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白骨少女が逝くVRMMO記  作者:
死者の国
48/96

閑話 とあるプレイヤー その2

ご高覧いただきありがとうございます。


「だー!勝てねえ!!」


「もう何回目・・・?」


「数えるだけ空しくなるだけさ」


「理不尽なまでに強いんじゃなくて、若干希望を見せてくるのやらしいよねえ」


「どうしたものか・・・」


 あれからずっとトルヴァの墓地に挑み続けているけど、あたしたちは未だに突破できないでいる。これが調整のおかしい難易度なら潔く諦めもつくものだけど、ちょくちょくいけそうな時があるから結局引くに引けずここまでダレてしまっている。


「私も弓握って火力支援した方がいいのかな」


「でもユーナは『弓術』持ってないでしょ?ならそのまま短剣使ってた方がいいと思うんだけど」


「でも骸骨(あいつら)って状態異常ほとんど効かないじゃん。なんか私だけ浮いてて申し訳なくなるんだよね」


「そんなこと言ったってしょうがないと思うよ。僕だって矢に上限があるからアルス程火力は出ないし」


「でもルート、こいつは双剣だもん。そりゃ火力出してもらわないと」


「相変わらず魔法職は開拓進んでないみたいだし、いよいよどん詰まりか?」


「「「「・・・」」」」


 うーん、負け続けからくるストレスでみんなのテンションが低い。なんとかできないものかと掲示板を流していると、とある情報が目に入った。お、これなんかいいんじゃないか。たまには攻略から離れるのも悪くはないからな。


「みんなこれを見てくれないか。この14回の掲示板の>>105からだ」


「どしたのサンディ、何かいい情報でもあった?」


「まあそんなところだ」


「えーと、『アーチで規模大きめのマーケットが開催されるらしい』。へー、そんなのやるんだ」


「ああ、ここのところあの墓地に通い詰めだったし一旦息抜きをしても罰は当たらないだろうと思って。それにここで見たこともない有用なアイテムが手に入るかもしれない」


「なるほど、確かにたまにはいいかもしれないね」


「よし、決定だな。んでそのマーケットっていつからだ?」


「今日の昼過ぎからだそうだ」


「ちょうどデスペナ切れたくらいだね」


「よーし、各自それまで休憩なり探索なり自由行動だ」


・・・


「おー、ほんとに規模大きめだね。最近こういうの無かったからワクワクしてきた」


「ここ、誰でもアイテム売りに出せるらしいよ。メニューからイベントタブで飛べる」


「ほんとだ、トルヴァの余ってるドロップアイテム何個かだしとこ」


 あれから再集合した後にアーチまで戻ってきたけど、マーケットに来て正解だった。最近あまり元気が無かったルーナの目が輝いている。ルーナに限らず他の面々も楽しそうにしているし、これはいい息抜きになりそうだ。


「ちょっとごめん、私行ってくるね」


「あー行っちまったよ」


「ルーナこういうの大好きだもんね」


 我慢できなかったのか、ルーナは1人で賑わう通りの中に消えていってしまった。あれはあれで心配だが、仮にも最前線を張ってるパーティの一員なのだから心配は無用というものか。


「じゃあ、各々適当に見て回ろうか」


「そうだな、ルート行こうぜ」


「私はあっち行ってくる」


 残りのメンバーもそれぞれ散っていったしあたしも息抜きがてらアイテム探しでもするかな。某ドラゴンなRPGにある「ゾンビキラー」みたいなアンデッド特攻アイテムでも売りに出てるといいんだけど。


・・・


「これはどういうものだい?」


「姉ちゃんお目が高い!このポーションは異界人お手製の薬効ポーションさ!多少口当たりは悪いがそこに目を瞑れば質の高いいい商品だぜ!」


 この場にユーナがいないことが悔やまれる。基本的にNPCの店員は親切な作りになってるけど、極稀に「異界人が作った~」みたいな詐欺まがいのことをしてくるNPCもいたりするらしい。だから『鑑定』持ちの仲間がいるとそういう被害には会いにくいんだけど、今回はそのことを失念してしまった。まあ数本買う程度ならいいか。


「なるほど、値段は?」


「1本2500ギルだ!5本まとめて買うなら1本おまけするぜ!」


 アーチの店売りの回復ポーションが1本1250ギルだと考えるとなかなかの値段だけど、それに見合った効果があるかは今のあたしではユーナの元に持っていくまでわからない。手持ちには余裕があるけど、お試し程度にしておこう。


