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白骨少女が逝くVRMMO記  作者:
鬼の里
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爾後

ご高覧いただきありがとうございます。

 突然だけど、私は現在進行形で自分と背丈もそう変わらない女の子に大剣を突きつけられていた。


「このプライバシーも何もない悪辣無比の黒マントめ、覚悟するの」


天羅(あまら)ちゃん!私は別に気にしてないんだってば!」


「そうはいかないの。この黒づくめをとっちめてその顔面を余すところなく掲示板に晒上げてやるの」


 どうしてこうなった。


・・・


 私はAAOのメンテナンスが明けた後、ログインして王都の路地裏をぶらついていた。

 あの時スルトのぶん投げた剣を私が止めてなきゃ、この景色を2度と見ることは無かったんだなと思うとじわじわと胸に込み上げてくるものがあった。


「それはそうとお腹周りが落ち着かない」


 普段私の外套の中でお腹にしがみつかれている感覚が今は失われていた。

 イベント中にスルトの剣を止めてリスポーンした後、エラさんの元に向かうために天目さんと一緒に安置しておいたヴィオを回収しに行こうとしたら、イベント終了のアナウンスと同時にヴィオを抱えたエラさんが私の元にやってきた。

 エラさん曰く、「この呪いは時間薬でどうにかなるものではない。ディラにもヴィオにも少し酷ではあると思うが、一旦ヴィオは儂が預かる。ディラもこの際、我が子に守られるだけにならないように精進せい」とのことで、ヴィオは回収されてしまった。

 正直すごく寂しいし不安だけど、このままヴィオが眠ったままおかしなことになるのを見過ごすのも看過できなかったから渋々了承した。


「細剣の代わりも見つけないとなぁ」


 スルトの剣とのぶつかり合いで見事に砕けた愛用の細剣は、今や見るも無残な姿に変わり果てていた。一応耐久値の自動回復効果がついてた筈なんだけど、さすがに耐久値が0になって壊れてしまうと回復も何もないらしい。

 私はこれまで3種の細剣術スキルと闇魔法で何とか渡り歩いていたところがあるから、その片方・・・というか過半数を占めていたスキルが使えないとなると、私はちょっと小突いただけで死ぬ貧弱なただの骨ということになってしまう。

 ちなみに壊れた装備類は壊れた時点で消滅はせずにいくつかの破損段階に分かれてインベントリに仕舞われる仕様だそうで、私の細剣はおそらく1番酷いであろう『全壊』という状態になっていた。


◇◆◇◆◇


瘴石英の細剣

耐久:0/750


状態:全壊


効果:攻撃した相手と装備者に瘴気の状態異常を付与。耐久値自動回復(微)


魔力との親和性が高い細剣。この細剣を通して魔法を使用すると、魔法に瘴気が乗る。


◇◆◇◆◇


 この状態になってしまうとインベントリから取り出して装備することすらできなくなるみたいで、ヴィオの不在に次いでこれまた不安要素の1つとなってしまっている。


「それにイベント報酬って言ったってこんなものどう使えっていうのさ」


 メンテナンスが明けると、これまでほぼ機能することのなかったメール欄にイベント参加報酬が送られてきていた。内容はいくつかの素材と『大森林』という場所への進入許可証だった。


◇◆◇◆◇


進入許可証[大森林]

効果:大森林に入れる


大森林の進入許可証。大森林には神秘の種族が住まうとされている。



紅金のインゴット×30

効果:なし


紅色の金属の延べ棒。



瓶詰の豪焔×20

効果:なし


炎獄を支配下に置く巨人の体を纏う青い焔。この焔を使用して金属を鍛えることもできる。



赤熱した岩×40

効果:なし


巨人の分体を構成していた岩石。途切れることなく熱を放出し続けている。



紅の結晶片×5

効果:なし


巨人の分体を制御する核の破片。その表面には幾重にも謎の文様が刻まれており、人知を超えた何かを感じさせる。



残骸×1

効果:なし


剣のような形をしてはいるが、剣にしては細い何かの残骸。


◇◆◇◆◇


 とまあ、こんな具合に最初の許可証以外私にはどうしようもない代物ばかりだった。最後の残骸とかいうアイテムに至っては最初ゴミなんじゃないかと思ったけど、フレーバーテキストが何だか意味深だったから残しておいた。

 進入許可証というアイテムを見る限り、「次は大森林に行くといいよ!」という運営側の主張が見え隠れしているけど、私的にはメールに載っていた『ドワーフの谷』という場所が気になる。

 ドワーフという種族は大衆的なイメージの例に漏れず、鍛冶職を得意とする種族で王都から西南西に向かった先の深い谷にドワーフが沢山住んでいるらしい。

 そう、鍛冶職ということは次なる相棒を打ってもらえる可能性があるということだ。推奨レベルはそこそこ高いらしいけど、今更レベルがなんだという感じなので気にしないことにする。


「そうと決まればその場しのぎの適当な剣を・・・」


「ディラさ~~~ん!」


「ん?」


 路地裏から広場に出て、そのまま鍛冶屋がある方向に向かおうとすると見覚えのあるマント姿のプレイヤーがこっちに向かって手をブンブンと振りながら小走りで近寄ってきた。


「天目さん?どうかしました?」


「ここは危険です!早く王都を出ないとディラさんが・・・!」


 ぜえぜえと息を切らしながら私の両肩をガシっと掴んだ天目さんの目は本気だった。何を言おうとしているのかはまるでわからないけど、冗談で言ってることではないということはひしひしと伝わってくる。


「天目さん、まずは落ち着いて詳しいわけを・・・」


「その必要はないの」


 聞き覚えのない声が聞こえると、私と天目さんの間に刀身が1メートルはありそうな大剣が降ってきて地面に突き刺さった。


「うぇ!?」


「不審者死すべし。慈悲は無いの」


 私の目の前には、降ってきた大剣を軽々と片手で拾い上げ剣先を私の喉元に突きつける小柄な少女が立っていた。

というわけで新キャラとの邂逅回でした。

新章始まってすぐになんだか今日キャラ感溢れるプレイヤーと遭遇した上に敵対されてしまいました。この子は一体何者なんでしょうか。


お察しの方もいらっしゃるでしょうが、ヴィオは暫くの間おやすみとなります。ヴィオを気に入ってくださっている方々・・・すまねぇ・・・っ!奴は強すぎたんだ・・・っ!

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― 新着の感想 ―
[一言] こいつマナー違反してる?その場合以前にこれただのPKになる可能性があるし普通に迷惑プレイヤーとして通報できそう
[良い点] 更新ありがとうございます。 [一言] いやー全壊か…。仕方ないですね。 魔法とかもあるから多少は大丈夫?そう。
[一言] 掲示板言うてるから種族的な敵視NPCじゃなくてプレイヤーか これで本人は名の知れた上位プレイヤーだけど中の人がホラー耐性無いとかだと不意のホラーがコンニチハして悲劇やぞ(本人にとっては
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