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白骨少女が逝くVRMMO記  作者:
死者の国
49/96

波乱の予感

ご高覧いただきありがとうございます。


「え?え?どうなったの?ていうかここどこ?どこかの中?」


「キュウ~」


 気が付いたら見たこともない場所に飛ばされていた。自分で移動したとかじゃなくて本当に気が付いたら知らない建物の中にいた。そもそも私は転移なんてスキル持ってないし。とりあえず冷静になってなんでこうなったか思い出そう。


・・・


 えーと、まずはアーチにやってきて門番さんにマーケットのことを教えてもらって残ってた魔除を3本だけ出品したんだよね。それで、初めての地上の街だし色々見回ってたらギルドを見つけて、ギルドで冒険者カードを発行して、またマーケットでも回ろうかと思ってたらメッセージウィンドウがいきなり出てきて


《出品した商品が完売しました》

《商品を補充しますか?》


って聞いてきたから、どんなところにお店が出ているのか見てみたかったし1回店まで行った。ここまでは普通だね、うん。んでマップに表示されていたお店の場所に行ってみたら広場にポツンと敷物が敷いてあるだけで、若干肩を落としたんだよね。

 まあ売れたんだしいいかと思って何個置いておこうか考えてたら、いきなり私の目の前まで暑苦しい男が寄ってきて「ここに置いてあったポーションもうないのか!?」って聞いてきたから余ってる聖水分を作ってやったら、ジト目の小さい女の子が何か言ってきて、そしたら急にその女の子の体に穴が開いて私は気づいたらここにいたと。


「うーん、訳が分からん!」


 でも、どこかから魔法が飛んできたわけでもないし、やった犯人っぽいのは目星がついてるんだよね。


「ヴィオ、もしかして何かした?」


「キュウ!」


 ヴィオにそう聞くと、ヴィオはえっへんと言わんばかりに胸を反らしてドヤ顔で私を見つめてきた。そんな可愛いことされたら問い詰める気にもなれないじゃないか。


「それにしてもヴィオって転移までできるんだね。未だにどんなスキル持ってるのかすらわかんないし、すごいねヴィオは」


「キュウ!」


 そう言ってヴィオを撫でていると、ヴィオが満面の笑みで私に笑いかけてきた。その瞬間あの何度も体験した妙な感覚が襲ってきて、また知らない場所に飛ばされていた。


「ヴィオ、そういうことじゃなかったんだけど・・・」


「キュ?」


 多分ヴィオは私がヴィオの使った転移っぽいスキルを褒めたから、もっと使ってほしいと私が思ってると勘違いしてまた転移っぽいスキルを使ってしまったんじゃないかな。いや、別に駄目じゃないんだけど何と言うか・・・なんて私想いな可愛い子なんだろう。この程度のことなら全然許せてしまう。

 まあそれはいいとして、ここはどこなんだろう。どこかの庭みたいな場所・・・うわ、なんだこれ。私がいた場所は、とんでもなく大きいお城の中庭らしき場所だった。お姉さんのお城より大きいんじゃないかなここ。こんな建物の中にまで転移できるんだ・・・というか、さっきからヴィオが私から顔を背けてなんだかばつが悪そうにしている。


「ヴィオ、もしかしてよくわからない場所に飛んじゃった?」


「キュウゥゥ・・・」


 やっぱりそうらしい。ヴィオはごめんなさいとでも言っているのか、地面に降りて体を完全に伏せてしまった。何してても可愛いねこの生物は。


「別に怒ってないよ。でも次からはしないでね」


「キュウ~」


 怒っていないのは事実なんだけど、これは困った。こんな豪華なお城なら見張りの兵士とかがいるだろうし、見つかって身ぐるみを剥がされでもしたら間違いなく殺されてしまう。それにしてもこのお城の装飾、どこかで見たことある気がするんだよね。どこだったかな。


「あら?誰かいらっしゃるの?」


 なんて考え事をしていると、どこからか声が聞こえてきた。まっずい、このままだと本当に見つかって処刑されてしまう。近くズラッと並んで生えていた低木に身を隠して息をひそめる。ヴィオも自分から外套の中に入り込んでくれた。賢くて助かるよ。


「あら、かくれんぼかしら?(わたくし)、そういう遊びは得意なのよ!」


 声の主は何か勘違いしているようだ。というか声と言動的に結構幼い感じなのかな?なら変な情操教育を施されてない限り、そこらの大人より会話ができるかもしれない。ちょっと様子を伺って声の主の方に顔を出してみる。


「アリアーナ様!どこですか!」


 あっぶな。あのまま体を出してたら他の人に見つかるところだった。しかしあの声の主は様付けで呼ばれてるんだね。どこかいいとこのお嬢様なんだろうか。


「あら、呼ばれちゃったわ。残念だけどコウモリさんは見つからなかったわね」


「アリアーナ様!」


「はいはい、今行くわよ」


 お嬢様らしき子は従者っぽい人の方に駆けだしていった。と思ったらお嬢様が足を止めて振り返り、迷いなく私に目を合わせてきた。え、見つかってたの???


