【ゆる募】火力
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死んで王龍さんのところに戻った私は、話もそこそこにダンジョンに飛ばしてもらった。だって、明らかに声色が楽しそうだったんだもん!あのままあの空間にいると絶対馬鹿にされてたよ私!「だから言っただろう」って呆れられる!現状話し相手が王龍さんと死霊さん(のち死ぬ)だから、人間(?)関係の縺れは回避しないと孤独死してしまう。友達いなくてDV彼氏に依存する女の子ってこんな感じなのかな・・・
竜騎士さんが待ち構える部屋に続く通路を華麗にスルーして、死霊さんの研究室に足を運ぶ。死霊さんが部屋にあるもの好きに使っていいって言ってたし、遠慮なく部屋の中を漁らせてもらうことにする。
研究室に死霊さんはいなかったけど、お構いなしに物色を開始する。相変わらずここにはいろんな色の魔力があって思わず心が躍ってしまう。同じような色がずーーーっと続くダンジョンの中とは大違いだ。
部屋の中にある物に片っ端から『看破』を使っていって、どれを持っていこうか見定めようと思ったんだけど、置いてあるほとんどの物が名前と効果が隠蔽もしくは文字化けしていてまともに『看破』が通用したのはこの3つだけだった。
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減命の蜜種
効果:種族問わず使用者のHPとMPを全回復し、SPを10付与する。使用時の最大MPに応じて最大HPが減少する。
英華の宝玉
効果:なし
瘴気の編み上げ靴
効果:装備者に瘴気の状態異常を付与する(永続)。地形ダメージを軽減する(中)。装備時、一部NPCからの好感度低下(大)
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デメリットがあまりにも大きいエリクサーと、現状効果がない綺麗なだけの石と、結構強いけど履いたら嫌われる靴だった。なんか微妙なラインナップだ。でも、初めて私でも回復ができるアイテムと巡り会えたのはすごく嬉しい。もしかしたら死ぬことでしか回復ができないシステムなんじゃないかと心配していたから安心した。
とりあえず靴は装備して蜜種もインベントリに入れておくとして、この『英華の宝玉』とやらはどうしよう。なにも効果がないし持ってても意味はないんだろうけど、インベントリはまだまだ余裕があるし持ち歩いてたらポ〇モンの卵みたいに何か生まれたりするかもしれないから、とりあえず持っておくことにした。
「そういえば、これはまだ見てないね」
死霊さんの核らしい天井から釣り下がってる虹色のこれだ。特に今どうこうしようという気はまるで無かったけど、なんとなく気になって『看破』を使ってみた。
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呪いに呑まれた邪なる宝珠
効果:「■?■」の精神の器
『何故、こうなったのか。何故、私だけ残ってしまったのカ。あノ時、皇太子様ヲ全力で止めていレばこうならなかっタのか。いくら考えてもわからナイ。嗚呼、気が狂イそうだ。もウ、疲れタ。誰か、誰か私ヲ解き放っテくれ・・・誰デもイい・・・ダ、レカ、イナイ、のカ・・・』
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「うっ・・・」
あまりに悲痛な叫びに、ないはずの胃が縮こまって吐き気が襲ってきた。そうだよね。こうなって当然だ。私に対しては普通に振舞ってたけど、数百年も1人ぼっちでこのダンジョンに閉じ込められてたらいつ狂ってもおかしくなんてない。ここでこの宝珠を壊すことも考えたけど、死霊さんは最後まで仲間を眠らせ続けることを選んだんだし、それに水を差しちゃいけない気がした。
なんだか見てはいけないものを見てしまったような気持ちになってしまう。親に怒られた後の何とも言えない気まずさのようなものを感じる。私は何も見なかった、私は何も見なかった・・・よし。
無い頬を両手ではたき、気持ちを切り替えて研究室を後にする。また馬鹿みたいに長い道を歩いて元の通路に戻ると、左から軍隊が行進しているかのような音が聞こえてきた。
「え、なに?」
左に続く通路の奥をよく見ると、少なく見積もっても30を超える魔物さんたちが一直線に行進していた。そこらへんにいる魔物さんとは違って、明らかに統率された動きで私には目もくれずに竜騎士さんがいた部屋につながる通路に入っていった。そっちに行っても行き止まりしかないのに何をしに行ったんだろう。呆気にとられて『看破』を使うのも忘れてた。もったいない。あの大量の魔物さんを追いかけたいのはやまやまだけど、先に進んで私自身の進化につながる要素を見つけたい。
湧きあがる好奇心をぐっと抑えて魔物さんたちが来た方向へ進むと、中くらいのサイズの部屋に出た。中には4体の魔物さんがいた。魔力が赤いんですけど。また戦闘かとげんなりしながら『看破』を使ってみると、4体ともHPが2000にも満たないような騎士さんだった。変なスキルも持ってないし、どうやらただの雑魚っぽい。でもこの数を相手にするのは初めてだから対集団の練習にはなるかもね。
ということでなるべくまとめて当たるように狙いを定めて『闇波』を撃つ。『闇波』は魔物さんが固まってるところに直撃して、4体のうち3体に『闇波』が当たったことで騎士さんたちは私に敵対した。さあ捌ききって見せよう!
