王龍先生による座学
ご高覧いただきありがとうございます。
総合評価3桁ありがとうございます。自分の書きたいように書いてるだけなので、こんなにも評価していただけるとは微塵も思っていませんでした。これからも好き放題やっていくので、不肖の身ではありますが見守っていただけると幸いです。
『では何から説明するか・・・まず、7つの属性の関係は知っているか?』
「はい。火は氷に強く、氷は風に強く、風は雷に強く、雷は水に強く、水は火に強く、光と闇はお互いに強い、でしたよね」
これはどのゲームでも基本となる相性表みたいなものだ。三すくみならぬ五すくみとでも言えばいいのだろうか。あと光と闇の2種。AAOでは、特定の属性の魔法を組み合わせて合体魔法なんてこともできる。βテスト組がやってた。羨ましい。
『うむ。そこでお主らアンデッドだが、アンデッドは基本的に闇属性に属しておる。そして回復魔法やそのアイテムの類は光属性の魔力を大量に持っている。後は言わなくてもわかるだろう』
あーなるほど、だから破邪のポーションの詳細に『アンデッドに3000ダメージ』なんて馬鹿な事が書いてあったわけだ。しかし、私が破邪のポーション・・・長いな、破邪ポでいいか。私が破邪ポを浴びたのは破邪ポの効果がわからなかったというのも原因の一つだ。
「ダンジョンでインベントリのアイテムの詳細を見れなかったんですけど、ここでは見れてダンジョンの中では見れないのって、理由はあるんですか?」
『む、ここでは鑑定なしでも詳細を確認できていたのか。詳しいことは我にもわからぬが、この空間は一種の安全地帯のようなものだからな。それが関係しているのかもしれぬ。しかし、お主には本当に興味が尽きぬな。面倒を見てやっているのだ、精々我を楽しませてくれ』
ないはずの背筋がゾワゾワした。多分今王龍さん、めちゃくちゃ悪い顔してるんだろうな。
それにしたって安全地帯、ね。通常プレイヤーでいうところのマイハウス的なものなのかな。βテスト組のアンデッドプレイヤーは開始地点の小部屋がセーフティーゾーンだったし、それに近いものなのかもしれない。
『次に、お主はこの世界についてどれほど知っている?我の常識では推し量れぬところがお主にはあるのでな、今いる大陸の名も知らぬということもあるやもしれん』
「さすがにそれくらいは・・・アーゲリア大陸ですよね」
このAAOの世界で基本の行動範囲となるのがアーゲリア大陸だ。βテストの期間では、始まりの町から王都までの道のりと南に広がる馬鹿みたいに広い森、東の方にある人族至上主義な聖皇国くらいしか見つかっていないようだ。あとは海底にあるといわれてる魚人の国くらいだろう。
βテストの期間はそれなりにあったはずなのに、それだけしか見つかっていないらしい。それほどにAAOの世界は広大なのだ。公式が外の大陸についての存在を匂わせているらしいが、見つかるのはいつになることやら。
『うむ、そしてここ邪界樹の洞穴の上に聳え立つのが世界樹と対になる邪界樹と呼ばれる巨大な樹だ。さらにその近辺に魔国という魔族が治める国がある。まあ、お主はまずこのダンジョンから出ることを念頭に置いておくがよい』
なんかすごく重要なことを一息にサラっといわれた気がする。世界樹?邪界樹?魔国?これ、もしかしなくても私が一番進んだ情報を持ってるんじゃない?そう考えるとテンションが上がってきた。しかし、その情報を持っているのがファーストデスがポーションによる自殺の貧弱な骨、というのが少し悲しくなる。最前線の攻略組なんて目じゃないくらいのつよつよな骨になって、未知の情報をばらまいて気持ちよくなってやろう。なんだかやる気出てきた。
『でだ、今の話を聞いてダンジョンから一刻も早く出たそうなお主のために、この邪界樹の洞穴に蔓延るアンデッドどもの簡単な倒し方を教えてやろうではないか』
え、軽い一撃で私のHPのほとんどを持っていくあの恐ろしい魔物さんに倒し方なんてあるんだ。
