王の乱心‐12
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ゴーレムを殲滅してようやく一息つけると思った矢先、地震のように地面が揺れ出したかと思えば、空間そのものがドクンドクンと鼓動を刻むように揺れているように感じる。
「わわっ・・・何なんですかこれぇ」
天目さんは私の隣で転げては立ち上がってを繰り返すという何とも微笑ましいことになっていた。戦闘能力が皆無って言ってたのはステータスの問題かと思ったけど、別のところに根本的な問題があるのかも。
「おい!何か出てきたぞ!」
1人のプレイヤーが指さしている方を見ると、空中に大きな炎が浮かんでいてた。何かの魔物さんかと思って『看破』を使ってみたけど、何も出ないところを見るに生き物というわけではなさそう。
なんて思ったのもつかの間、宙に浮かんでいる炎がみるみるうちに拡散していって気が付けば縦10メートル程度はありそうな巨大な深紅の両開きの扉が出来上がっていた。どうやら完全に実体としての扉がそこに存在しているらしく、恐る恐る扉に触れているプレイヤーもいた。
すると、ゴゴゴゴと重たい音を立てながら深紅の扉がゆっくりと開いた。
「・・・何もない?」
深紅の扉が完全に開き切った向こう側は、今いる場所と何ら変わらない火山の地形が続いているだけだった。良くも悪くも拍子抜けして、これはどうしたものかと辺りを見渡していると、扉に近づいていたプレイヤーたちが突然炎上しだしてそのまま光の粒子になって消えていった。
「ひえぇ」
天目さんが私を壁にするように背後に引っ込んでしまった。戦えないらしいしそれが正しいんだろうけど、この子本当に何でこんなところにいるんだろう。
「ヴィオ、出ておいで。何があるかわからないし、余裕が無かったら自分のことを優先してね」
「キュウ!」
多分今から激しめの戦いになるだろうからヴィオを解放しておいた。どうにもならなくなったらヴィオにどうにかしてもらおうという心積もりが無いわけでは無いし、なんならもう戦力として数えてるところはあるけど、ヴィオが心配だった。
あのスルトとかいう魔物さん?と知り合い・・・というより向こうが一方的にヴィオを敵視していただけなんだけど、間違いなく向こうは私の知らないヴィオを知ってるから何がトリガーになって前に暴走したときみたいになるかもわからない。
もしそうなった時に止められそうなのは私の『魔奪』くらいだろうから、私は私の身を守る必要がある。外套の中に入れておいて私と密着した状態で暴走なんてしたら私は骨の一片も残らないだろうし。
「それが噂の・・・」
「噂?噂になってるんですか」
「はい、黒マントの商人に余計なことをすると異空間から飛び出てきて辺り一帯を焼け野原にする黒竜なんて噂で・・・」
なんじゃそりゃ、確かに噂には尾鰭が付いて回るものだけど焼け野原って。このイベント戦闘以外でヴィオが人前に出た回数なんて片手に収まるレベルだと思うんだけど。
それに異空間て。ぶかぶかの外套の内側に収まってるだけだっての。
「・・・その反応を見るにそういうことですよね」
「噂話なんてそんなものですしまあ・・・」
でもそんな噂が飛び交ってるなら私に変に突っかかってくる人も減る・・・のかなぁ。怖いもの見たさで近づいてくる人の方が多くなりそうなもんだけど。
「キュ!キュウ!」
するとヴィオが私の外套のフードをグイグイと引っ張ってくる。ちょ、危ない!顔見えちゃう!
「どしたの、ヴィオ」
「キュ!」
ヴィオは短い手?前足?を使って未だ変化のない扉の方をビシッと指さした。ヴィオが示した扉の方を見るけど、特にさっきと変わったことはない。強いて言うなら扉の周りに群がっていたプレイヤーたちがみんな一定の距離を保っていることくらいなもの・・・
「あぇ?」
天目さんがかなり間の抜けた声を出したけどそれに突っ込んでる暇はない。扉のドア枠とでも言えばいいのだろうか、その内側の空間にいきなり真っ赤な渦が現れてプレイヤーがいる空間全体に無差別に火山弾のような燃え盛る巨大な岩石をまき散らしだした。
咄嗟に細剣を構えて眼前に迫る火山弾を数個を『闇波』で防ぐ。ただの魔法の炎弾なら『魔奪』でさっと消せるんだけど、岩が物理的に燃えているとなれば話は違う。
「ヴィオ!出元を叩くよ!いける?」
「キュウ!」
ヴィオは私の言わんとすることを理解できたようで、未だに火山弾がかなりの頻度で出続けている扉の渦に向かって淡い水色の魔力の塊を撃ち出した。
ヴィオの撃ち出した巨大な魔力の塊は渦にぶつかる・・・かと思いきや、そのまま渦の中に吸い込まれていった。え、それはちょっと予想外かもしれない。ヴィオの攻撃を吸収して火山弾の勢いが増したりなんてしないよね?もしそんなことになれば完全に戦犯になっちゃう。
「あ、止まり・・・はしてないですけど、勢いがマシになりましたね」
ふむ、他のプレイヤーがヴィオの真似で矢を飛ばしたりしても弾かれてるところを見るに、魔法であの渦に攻撃しろってことなんだろうけど・・・なんで魔法を飛ばす人が1人もいないんだろう。最初にプレイヤーに遭遇したときに魔法を使ったら驚いてたし、まだ魔法は広く普及してないのかな。でも魔法って言ったらファンタジーの代名詞みたいなものだし、この数の人がいて魔法を使う人がいないってどうなんだろう。
「キュウ!」
「まだ火山弾が来るの?」
「キュ!キュキュウ!」
ヴィオが首を横にブンブン振って違う違うと言ってることはわかるんだけど、如何せん龍語はわからないから具体的に何が言いたいのかはまるでわからない。
すると、未だ火山弾が出続ける渦から巨大な腕と足1本ずつがヌッと出てきて扉の枠組みをグッと掴んだ。
「なに!?」
そのまま勢いをつけるように巨大な手足の持ち主の全身が渦から出てきてその全貌が露わになった。
「お、おおきい・・・ですね」
渦から出てきたのは、10メートルはありそうな扉よりも文字通り頭1つ分大きい巨人だった。
『待たせたな、人間どもよ。一部例外もいるようだが、まあ良い』
『改めて名乗ろう、我が名はスルト。戯神の忠実な僕なり』
『我の目的はただ1つ。あの小娘によって阻まれた終末を再び迎えることだ』
『まずはこの地を燃やし尽くし、あの小娘に我ら神々の再臨を知らしめてやろうではないか!』
《終末を齎す炎獄の巨神『スルト』により、王都が危機に見舞われています》
《プレイヤーは直ちにこれを阻止し、平穏を奪取してください》
というわけでイベント回第12話目でした。
今度こそスルトが降臨しました。特に前情報も何もない状態で神とされる存在を打破できるのでしょうか。そもそも敵のレベルがおかしいってそれ前から(ry
1つ皆様にお尋ねしたいのですが、投稿者もとい柊としてのTwitterアカウントってあった方が良いのでしょうか。投稿者本人としては特に呟くことも思いつかないのであっても仕方ないと思ってるんですが、Twitterアカウントがあれば○○が便利だよ!とかいうのがあれば教えていただきたいです。




