王の乱心‐4
ご高覧いただきありがとうございます。
2/21 一部修正しました。
◇◆◇◆◇
名前:‐
種族:スルトアバター
Lv:52
HP:19999/19999
MP:4999/4999
スキル:「獄炎魔法Ⅳ」「岩石魔法Ⅸ」「頑健」「魔装」「轣ス遖阪?蟾ィ莠コ」
◇◆◇◆◇
うーわ、ブレイさんが削ったHP元通りになってやんの。私の与えた状態異常もきれいさっぱりなくなってるし、文字通り仕切り直しってことね。
体に纏いなおした青い炎は前の赤い炎の時よりも火力が高いって認識でいいんだろうか。もう私のMPはそんなに残ってない、また弾幕ゲームが始まったら『吸魔』を使いながらやり過ごすしかなさそう・・・できればそれは避けたいんだけども。
というか、何かこの魔物さん、心なしか・・・
「・・・さっきよりでかくねぇか」
そう、明らかにさっきより身長、というよりガタイが大きくなっている。さっきまでは平均的な成人男性程度の体だったのが、2倍とまではいかなくても1.8倍くらいにはなってそう。私2人分くらいのサイズしてるよこいつ。対峙するだけで首が痛くなる。
今思ったけどさ、この魔物さんってこんな少人数で挑むような相手じゃなくない?レイドボスとまではいかなくても、レベル的にもギミック的にも少なくとも5人1組で戦うぐらいの強敵だと思うんだけど。それなのにどうして私はNPCと2人で戦ってるんだか・・・他のプレイヤーはどうした!
「ハイジョ、ダ」
魔物さんは不気味で虚ろな単眼で私とブレイさんを見やったかと思えば、気付いたらブレイさんがはるか後方に吹き飛んでいた。積み上げられた瓦礫の山に激突したブレイさんは、気絶でもしているのかピクリとも動かない。
「ここからはNPC頼りにはさせないってことね・・・」
とんでもない鬼畜仕様だ、と心の中で悪態をつく。これは頼りになる我が子に頼るしかないか・・・
「ヴィオ、出てきて」
ヴィオに呼びかけて外套から出てきてもらう。ヴィオは「転移はしないの?」と不思議そうな顔で私を見上げてくる。
「ヴィオ、あいつ。あいつを一緒に倒そう」
「キュウ!」
魔物さんを見たヴィオはそれはもう元気に、挨拶代わりだと言わんばかりに黒とも紫とも言えない色の混沌とした魔力の塊を魔物さんに向かって口から放出した。魔物さんにヴィオの一撃が直撃して辺り一帯を巻き込んで大爆発を起こした。なんだこの火力。
「ニーズヘグ、ナゼワレヲコウゲキスル」
「キュウ!」
ヴィオはまた魔物さんに特大の魔力の塊をぶつける。魔物さんも今度は黙ってやられるわけもなく、体に纏っている青い炎の火力を上げて、ヴィオが出した魔力の塊と同じサイズの炎弾をぶつけて相殺する。
それにしてもヴィオ、強すぎじゃない?こんなこと言っちゃアレだけど、ブレイさんよりも遥かに頼りになる。いや、ブレイさんが頼りないわけじゃなくてヴィオがおかしいだけだと思うんだけど。
「ソウカ、キサマハ、コノセカイガドウナロウトモキニハシナイノダナ。アノヒモソウダ、キサマハタマシイヲクイアラシ、トリフゼイトコロシアウダケ・・・キサマ」
気持ちよく話しているところ申し訳ないけど、さすがにジッとしていれるほど私は悠長ではない。横顔に『闇波』を撃ちこませてもらった。大してダメージは入ってないんだろうけど、何もやんないよりはマシの精神だ。
「ヴィオ、何故だかわかんないけどこいつはヴィオを狙ってるっぽい。危ないと思ったらすぐにどこかに転移して」
「キュ!キュウ!」
ヴィオは眦に涙を溜めて首を左右にぶんぶん振って全力で嫌だという意思表示をしてくる。いちいち仕草が可愛すぎる・・・!でもヴィオを危険な目に合わせたくないんだー!
「ダメ!私は別に死んでも大丈夫・・・うわぁ!?」
ヴィオと押し問答のようなことをしていると、魔物さんが炎弾を私とヴィオの間に飛ばしてきた。あの野郎!邪魔しやがって!話しているところを邪魔したのは私が先だから文句言えないんだけども!
「話している時間もないってことね・・・」
魔物さんがまた炎弾を私とヴィオ目がけて放ってくる。追尾性能は相変わらずで、青い炎になる前と数はそんなに変わんない、むしろ数個減ってはいるけど炎弾1つ1つの大きさが増してる。1.5倍はあるよこれ。ブレイさんの盾になってる時とは違ってターゲットがヴィオにも分散してるから多少は躱しやすくなってるけどそれでもしんどい。私が必死に炎弾から逃げているのに対して、ヴィオは迫る炎弾に同じようなサイズの魔力の塊をぶつけて相殺させていた。ステータスの暴力が過ぎる・・・!