「コウモリさん、また遊びましょう?これを置いていくから、3日後の夕方にそれを持ってもう1度ここへ来て?城に入れるように話は通しておくわ」


 お嬢様はギリギリ私に聞こえるくらいの小声でそう言って、今度こそ城の中へと入っていった。なんだか全部見透かされてたような気がしてならない。あの子は大物になるね、間違いない。

 しかし、アリアーナ様、アリアーナ様ねぇ。なんか聞いたことあるような・・・


「あっ」


 そうだ、AAOの公式PVにちょっとだけ映ってたあの子だ。確か名前は『アリアーナ・ギュルヴィ・トゥーリ』でトゥーリ王国のお姫様・・・お姫様!?私お姫様と話してたの!?既に大物じゃないか!というか、じゃあここは王都のお城の中ってこと?ずいぶんとまあ凄いところに飛ばしてくれたもんだねヴィオ・・・


「これは何なんだろう」


 周りに誰もいないことを確認してお姫様が去り際に故意に落としていった物を拾い上げる。なんだろう、何かの印が入った10円玉くらいのサイズのコインだ。


◇◆◇◆◇


王族のメダル

効果:なし


トゥーリ王族の関係者にのみ渡されるメダル。市場に流そうとすれば極刑は免れない。


◇◆◇◆◇


 こんなもの不法侵入者に気安く渡しちゃだめだよお姫様・・・フレーバーテキストもなんか怖いしあんまり持ってたくないけど、これって何かのイベントだよねぇ。大人しくインベントリに仕舞っておこう。


《特殊イベント『お転婆王女の戯れ』が発生しました》


 イベント?クエストとか依頼じゃないんだ。ヘルプに書いてあるかな。あ、あったあった。


『イベント:イベントと表記されるものはクエストや依頼と違い、達成に期限はありません。ただし、発生した際にNPCから期限を言い渡された場合のみ、期限内に達成をしないとプレイヤーに影響があります。クエストリストからイベントを破棄することもでき、破棄した場合はイベント発生までの手順を1からやり直すことになります。なお、“特殊”と表記されるイベントが発生した場合は破棄が不可となります。また、特殊イベントは、達成度合いによっては全プレイヤーを巻き込んだクエストに繋がる場合があります』


 ・・・私のAAO生活には『平穏』の2文字はないんだろうか。開始地点をおかしなことにされて、ようやく地上に出れたと思ったら今度はこんな責任重大なイベントが発生して・・・好きでこうなってるわけじゃないからね!?私なりに頑張った結果がこれなだけだからね!?もういっそのこと縁側で熱いお茶を啜っていたいくらいの気分だよ。


「もう野となれ山となれって感じだよね」


 若干自暴自棄になりながらも、なんとか冷静になって荒れ狂う心を静める。落ち着こう、えーっと、お姫様は3日後の夕方って言ってたよね?とりあえず話は3日後ということだ。それまでにできる限りの準備は整えておこう。うーん、さすがに掲示板に一言書いておいた方がいいよね。全プレイヤーを巻き込む可能性があるわけだし、私の好き嫌いでどうこう言ってる場合じゃない。


「とりあえず、ここからどうやって出ようかなあ」


 とんでもなく高いお城の壁を見て、小さくため息をついた。

というわけで王都&王城侵入(偶然)回でした。

理菜はまた変なことに巻き込まれてしまいましたね。今回起きたイベントは理菜が変な手順を踏んだとかそういうわけではなく、普通にストーリーを進めていればいつかは必ず起こったイベントです。特別扱いとかそういうのは全くありません。

それと、お姫様が理菜を「コウモリさん」と呼んだのにはちょっとした理由があります。

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― 新着の感想 ―
[一言] 現実世界では車ごと入店するダイナミック入店が時折発生しているので、ブレスで王城の壁に穴を開けてダイナミック脱出も良いかも(笑) ………これ以上被害者が出る前にいい加減法律でアクセル制御装置…
[気になる点] 今さらなんですが、あとがきで「理菜」とあるのはゲーム内のことに言及している以上「ディラ」であるべきでは?と思います。
[一言] ファンタジー王族のスペックがクソ高いのは良くあるけどこの姫さんもそういう手合いか?まあなんにせよ即座に殺されたりしなくて良かったな。…今後どうなるかわからんけど
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