」


「私、戦闘だと基本自分から攻めに行くことがなくて、棒立ちの相手だと何をしていいかわからなくなるんですよね」


「確かにディラのスタイルは待ちなの。さっきはそのせいで苦労させられたの」


「なるほど、では敵対状態にしますね。動きは緩慢ですけど、攻撃力もそこそこなので気を付けてください」


 天目さんのその言葉と同時に、さっきまで直立不動で黙りこくっていたゴーレムが私を一瞥してゆっくりと拳を振り上げてきた。細剣を構えていつでも攻撃に対応できるように集中する。

 振り上げられた拳は私目がけて振り下ろされて、思ったよりも直線的な動きに若干同様したけど何とか回避できた。そしてパンチの威力で地面に少し埋まった拳をゴーレムが引き上げている間に、後ろに回り込んで背中にある核を確認する。スルトアバターもそうだったけど、ゴーレム系統の敵って例外なく背中に核が仕込まれてるものなのかな。

 そのまま核を貫いてやろうかと思ったけど、背中に飛び乗ろうとするとゴーレムの手が背中に回ってきて上手くはいかなかった。

 というか、剣の試し斬りなのに逃げ回ってちゃ意味がないことに気が付いた。どうせ死んでも何もない空間なんだし、真正面に迫ってくる拳に突きで真っ向から挑んでみる。


「ふっ!」


 今もなお私に向かってきているゴーレムの拳に、思い付きで捻りを加えて突きをしてみる。ほら、拳銃の弾だって回転しているから貫通力があるとかいう話だし。あれ、関係ないんだっけ?まあいいや。

 そんな適当な思い付きが功を奏したのか、硬そうなゴーレムの拳を簡単に貫けてしまった。ただ、拳を貫けたからなんだという話で、人間なら痛みで間違いなく怯んだりするだろうけど生憎相手は痛覚なんぞ持ち合わせていない土人形。そのまま拳は止まらず、私の顔面に迫ってきていたのもあって思わず『魔奪(エクストーション)』を咄嗟に発動した。

 『魔奪』を発動すると、びくりとゴーレムの体が跳ねてそのまま地面に突っ伏してしまった。地面に突っ伏したゴーレムを細剣でつついてみても反応はなかった。倒せた・・・のかな。


◇◆◇◆◇


名前:サンドバッグ

種族:土傀儡(ゴーレム)[召喚者:天目]


Lv:‐

HP:5911/8000

MP:0/200


状態:‐


スキル:-


◇◆◇◆◇


 ただ、『看破』で確認してもHPがなくなったわけでは無く、至って普通の状態だった。


「あの、ディラさん」


 いつの間にか天目さんが私の背後まで寄ってきていた。


「え、はい」


「今・・・何をしました?」


「えっと、ちょっとばかり特殊なスキルを咄嗟に・・・」


 私の言葉に天目さんが難しい顔をする。


「召喚されたゴーレムはMPを消費して行動するんです。で、私のゴーレムにはスキルは一切積んでないので、最長で30分は動き続けることができるんです」


「そ、そうなんですね・・・」


「でも今は数分に満たない戦闘でこのようにゴーレムが動きを止めてしまいました」


「間違いないの。サンドバッグのMPがすっからかんになってるの」


 ゴーレムの傍でしゃがみこんでいた天羅さんがそう言った。


「さ、最初からMPが少なかった可能性は・・・」


「ないです」


 言い切られてしまった。


「天目、その辺にしておくの。いくらパーティを組む予定とはいえ話せないことだって1つくらいあるの」


 なんと天羅さんから助け船が入った。最初のツンツンしていた頃とは大違いなの!


「何か今失礼な気配がしたの」


「気のせいです」


「別に私だって無理に聞き出すつもりは無いですよぅ。でも、私たちに話してもいいと思ったら是非話してほしいです。単純に気になります」


 天目さんのあまりの真っすぐさに苦笑しながら了承の返事をすると、ベルの音が家中に響いた。


「珍しいの。来客なの」


「誰ですかね?この前天羅ちゃんが細切れにしたあの男の人とか?」


 玄関の扉が開かれたそこには、小さい子供が血まみれで倒れていた。

というわけで新相棒誕生です。

当初はこのタイミングで別武器でも持たせようなんて考えもありましたが、途中の細剣術の登場により細剣一筋となりました。

今回登場した瘴紅合金の細剣に限らず、登場した武器やアイテムのデザインは全て考えてはいるんですが、如何せん投稿者の画力が無さすぎる。誰か神絵師の腕をください。


あと、『看破』を使用した際のメッセージをちょっとずつ変えています。ちょくちょく表記揺れがあるかもしれないですが、いい感じに固まったら以前までの分も一気に改訂しようと思います。

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― 新着の感想 ―
[一言] この細剣は今後どうなっていくのかと思うとなかなか楽しそうだぜ
[気になる点] 大丈夫なの...?生きてるの...? [一言] デレたの!デレたの!
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