躱すのが難しいやつは受け流したいところなんだけど、なんともうMPに余裕がありません!魔法を撃つだけならまだ余裕はあるけど、受け流しに使えるほど残っていない。このままじゃジリ貧だよジリ貧。
「使うしかない・・・よねぇ」
でも受け流しで消費するMPを渋って死んじゃったらそれこそ本末転倒だし、もう諦めて『吸魔』使っていく方がいいのかな。せめて使う前にステータスをチェックしたい。いつも使った後に「何かおかしくない?」ってなるから今回ばかりはハッキリさせないといけない。
「ヴィオ、ちょっと魔物さん引き付けておいて!」
あんなこと言った後でヴィオを危険に晒すのはどうかと思うけど、私にも譲れないものはある。まあヴィオ、私より遥かに強いし大丈夫なんだろうけどさ。
◇◆◇◆◇
称号:セットなし
名前:ディラ
種族:呪狂竜骸
職業:‐
所持金:87000ギル
Lv:‐
HP:219/275
MP:947/10330
SP:88
装備:瘴石英の細剣、滅聖の外套、瘴気の編み上げ靴、蜀・逡後?鬥夜」セ繧
スキル:「闇魔法Ⅱ」「錬成」「瘴気」「念話(邪)」「看破」「吸魔」「竜の因子」「詠唱破棄」「細剣術・流麗」「細剣術・猛撃」「呪法」「魔装」「細剣術・致命」
パッシブスキル:「冥王の加護」「呪狂竜」
取得称号:『管理繝ウのお気に入り』『艱難辛苦を求めし迢ィ人』『最速の異界人』『邪王龍の友』『超オーバーキル』『弱点克服への近道(聖)』『暗愚の屍』『卑劣』『冥王の友』『呪いと狂気の二重苦』『物好き』『情け無用』『アリアーナの友』
アイテム:存在進化のスクロール、瘴気に染まりし錆びた長剣、英華の宝玉、呪いに呑まれた邪なる宝珠、王家のメダル
◇◆◇◆◇
HPが275にMPが10330ね、しっかり覚えておこう。
「よし」
ステータスのチェックを終えてヴィオが戦っている方を見ると、怪獣大戦争みたいなことが起きていた。魔物さんは体の炎から次々に青い炎弾を撃ち出して攻撃しているから、その余波で周りの環境がとんでもないことになってる。あの体がどれだけ熱いのか私はよくわからないけど、周りの地面すら溶け始めてる。
ヴィオもヴィオで魔物さんの炎弾に負けない威力の魔力の塊を撃ち出して炎弾を相殺させつつ、なんなら魔物さんにダメージを与えていた。やっぱ私いらないんじゃない?
なんて心の中でぼやきながらどうにか私でも介入できる隙が無いか、ほぼ炭化している茂みに隠れて戦闘を眺めていると、魔物さんの背中の一部に炎が無いのが見えた。その炎が無い場所には黒で少し濁った赤いガラス玉みたいなものがはめ込んであった。
・・・あれ、どう見ても弱点だよね。そうとわかればやることは1つ。
「ヴィオ、隙を作って!」
「キュウ!」
私がそう呼びかけると、ヴィオはさっきまでとは比べ物にならない程のサイズの魔力の塊を作って魔物さんに放った。ヴィオが使ってるあれって名前とかあったりするのかな。
「グオオオオ!」
魔物さんはヴィオの放った魔力の塊を正面から受けてなんと消滅させてしまった。あれで倒せたらいいなーなんて思ってたけどそう甘くはないらしい。
「でもヴィオありがとね。『闇波』!」
「!?ナンダ!?」
魔物さんがヴィオの一撃を受けている間に魔物さんの背後に回り込んでいた私は、魔物さんの膝裏に『闇波』を放って膝をつかせることができた。
《プレイヤー『ディラ』のスキル『闇魔法Ⅱ』の熟練度が規定値に達したため、『闇魔法Ⅱ』が『闇魔法Ⅲ』へと進化します》
《スキル『闇魔法Ⅲ』を確認しました》
《『闇縛』が解放されました》
なんか出たけど今は忙しい!無視!
私は膝をついている魔物さんに駆け寄って背中のガラス玉を細剣で貫く。見た目はガラスっぽいけど感触はトマトを斬ってるみたいな感じだ。
「『吸魔』!」
使うか使わないか迷いに迷った『吸魔』を細剣を通して魔物さんに喰らわせる。頼む!どうかこれ以上減らないで私のHP!
「ゴアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!」
というわけでイベント回第4話でした。
ヴィオの活躍によってスルトアバターの弱点っぽいところに無事『吸魔』を撃ちこむことが出来ました。いくらレベルが高いとは言っても、弱点にあんなイカレスキル撃ちこまれたらさすがのスルトアバターさんも無事では済まないに決まってます。




