ワケガワカラナイヨ
ご高覧いただきありがとうございます。
2/12 一部修正しました。
思い出した。そうだ、あのAIに訳のわからないことを言われてAAOの世界に送られたんだった。なんとなく察してはいるけど、まずは自分がどんな状況に置かれているか確認しないと。でもあの渋い声の主に聞こうにも声が出ないからどうしたものか。念話とか言ってたけど、どうすれば習得できるのか全くわからない。
『・・・ふむ、その様子を見るにスキルの取り方が分からないようだな』
ナイス渋い声!察しが良すぎる!肯定の意味を込めて全力で首を縦にぶんぶんと振る。
《邪ナル王龍『繝ィ繝ォ■?繝ウ繧ャ繝>繝』が、ディラにスキル『念話(邪)』を譲渡しようとしています。受け取りますか?》
▶YES
▷NO
突然私の眼前にメッセージウィンドウが表示された。
なんだこの名前。それに王龍って・・・もしかして私、とんでもない人(?)と話しているのではないだろうか。このメッセージを見るに、王龍さんは私に『念話(邪)』というスキルを渡そうとしているらしい。スキル名とか王龍さんの名前とか聞きたいことは山ほどあるけど、念話ができないことには何も始まらない。
《『念話(邪)』を受け取りました》
《称号『邪王龍の友』を取得しました》
『どうだ、これで我と言葉を交わせるはずだが。声を発するのではなく、頭の中で話したいことを思い浮かべてみるといい』
「・・・これで大丈夫ですか?」
『うむ、問題ないぞ。我に聞きたいことは山ほどあるだろうが、まずは客人のことを教えてくれ』
「えっと、私はディラといいます。この世界に放り込まれて気づいたらここにいました」
『ディラか、いい名前だ。我は繝ィ繝ォ■?繝ウ繧ャ繝>繝という。今は聴き取れぬであろうが、成長を続ければいずれは我が真名を知ることが出来よう。ところで、お主はここがどこか知っているか?』
「いえ、わからないです」
そう、わからないのだ。AAOのPVやβプレイヤーの配信は幾度となく見たが、このような場所は見たことも聞いたこともなかった。本来は始まりの町『ノーリ』が開始地点となっていて、ノーリ周辺のフィールドボスを討伐すると自分の所属運営に沿った国へとプレイヤーごとに分かれていく・・・はずなのだが。
そもそも、視覚がおかしいというのもある。せっかく会話できるようになったのだから私の今の状況を王龍さんに聞いてみよう。
「私、視界がおかしいんですけど今の私ってどうなってるんですか?」
『ふむ、それも道理だろう。なにせ今のお主は下級骸骨、物理的に目が無いのだからな』
そういえば、最初に王龍さんが私のこと下級骸骨って言ってたっけ。それにしたって骨・・・骨かあ。あのAIが言ってた骨ライフってそういうことか・・・。こんなことならちゃんとキャラメイクしておけばよかった。キャラ作り直すのも選択肢としてはなくもないけど、作り直したら私の唯一のアイデンティティである最速ログイン(AI調べ)すらもなくなるし、何よりあのクソAIに負けた気がして悔しい。
というわけで、このまま頑張ることにしてみる。他に私みたいな目に合ってるプレイヤーがいるのかわからないけど、多分相当珍しいことになってると思うから唯一無二のプレイヤーを目指してみよう。
「このぼんやりとした視界って何が原因なんですか?私の体も赤い靄だし」
『それはおそらく骸骨種特有のものだな。お主は目は見えぬが魔力を見ることができるのだ。試しに我を見てみるといい』
「・・・うわぁ」
声のする方へ目を向けてみると、とんでもない量の濃い紫の靄が見えた。私の体から出ている赤の靄の量と比べても、格の違いというものがよくわかる。やたらと仰々しい二つ名や読めないし聴き取れない名前からして、やはり王龍さんはとんでもない存在なのだろう。
『それと、ここは《邪界樹の洞穴》というダンジョンだ。世界の最西端に位置している。我とお主がいるのは最下層で、この空間を出るとそこらにアンデッドどもが蔓延っておる。お主ならばこちらから攻撃せぬ限り敵対されることはない。存分に探索するといい。』
邪界樹の洞穴・・・やっぱり聞いたこともないダンジョンだ。世界の最西端にあるとか言ってたし、名前からしてもかなり高難度のダンジョンなのだろう。
それにいいことを聞いた。アンデッドプレイヤーならば、アンデッドの敵はすべて中立状態になるらしい。βテストでもアンデッドプレイヤーは多少いたが、そんな情報は聞いたことがない。正式リリースで変わったんだろうか。
『お主はまず自分を知る必要があるな。その様子では自分の力すらわからないのだろう。ステータスを見てみるといい、ステータスオープンと念じると自分のステータスが確認できる』
◇◆◇◆◇
称号:セットなし
名前:ディラ
種族:下級骸骨
職業:‐
所持金:10000ギル
Lv:‐
HP:200/200
MP:15/15
SP:3
装備:なし
スキル:「闇魔法Ⅰ」「錬成」「瘴気」「念話(邪)」
パッシブスキル:なし
取得称号:『管理者のお気に入り』『艱難辛苦を求めし狂人』『最速の異界人』『邪王龍の友』
アイテム:存在進化のスクロール
◇◆◇◆◇
先ほど王龍さんにスキルをもらった時に獲得した『邪王龍の友』は覚えているけど、他に3つ見覚えのない称号がある。名前からして不穏すぎるんだけど。どうやら取得した称号とアイテムは詳細が確認できるらしい。
▽▼▽▼▽
『管理者のお気に入り』
効果:一部NPCからの好感度上昇(大)、一部機能の制限
条件:???
