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白骨少女が逝くVRMMO記  作者:
死者の国
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次なる道標

ご高覧いただきありがとうございます。


「・・・で、どういうことなんですか」


『・・・我の口から告げてよいものなのか判断がつかぬ』


 またこれだ。

 あれから、ライラさんの塵と虹色に輝く球を回収した私は王龍さんの住処?に押しかけていた。これまで聞いてきた話から1つの推測を立てたから、その確認をしたかったんだけど王龍さんが全て当たり障りのないような言葉で返してきて進展が全くない。


「じゃあ誰に聞けばいいんですか!()()()()()()()さん!」


『その名で我を呼ぶんじゃない・・・』


 王龍さんがこんな反応をするってことは、王龍さんがあの『ヨルムンガンド』で間違いないんだろう。ミズガルズ帝国の辿った道を知ってしまった身としては、そのミズガルズ帝国を文字通り飲み込んでこんなダンジョンを作った張本人に問い詰めざるを得ない。

 ライラさんに同情しているかと言われればそうなのかもしれない。だって、ある日突然何の前触れもなく巨大な魔物に飲み込まれて、何百年もこんな地の底で蘇り続ける仲間たちを殺し続けてたなんて可哀そうすぎる。


『お主は知りすぎた、予定よりも遥かに早くな。まだ()()()ではないのだ』


「だーかーらー!訳が分からないんです!」


『悪いが、我から話すことは何もない。それよりその遺物をあの死霊の友人とやらに届けてやったらどうだ。我はあの死霊のせいで壊れたダンジョンを直さねばならぬ』


「私ははなs・・・」


 私が王龍さんにしつこく迫ろうとすると、視界が反転して見覚えのある場所に飛ばされた。ああクソ、強制的に転移させられた。しかもご丁寧にヘルヘイムに続く階段の前に。


「絶対いつか聞き出してやるんだから・・・」


「キュウ・・・」


 王龍さんに飛ばされてから、ヴィオがフードの中から顔を出した。なんだか怯えた顔をしていて少し体を震わせている。同じ龍として格上の王龍さんに怯えちゃったのかな?かわいいやつめ。


「おお、久しいじゃないか」


 ヴィオを撫でていると聞き覚えのある嗄れ声が聞こえて、咄嗟に声が聞こえた方を向くと全身をローブで隠して杖を突いている小柄な人がいた。


「おばあさん・・・ですか?」


「いかにも。お前さんに『吸魔』をやったその張本人じゃ」


 おお、本当に久しぶりだ。私がまだなんでもない下級骸骨(レッサースケルトン)だった頃に吸魔とかいうとんでもない壊れスキルをくれたNPCのおばあさんだ。あのスキルが無かったら何回死んでるかわかんないよほんとに。


「元気そうで何よりじゃが、何かあったのかの?大層ご立腹のようじゃが」


「あー・・・えっと、色々ありまして」


「ふむ、なるほどのぅ。では1つ助言じゃ。この世界には『賢者』と呼ばれる知識に富んだ者がいる。その1人が世界樹の根元の泉に住んでおってな、何か知りたいことがあればその者を尋ねるのもよかろう」


 へぇ、そんな人がいるんだ。ゲーム脳の私では『賢者』って聞くと魔法職の最上位っていう認識が強いけど、AAOでは『賢者』は職業じゃなくて称号みたいなものなんだろうか。