「いや、今回は2本頼むよ」


「あいよ!5000ギルだ!」


「さて次は・・・」


《メッセージを受信しました》


 次はどこに行こうか考えていたら、メッセージが来た。送り主はユーナだ。


『至急集まって。すごいものを見つけた。場所はメイン通りの一番高い宿屋の右にある路地を少し進んだところ。早く』


 だそうだ。あのユーナがすごいというんだから、余程いいものが見つかったんだろう。


・・・


 ユーナに指定された場所に行くと、あたし以外全員集まっていた。


「サンディ遅い」


「ごめんごめん、遠かったんだ。それですごい物ってのは?」


「これ」


 ユーナが出したのは何の変哲もない1本のポーションだ。強いて違いを上げるとするなら普通の回復のポーションより若干色が澄んで見える程度だろうか。


「何それ、みんなはもう聞いたの?」


「いや、まだだよ。ユーナが全員揃うまで待つって言ってきかなくてね」


「どういうこと?」


「やっぱりみんな『鑑定』取った方がいい。こんな貴重なものを他にも逃してる可能性があるなんて信じられない」


「御託はいいから、結局それは何なんだよ」


「口で説明するより私の見えてる画面を見せた方が早い。メッセージに写真送るからそれ見て」


《メッセージを受信しました》


「なにそれ、集まる意味あった?私他にも見たいものあるんだけど」


「い・い・か・ら!写真、見て!」


「わかったわかった」


・・・


「何だこれ、なんだこれ!?」


「ほら、すごいでしょ」


 ユーナから送られてきた写真はポーションに『鑑定』を使ったユーナの視点だった。その鑑定結果が浮き上がっているウィンドウを見ると、そこには


「回復のポーション・魔除(まよけ)

効果:使用者のHPを150回復する。アンデッドに使用した場合、1500ダメージを与えるが回復のポーション・魔除の効果で敵が死亡した場合、使用者に経験値は入らない


と表示されていた。このポーションはアンデッド限定で1500というとんでもないダメージを与える爆弾のような代物らしい。


「こんなもの、どこで買ったんだ?」


「・・・あそこ」


 ユーナが指さした先には、路地を抜けた先で広場に風呂敷を広げてアイテムを出品している人がぽつぽつと見えた。なんで大通りじゃないこんなところで出品しているんだろうか。


「何人か人がいるけど、どのお店なの?」


「あの黒いマントで全身覆ってる怪しい人のところ」


「あの人か。で、そのポーションはいくつ買えたんだい?」


「3つ。今は在庫がそれだけだって」


「でもよ、そのポーションがもっとあればあのクソ強い骸骨どもなんて簡単に突破できちまうんじゃねえか?ならもっと作ってもらうしかないだろ」


「ああ!待てバカ!」


 アルスはそう言って広場の方に駆けて行ってしまった。いくらNPCとはいえ機嫌を損ねたら相手をしてくれなくなる。そんな気遣いがあの猪の如き男にあるとは思えない。1人で先に行ったアルスを4人で追う。

 あたしたちがアルスに追いつくと、既に黒マントと話を始めていた。何か粗相をしていないといいんだけど。


「ちょっと!一番交渉に向いてないアンタが行ってどうすんのよ!」


「いやでも作ってくれるらしいぞ」


「え?あの、いいんですか?」


「・・・別に構いませんよ、材料はまだあるので。それで、何個買いますか?あと8個は作れますが」


「全部で」


 ユーナがそう言い切ると、黒マントは軽くため息をついて懐から瓶に入った透明な水と黒に近い紫色に染まった何かの骨を取り出した。何の素材だろうか、あたしたちでさえ見たことが無い。

 黒マントは取り出した材料を両手に乗せると、材料が淡い光に包まれて宙に浮かぶとそのまま混ざり合い、黒マントの手に戻っていった。黒マントの手にはユーナが持っていたポーションと同じ物が置かれていた。


「・・・なんだ今の」


「見た感じ・・・調合とか?」


「でも薬師でロールしてる人は薬研で地道に薬草砕いてたよ?」


「じゃあ未知のスキルってことか・・・」


「・・・どうかしましたか」


「何でもない。じゃあ8つ分で56000ギルだよね」


「はい、確かに」


「おま、そんな高いのかこれ!」


「これでも安いくらいの性能してる。ここで出し渋ったら一生骸骨を突破できない・・・あと、店員さん」


「・・・?なんでしょう」


「ちょっと見させて」


「ユーナ、まさかあんた!」


 まずい、多分ユーナが黒マントに『鑑定』を使おうとしている。この前掲示板でNPCに『鑑定』を使ったら話しかけることが出来なくなったという書き込みを見た。つまりNPCは『鑑定』系のスキルを嫌がる傾向にあるということだ。それなのにユーナは『鑑定』を使おうとしてしまっている。なんとか止めないと・・・


「あ」


「ユーナ!」


 黒マントとユーナの間に割り込もうとしたら、黒マントのお腹のあたりから黒い線みたいなものが一瞬見えた。次の瞬間、ユーナは胸部に大穴を開けて地面に伏していた。そのまま光の粒子になってユーナは消えていった。


「何も殺すことは・・・!」


「あ、あれ?」


「いない・・・ね」


 ユーナを殺したとみられる黒マントは忽然と姿を消していて、残っていたのはあたしたちだけだった。

というわけで2回目の別視点でした。

これでようやく掲示板回の回収が出来ましたね。謎の黒マント・・・いったい中身はどんな骨なんでしょうか・・・


このパーティの名前の伸ばし棒率が異常に高いので、読みやすさのためにどこかで改名してもらうかもしれません。すまねえ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 脳筋君よりやらかしてるね まあ脳筋君は鑑定を持ってたらやたらめったら鑑定しまくりそうだけど
[一言] 一般化してる世界なら、鑑定って絶対使い方次第で嫌われるよね……。 人間、身体測定の数値だって見られるの嫌がるのに。 いやまぁゲームだとやりがちではあるけどねw
[良い点] ママに敵対したと勘違いしちゃったんですね いい子だなぁ(棒 [一言] 無礼なプレイヤーさんたちは一度『鑑定』を受けた方がよろしいかと。
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