大いなる存在に見初められし者の証。
『艱難辛苦を求めし狂人』
効果:瀕死時にパッシブスキル『狂化』を付与
条件:???
自ら苦難を欲する狂人の証。その心に宿すは人か獣か、はたまた・・・?
『最速の異界人』
効果:フィールドを移動する速度が上昇する(微)
条件:誰よりも早く世界へ降り立つ
なんでそんなにいそいでるの?
『邪王龍の友』
効果:邪ナル王龍『繝ィ繝ォ■?繝ウ繧ャ繝>繝』の好感度上昇(小)
条件:???
かつて世界に仇なす存在だった者の友の証。
存在進化のスクロール
効果:使用者の進化先を見通すことができ、存在進化が解放される(プレイヤー:『ディラ』以外には適応されない)
△▲△▲△
・・・どうしてこうなった。
えっと、下2つの『最速の異界人』と『邪王龍の友』は置いておくとして、問題は上2つだ。なんだよ管理者って・・・なんだよ狂人って・・・それに一部機能の制限ってなんだろう、メニューを弄り回しても特におかしいところは見当たらない。もうわからないことは置いておこう。
それで一番の問題児といっても過言じゃないこれ。存在進化のスクロールとやら。進化先がわかるだけでもおかしいのに、存在進化というものができるようになったらしい。隠し要素か何かだろうか。
『どうだ。自身のことが知れたか?』
「わからないことが増えたような気がしますけど、概ね問題ないと思います。それで、ここの探索をしたいんですけど、扉とかはないんですか?」
『この空間に扉はない。だが、我の意志でこの空間に出入りする者を決めることができる。ここから出たいときは我に言うとよい。外からここに戻りたい時は念話で我に話しかけろ。』
「え、念話ってそんなに範囲広いんですか?」
私のイメージだと、精々直径数メートル内の人間に念話を飛ばせるくらいのものなんだけど、王龍さんは色々規格外な存在だからそういうものなのかな。
『お主にやったスキルは我の特別製だ。そこらの有象無象とはわけが違うのでな』
そういうものらしい。
「えっと、色々ありがとうございます。じゃあ、ダンジョンに飛ばしてもらってもいいですか?」
『いいだろう。慣れていないと酔うかもしれぬが、我慢しろ』
王龍さんの紫色の魔力が一瞬揺らぐと、天地がひっくり返ったような感覚に陥る。最初にクソAIに転送された時とはまた違うものなのかな。
『送るぞ、準備はいいな』
それ、今聞きます?そういうのって、行動に移す前に聞くことじゃないかなあ。私から頼んだことだから文句言えないけども。
なんて考えていると、硬い地面に着地した感覚があった。
・・・
FROM システムメッセージ
件名 【重要】ディラ様のゲーム開始地点について
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ディラ様
この度は、Ancient Adventure Onlineをご利用いただきありがとうございます。
AAO運営の者です。
ディラ様のキャラクタークリエイト時の予期せぬ不具合によって、本来予定していたゲーム開始地点より、ディラ様のゲーム開始地点が大幅に座標のずれた場所になってしまいました。
本来であれば、直ちにキャラクター削除の後、キャラクタークリエイトからやり直しとなるのですが、今回は明らかにこちら側の不手際ということもあり、やり直し等の措置はディラ様にお任せすることとなりました。
一からの再スタートを望むのであれば、こちらのメールに返信をお願いします。もし、そのままゲームを進めることを希望するのであれば、返信は不要となります。
今回の件でディラ様には多大なご迷惑をおかけしております。大変申し訳ございません。
深くお詫び申し上げます。
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理菜の視界は現在、温度ではなく魔力を感知するサーモグラフィを覗いた感じになっています。AAOの世界はどんなものにも魔力が宿っているため、ダンジョンの壁や天井も視認(?)できます。ただ、モンスターや人間の顔などの細部は視認できず、人の形をした魔力の塊のように見えています。
ドラ〇エのフレイムがわかりやすい例かも。