「その『賢者』って人なら、何千年も前にこの大陸であった出来事も知ってたりしますか?」


「うむ、知っておるじゃろう。何せ神々の時代の唯一の生き証人じゃからな。」


 おお、それなら王龍さんに聞くまでもなくミズガルズ帝国が何をしたのかとか、『ヨルムンガンド』と呼ばれている魔物さんがどういうものなのか聞けそう。


「じゃが、その泉に住む賢者は知識の対価に相応の物を要求してくる。それには気を付けた方がいい」


 ゲームだし、何か依頼をこなしてから報酬として情報をくれる感じなのかな?それなら普通のことだし気にするまでもなさそうかな。


「そうじゃ、地上に出るなら1つ頼まれごとをしてくれんか?」


「情報を貰いましたし、大丈夫ですよ」


「とある者を探しておるんじゃがこれがなかなか見つからなくての、人探しを頼まれて欲しいのじゃ。わかる者には『神喰』と言えば伝わる。では、頼んだぞ」


《特殊依頼『神喰いの獣』が発生しました》

《依頼を受理しました》


 おばあさんは言いたいことだけ言うと、そのまま姿を消してしまった。え、なんか忍者みたいに闇にスッと消えていったんだけど!何それカッコいい!ヴィオもおばあさんが突然消えたことに驚いてたし、転移の別バージョンみたいな感じなのかな。

 というか人を探すのに身体的特徴を伝えないままどこかに行っちゃったんだけど。『神喰』ってまた物騒な二つ名だね。まあ、なんにせよネリンさんの依頼で地上に向かわないといけないんだしそのついでってことでいいかな。


「じゃあヴィオ、ヘルヘイムに戻ろっか」


「キュウ!」


・・・


 ヘルヘイムに着くと、既に入口の門は開いていてそのまま入ることができた。もうビュートさんをよこすまでもないってことなのかな。とりあえず、お姉さんのところに行く前にペシャスさんのところに行かないと。うう、まさかあんな伝言を託されるなんて思ってもなかったからめちゃくちゃ気が重い。それにライラさんが完全に消えたっていうのがまた伝え辛い・・・

 トボトボ歩いているとあっという間にペシャスさんの家に着いてしまった。もう覚悟を決めるしかない。私は意を決して扉をノックする。


「おお、帰ったか」


 最初ニュラルさんと来た時とは違って、数回のノックでペシャスさんは出てきた。あの時は寝たばかりって言ってたし間が悪かったのかな。


「それで成果はあったかい?なんだか顔色が悪いように見えるが」


「あ、はい。これです」


 ペシャスさんに日記に挟んであった研究資料を渡すと、ペシャスさんは興味深そうに読み始めた。


「ふむ、これは彼女のもので間違いないな。これだけの量だ、すぐに読み解くには時間が足りない。また後日訪ねてきてくれないか」


「それと・・・これも」


「ん?これは・・・」


 息をのんでペシャスさんにライラさんの日記を渡した。ペシャスさんは研究資料を読む時みたく流して読むことはせず、1ページずつ慈しむような顔で読んでいた。

 しばらくして日記を読み終えたペシャスさんは、ふぅと軽く息を吐いて私に向かった。


「ディラ、ありがとう。彼女の・・・ライラの遺していたものを私の元へ連れてきてくれて。なんだか、胸に空いていた穴が満たされたような不思議な感覚だ。おそらく、ライラはもう『いない』のだろうな」


「えっと・・・」


「いい、無理にごまかさなくても私にはわかる。・・・ライラは、最期に何か言っていたかい?」


「『ずっと、愛している』って・・・」


「・・・そう、か」


 ペシャスさんはそう言うと、項垂れて頭を手でわしゃわしゃと搔きむしった。


「悪いが、早く帰ってくれ。この資料を読まねばならないからね」


「・・・じゃあ、また明日来ますね」


 そう言ってペシャスさんの家を後にした。


 ・・・彼女の頬を伝っていた銀色の線は気のせいじゃないはずだ。

というわけで色々あった回でした。

いやー、クリスマスですね。というわけでごめんなさい。3日も投稿が空いてしまいました。いつも楽しみにしてくださっている方もいるというのに本当に申し訳ございません。まさか投稿者もここまで長引くとは思ってもいませんでした。こんなボンクラの身を案じてくださっているメッセージも何件かいただきましたが、投稿者は元気です。息災です。

書き溜め分は消失しましたが、今日からまた毎日投稿していくので『白骨少女が逝く』をよろしくお願い致します。

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― 新着の感想 ―
[一言] フェンリルかな?
[一言] 神喰ねぇ…正体は言わずもがなとしてもそんなのの場所知ってるやつおるんか? 3日程度大したことないからへーきへーき、自分のペースでやればええんやで。
[良い点] 面白かったです。 更新頑張ってください。
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