表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白骨少女が逝くVRMMO記  作者:
邪界樹の洞穴
7/96

沈黙は金とは限らない

ご高覧いただきありがとうございます。



12/9 一部表現を修正しました。


「あれ?なんか数減ってない?」


 嫌な思い出には別れを告げ、気を取り直して部屋を見渡すが、前に来た時より明らかに魔物さんの数が減っている。前は20体そこらの数の魔物さんがうようよしていたのに、今は4体しかいない。魔力の色を見た感じ、敵対してる魔物さんはいないっぽい。もうあんな馬鹿な真似はしない。

 とりあえず存在進化の条件を満たすためにも、このお誂え向きに数が揃ってる魔物さんを倒そう。インベントリから最後の破邪ポを取り出し、一番近くにいる魔物さんに鑑定を使ってみる。


◇◆◇◆◇


名前:‐

種族:骸骨騎士(スケルトンナイト)


Lv:22

HP:2470/2470

MP:110/110


スキル:「統率」「剣の心得」「馬術」


◇◆◇◆◇


 おお!弱い、弱いよ!私より遥かに強いけど!こんなの、破邪ポで一発じゃないか!

 そんなわけで騎士さんの背後に忍び寄り、破邪ポを浴びせる。


《存在進化『???』の解放 2/5》


 どうやら今の騎士さんを倒したことで解放条件が進んだらしい。よかった。破邪ポで倒したら討伐カウントに入らないんじゃないかと思って実は内心ドキドキだったけど、杞憂で済んだみたい。そもそも、最初に倒した劣種竜骸がカウントに入ってる時点で問題はないんだけどね。

 おや、今倒した騎士さんがいた場所に何か落ちてる。これは・・・剣かな。騎士さんの手から細長い魔力が見えてたから、騎士さんが持ってた剣だろう。


◇◆◇◆◇


瘴気に染まりし錆びた長剣 

耐久:51/400


効果:攻撃時、相手に瘴気を与える


長い間、瘴気に晒され続けた長剣。在りし日の姿を見ることはもうない。


◇◆◇◆◇


 これまた物悲しいテキストですこと。なんかこのダンジョンそういうの多くない?アンデッドまみれだから仕方ないっちゃ仕方ないのかもしれないけどさ。どうやら、騎士さんからドロップしたのはこの剣だけのようだ。とりあえずインベントリに放り込んでおく。

 しかし、これで破邪ポが尽きてしまった。どうしよう、破邪ポがない私なんてポケットがないネコ型ロボットみたいなものだ。


「あ、作っちゃえばいいんだ」


 そう、私にはクソAIが齎した『錬成』というスキルがある。なんといっても王龍さんのお墨付きだ。今使わずしていつ使うというのだ。というわけで『錬成』を使ってみると、自然と頭の中に使い方が流れ込んできた。どうやら『錬成』は専用の道具を使わなくてもMPと素材を消費してアイテムを作れるスキルのようだ。ちょっと前に宝箱から出てきた聖水と劣種竜骸の骨をインベントリから取り出すと、メッセージウィンドウが現れた。


《「聖水」と「劣種竜骸の骨」で『回復のポーション・魔除(まよけ)』を作成できます》

《MPを1と素材を消費して『回復のポーション・魔除』を作成します》


 MPの消費は1らしい。そういえば残りのMPっていくつなんだろう。


◇◆◇◆◇


Lv:‐

HP:200/200

MP:4/15


◇◆◇◆◇


 あっぶない!ギリギリ4個作れるみたいだ。聖水と劣種竜骸の骨を4個ずつ消費して「回復のポーション・魔除」を作った。さーて、効果はいかほどの物か。名前を見るに破邪ポの下位互換かな?長いから魔除って呼ぼう。


《『鑑定』を使用するにはMPが不足しています。》


 あれえ?鑑定ってMP使うんだっけ・・・?まあ、何故かMP減ってたもんね。しかもこのダンジョンで鑑定くらいしかしてないから、MPが減ってる理由も明らかだし。

 ・・・そういえば王龍さんがそれっぽいこと言ってたっけ、忘れちゃった。


「MPって自然回復とかするのかな・・・」


 そう思ってステータスを眺めながらしばらく待ってみたが、私のMPは1すら回復しなかった。


「さすがに鑑定使わずに特攻はできないしなあ」


 そう、私はもうあんな無様な真似はしないのだ。しかし、このまま待っていても埒が明かないのも確かだ。どうしたものか。

 しばらく考えていると、物音がした。何かと思い魔物さんたちを見やると、黄色一色だった魔力が赤色に染まり、魔物さんたちがこちらに向かってきている。明らかに私に敵対している。


「え?え?え?なんで!?私何かした!?」


 いくら自分の行動を思い返しても何も心当たりがない。そりゃそうだ、私は騎士さんを倒してから部屋の隅でじっと三角座りして動いていなかったのだから。

 ん?騎士さんを倒した?もしかして、時間が経って騎士さんが誰かに倒されたことに他の魔物さんが気付いて、んで騎士さんを倒したのが私だということが判明してこうなってるのかも。というかそれ以外に私が敵対される理由なんてない。

 なんて考えている間にも、魔物さんたちはじわりじわりとこちらににじみ寄ってきている。相手の体力もわからない、唯一の攻撃手段がどれほどの効果を持っているかすらわからない状態で敵と戦えっていうのかAAO!この状況を作ったのは紛れもない私だけど!