『簡単なことだ。お主の持っている破邪のポーションを浴びせてやればいい』
あー・・・確かに簡単だ。ここの最下層にいる魔物さんたちは私に対して中立状態だし、反撃される前に一発でHPを全損させてやればいいわけだ。
「でも、このポーションで一撃で倒せるかなんて保証はないんじゃ・・・」
『何を言っておる、何のためにお主にスキルをやったと思っておるのだ』
なるほど。鑑定でHPが3000以下の魔物さんを吟味して、背後からコッソリと破邪ポをお見舞いしてやればいいわけだ。でも数が残り2個とかなり心許ない。また拾えればいいんだけど。
『そこで鑑定に関することだが、1つだけ注意点がある。生身の魔物や人間に鑑定を使うと、使用した相手が非常に強い不快感に襲われる。百聞は一見に如かずだ、お主に鑑定をかける。じっとしていろ』
王龍さんの魔力が一瞬揺らぐと、回転椅子に座らされて数分間回され続けた後のような感覚に陥る。不快どころの騒ぎじゃないよこれ。人によっては強制ログアウトものだ。
そういえば、AAO運営が『他のプレイヤーに鑑定をかける際は、必ず相手の了承を得てからにしよう』みたいなこと言ってたっけな・・・そりゃあこんなことされたら魔物でも怒るね。納得。
でも、βテスト組の配信ではお互いに鑑定をかけあってたような気がするんだけど。人間がする鑑定と魔物がする鑑定に違いでもあるんだろうか。
あれ?私って生身じゃないよね。骨だよね。なんで効果があるんだろう。プレイヤーだからかな。
「よくわかりました・・・気を付けます」
『それで、この最下層にいるアンデッドどもだが、今のお主では太刀打ちできぬレベルの者がそこら中にいる。具体的には、骸骨将軍、骸骨竜騎兵、骸骨大魔導とそれらの下位種族といったところか。今挙げた3つの種族には間違っても手は出さない方がよい。死後にまで残る呪いをかけられるからな』
あらあら、名前を聞くだけでも肝が冷えるようなラインナップですこと。恐ろしいですわね。
いけない、恐怖のあまりお嬢様になってしまった。
『お主がアンデッドどもを屠っていけば、いずれお主自身の進化への道も開けてくるだろう。精進するがよい。それに、この先役立ちそうなスキルも持っておるしな。ああ、そうだ。それともう1つ、鑑定に関する注意だ。鑑定は使うごとに魔力を消費するのだ。無闇矢鱈に使っているといざという時に後悔することになる』
どうやら鑑定はMPを消費して使うものらしい。私の15という貧弱な数値で何回使えるんだろう。ステータスはこまめに確認しないとね。
「わかりました、肝に銘じておきます」
『では、ダンジョンへ送るとしよう。他に聞きたいことはないか?』
「大丈夫です。お願いします」
・・・ん?この先役立ちそうなスキル?何のことだ?しまった、それだけでも聞いておくべきだった。それに死後も残る呪いって、デスペナルティとは違うのだろうか。そういえば破邪ポで死んだとき、デスペナルティとかなかったっけ。やばい、今になって聞きたいことが山ほど出てきた。
だからお母さんに人の話をもっと聞けって言われるんだよ私。まあ、また戻ってきたときに聞けばいいよね。
・・・
『念話(邪)』
効果:同じスキルを持った者に念話を飛ばすことができる。一定以上の実力の差があると、このスキルを譲渡することができる。このスキルは失われない。
『鑑定』
効果:使用した相手の力を見抜くことができる。使用する相手の力量によって、見える情報に差がでる。
ようやくAAOの世界の詳細が明らかになってきましたね。早く書けよという気持ちは痛いほどわかりますが、如何せん説明パートは苦手なのです。
それともうお気づきかもしれませんが、理菜は割と残念な頭の持ち主です。でも悪い子ではないので生暖かい目で見守ってあげてください。
あと、せっかくなのでスキルの紹介を最後に挟みました。他のスキルについてはまたの機会にでも。