鑑定は偉大
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「さすがに前に死んだところから、なんてことはないかあ」
早くも2度目となる王龍さんによる転送が済むと、見覚えのある1本道に出た。確か、ここをまっすぐ行って数回曲がったら破邪ポがあった部屋だよね。前回と変わらず私の目の前にいる第一村人(?)を軽く横目で流して道なりに進むと、破邪ポのあった部屋と中身を失った宝箱が見えた。
「ダンジョンに入りなおしたら宝箱の中身が復活とかは流石にないよね。というか私の場合、死んでも送られるのはダンジョンの中みたいなものだけど」
さて、ここで分かれ道が私の前に現れる。前回は正面の道をまっすぐ行ったら大量の魔物さんがお出迎えしてくれたわけだけど、また同じ道を進むか今度は右へ行くか。じゃあ今度は右へ行ってみよう。もしかしたらダンジョンマップみたいなものが手に入って探索が楽になるかもしれない。
右の通路に入り、しばらく歩くとカチャカチャと聞き覚えのある音とともに人型の魔力の塊が私の前を横切った。魔力の色も黄色で敵対している様子はない。
「早くも鑑定のチャンス!」
◇◆◇◆◇
名前:‐
種族:骸骨将軍
Lv:71
HP:40990/40990
MP:3740/3740
スキル:「統率」「魔装」「豪槍術」「英雄」「逧?ク昴?螽」
◇◆◇◆◇
「ええ・・・?」
私の目がおかしくなってしまったのだろうか。いや、おかしくなる目が今はないんだけども。
骸骨将軍・・・王龍さんに手を出すなって言われてた魔物さんだ。それにしたってHPが4万って。破邪ポを14回浴びせてようやく倒せる数値って末恐ろしいね。確かに私じゃ逆立ちしても敵わない。仮に破邪ポが14本あっても、1回浴びせたら前みたいに反撃されて死に戻るのがオチというものだ。
しかしこの読めないスキルが気になる。他人が持ってるスキルの効果までは流石に鑑定できないみたいだけど、名前すらわからないとなると王龍さんの名前みたいにとんでもない代物なのかもしれない。
「すみませーん・・・横通りまーす・・・」
そんな恐ろしい将軍さんの横を通り抜け、道なりに進んでいると最初の部屋より幾分か広い部屋に出た。そこにはかなり薄い紫色の魔力をもった四足歩行の魔物がいた。紫色ってどういう意味なんだろう。それによく見たら尻尾みたいなものが生えてる。とりあえず鑑定してみよう。
◇◆◇◆◇
名前:‐
種族:劣種竜骸
Lv:33
HP:2158/5200
MP:92/270
スキル:「毒使い」
◇◆◇◆◇
なんだかアレを見た後だとすごくホッとする。いやそれでも私のHPの数十倍あるんだけども。そんなことより、何が原因かわからないけど、魔物さんのHPが3000切ってる。ということはだ、破邪ポを使えば私でも奴を倒せてしまう。やるしかねえぜ。
「今回は油断しないぞ・・・」
前回は何の警戒もなしにパンチかましてズタボロにされた挙句、破邪ポを浴びて自滅なんて情けないことしちゃったからね。同じ轍を踏むようなことはしない。
音をなるべく立てないように魔物さんに近づく。中立状態なのはわかってるけど何があるかわからないから、慎重に慎重に近寄り、インベントリからそっと破邪ポを取り出す。
「そりゃ!」
気の抜ける掛け声とともに魔物さんに破邪ポが降りかかる。一応身構えたが、魔物さんは何の抵抗もなく破邪ポを全身に浴び、そのまま声もなく消えていった。
「倒せた・・・のかな」
魔物さんがいた場所に目をやると、何か落ちていた。なんだろう、鑑定。
◇◆◇◆◇
劣種竜骸の頭骨
効果:なし
幼い竜の頭骨に大量の瘴気が染みついたもの。骸へと身を落とした幼き竜の嘆きが聞こえてくる。
劣種竜骸の骨
効果:なし
幼い竜の骨に瘴気が染みついたもの。骸へと身を落とした幼き竜の嘆きが聞こえてくる。
◇◆◇◆◇
「これはドロップ品かな?嫌な説明文だねこれ」
なんだか怨念が籠っていそうであまり持っていたくない。
ふと、部屋を見渡すとちらほらと紫色の魔力の残滓みたいなものが見える。そのうちの一つに近寄り、鑑定をかけると今拾ったものと同じ劣種竜骸の骨が落ちていた。もったいないから全部拾っておこう。もしかして、私が倒した魔物さんはここで戦闘でもしていて、それでHPが削れていたのかな。でも同族で殺し合いなんてするんだろうか。いや、人間も同じようなことするからそんなに不思議なことでもないかな。
「さてと、次の通路はどこに・・・おっと?」
先へ進もうと通路を探していると、何かに躓きかけた。緑色の四角形の魔力だ。これはもしや、またアレなのではなかろうか。でもさっきこんなところに宝箱なんてあったかな。見落とすにしてはそこそこに大きいサイズなんだけど。
まあいい、そんなことよりドキドキワクワクの開封タイムといこうじゃないか。
「これは破邪ポ!・・・じゃない?」
見覚えのある白色の魔力が箱の中に見えたが、どうも破邪ポの時より白色がくすんでいるように感じる。
◇◆◇◆◇
聖水×20
効果:地面や壁に撒くと、その周辺は少しの間、魔物が近寄れない聖域と化す。瘴気を浴びた魔物の素材と混ぜ合わせると、瘴気の濃度によって強さの異なる回復薬になる。
◇◆◇◆◇
これまたファンタジーのテンプレアイテムだ。20個もある。地面や壁に撒くと魔物が寄れなくなると、効果までテンプレという清々しいアイテムだね。んで、瘴気を浴びたアイテムと混ぜ合わせると回復のポーションになるのかな。私には関係ないと思ったけど、瘴気が濃ければ濃いほど強い回復薬ができるなら、破邪ポを作るのも夢ではないのかもしれない。
そういえば私、『錬成』なんていうスキル持ってたよね。正確には持たされた、だけど。もしかして王龍さんが私をダンジョンに送る直前に言ってた「この先役立ちそうなスキル」ってこれのことか。死ぬほど嫌だけどあのクソAIに感謝しなければならない。いや、クソAIは私をここに飛ばすようにした上で『錬成』を持たせたわけだから、別に感謝する筋合いはない。おととい来やがれってんだ。
「さて、そろそろ進もうかな」
今度は分かれ道はなく、部屋の左奥に先へと進む通路が1本だけあった。
道なりに進む途中で何体か人型の黄色の魔力を持った魔物さんとすれ違った。残りのMPを気にしながら鑑定を使っていたが、どいつもこいつも勝てる気がしないような奴ばかりだった。
「そろそろ次の部屋に出てもいいと思うんだけど・・・」
10分ほど歩いていると、今度はかなり広い部屋に出た。見たところ魔力の反応はなく、周囲を見回しながら部屋をうろついていると、不意に声がかかった。
「そこなお嬢さんや」
・・・声?
王龍さんじゃない、別の老婆のような声だ。私を呼んでる?
「そう、お前さんじゃよ。ここにはお前さんしかおらんしな。はっはっは」
今回は鑑定&破邪ポ回となりました。
実は理菜が劣種竜骸と遭遇した部屋は小規模なモンスターハウスだったりします。何らかの理由で劣種竜骸の蟲毒みたいな運びとなりましたが、本来はLv15∼20の魔物が30体ほど襲い掛かってきます。宝箱もモンスターハウスの全滅報酬です。ウンガイイナー。