「やるしかないのか・・・」


 もう馬鹿な真似はしないって決めてたのにこれだよ。自動的に死地に追い込まれる隠しスキルとか持ってるんじゃないだろうか。

 もう嘆いている暇もない。最初の魔物さんがもうすぐそこまで迫ってきている。覚悟を決めてインベントリから魔除を取り出し、一番近くにいる魔物さんに浴びせる。


《存在進化『???』の解放 3/5》


「おお?」


 魔除を浴びた魔物さんが消えた。あれ、倒せた?これ、どうにかなってくれるんじゃなかろうか。幸いなことに、魔物さんたちは私を囲んだりせずに一直線にこちらに向かってきている。所詮はアンデッドということなんだろうか。いや、そういえば騎士さんが『統率』とかいうスキル持ってたような気がする。もしかして、最初にリーダーを倒したから作戦も何もない状態で襲い掛かってきているのかもしれない。


「それならまだ勝機があるよ!」


 続けて2番目の魔物さんにも魔除を浴びせかけると、こちらもすんなりと倒せてしまった。


《存在進化『???』の解放 4/5》


「これいけちゃうやつだ!」


 調子に乗ってなんの警戒もせずに最後の魔物さんに近寄り、魔除を浴びせる。最後の魔物さんもあっさりとたおせ・・・


「え?」


 とんでもない打撃音が部屋に響き、私の体は部屋の端から端まで吹き飛ばされた。

 何が起きているのかわからない。視界が二転三転し、壁に激突してようやく止まった。


「私、何をされて・・・」


 そう言いながらステータスを確認する。


◇◆◇◆◇


Lv:‐

HP:19/200

MP:0/15


◇◆◇◆◇


 満身創痍だ。しかし、この光景はどこかで見たことがある。デジャヴだね。ほんとに何も成長してない、自分の馬鹿さ加減に嫌気がさしてくる。なんであんなに近づいちゃったかなあ。

 しかし、嘆いていても魔物さんは待ってくれない。私を仕留めようと武器を構えながらこちらに歩み寄ってくる。魔除ももうないし、私にできることは1つしかない。ほんとは色々検証してから使いたかったけど仕方ない。命より重いものはない。


「『吸魔』!」


 両手を魔物さんに向け、おばあさんにもらったスキル『吸魔』を発動する。魔物さんのHPがどれだけ残っているかとか、『吸魔』でどれだけのHPを吸収できるかとかわからないことだらけだけど、迷っている暇はなかった。

 『吸魔』を発動すると、魔物さんは驚いたのか少し後ずさったが、自分のHPとMPが吸収されていることに気付いたのか、慌てて私めがけて武器を振り下ろした。


「間に合って・・・!」


 だが、無情にも私の眼前に魔物さんが振り下ろした武器が迫っていた。


「あ・・・」


 思わず顔を背ける。


・・・


 しかし、振り下ろされた武器が私に届くことはなかった。


「あれ?」


 魔物さんがいたほうを見ると、そこには魔物さんが持っていた武器だけが残されていた。


「もしかして、勝てた・・・?」


《存在進化『???』の解放 5/5》

《存在進化『???』の解放条件をすべて満たしました》

《存在進化『???』が解放されました》

《『???』へ存在進化しますか?》

▶YES

▷NO


 どうやら勝てたようだ。本当によかった。これでまた馬鹿みたいな行動が原因で死んだりしてたら立ち直るまでに結構な時間がかかってたかもしれない。もう調子に乗らない、堅実に生きていこう。

 それで、どうやら存在進化条件を満たせたらしい。もう進化できるみたいだけど、どうせなら王龍さんのところに戻って落ち着いてからやりたい。でも体がボロボロだからここで進化して、まだ探索するのも悪くないかも。

 なんて考えていると、奥へと進む通路から魔物さんが数体現れた。魔力の色は黄色だから大丈夫だけど、さっきみたいなことがいつ起こるかわからない。一旦進化は置いといて王龍さんのところに戻ろうかな。


《一定時間回答がされなかったため、肯定と見なします》

《プレイヤー『ディラ』の存在進化を開始します》


「え、ちょっとまっ」


 抗議の声も空しく、私の体が黒い靄に包まれた。


・・・


《プレイヤー『ディラ』が隠し種族、『劣種竜(レッサーワイバーン)骸兵(スケルトンソルジャー)』へと存在進化します》

《これらは、世界の声として全プレイヤーへと発信されます》

《『繧ィ繝ォ繝■?繧ケ』の意志により、世界の声は秘匿されました》

《プレイヤー『ディラ』に存在進化の恩恵として、スキル『竜の因子』が与えられます》

《プレイヤー『ディラ』のスキル『鑑定』の熟練度が規定値に達したため、『鑑定』が『看破』へと進化します》

《『繧ィ繝ォ繝■?繧ケ』の意志により、レベルシステムは解放されませんでした》

《プレイヤー『ディラ』の進化を終了します》

というわけで進化しました。

最後の魔物は3話「初戦闘と不名誉」で理菜の右上半身をえぐった例の奴だったりします。理菜は自覚していませんが、リベンジ達成ということになります。よかったね。

次回は初の掲示板回の予定です。掲示板回を投稿した日はもう1話追加で投稿していくつもりです。物足りないですしね。


ところで、何やらシステムに介入しまくってる人がいますが誰なんでしょうか。怖いですね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 魔除ポーションって三個しか使ってないんじゃないです?
[良い点] 読んでいて面白いです。 [気になる点] 4話で鑑定を使用する際のMP消費について聞いているので7話での「あれえ?鑑定ってMP使うの・・・?」は矛盾している気がします。
[一言] 忘れるどころか忠告通りになっても思い出さない忘却の彼方の主人公ェ……
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