さっきの魔物さんの集団と違って統率も取れていない様子の騎士さんたちは、バラバラに私に切りかかってきた。1体目の騎士さんの攻撃を躱して足払いをし、私に迫る2体目の騎士さんの足元に転がしてあげれば2体目の騎士さんは転ばせた騎士さんに足が引っ掛かってその場で盛大に転倒した。背後から切りかかってきた3体目の騎士さんの剣を受け流して頭に突きを1発お見舞いしてみる。
「やっぱりダメージ低いなあ」
与えられたダメージは200ほど。流石にこの先強敵と戦うには火力が足りなさすぎる。あの竜騎士さんにもリベンジしたいし、どうにかしてこの低火力を補う方法を見つけたい。間髪入れずに襲い掛かってきた4体目の騎士さんに思いっきり突きをしてみるも、それでも300には届かない。
「やっぱり手数しかないかなあ」
疲れるからあんまりやりたくないけど、3体目の騎士さんに連続で突きをしてみる。でも回数を重ねるごとに威力が落ちて突きの回数のわりにダメージが出てない。なんかこう、1発1発の威力を上げる方法ないかな。力を籠めずに貫通力を上げるような・・・そうだ、あれとかいいんじゃないかな。
丁度いいタイミングでさっきその辺に転がした1体目と2体目の騎士さんが起き上がってきたから、今思いついた攻撃方法を試してみる。
「はあっ!」
手首を捻って細剣を回転させるように突きを放つと、重なって起き上がった騎士さん2体に突き刺さって騎士さんたちの胸に風穴があいた。おお、思ったよりうまくいった。拳銃の銃弾みたいに回転させると貫通力が上がるかなと思ってやってみたけど、まさか穴がぽっかりと空くなんてね。
この方法で連続突きもやってみると、さっきとは比べ物にならない威力が出て1体目の騎士さんを倒せてしまった。具体的には900くらい残ってたHPを0まで持っていけてしまった。これはいいね。武器も強化していけばこの騎士さんを1撃で倒せるくらいにはなりそう。そのまま連続突きで残りの騎士さんたちをいじめていると、メッセージが頭に響いた。
《熟練度が規定値に到達しました》
《スキル『細剣術・猛撃』を取得しました》
お、細剣周りのスキルがゲットできたみたい。これで近接がまた強くなった。そろそろ『闇魔法』も鍛えないとなあ。『闇撃』と『闇波』も使い方次第では強いけど、私もでっかい魔法出してヒャッハーしたい。というわけで残りの騎士さんたちを『闇魔法』で倒しておいた。早くⅢに進化しないかな。
騎士さんを全員倒してドロップした骨を拾っていると、部屋全体が揺れだした。え、地震?こんな地下とか生き埋めになっちゃうよ。
揺れが収まって周囲を見回すと、いつの間にか真ん中に大きな階段が出来ていた。しかも下へ続く階段が。
「ここって最下層だって王龍さん言ってたよね・・・?」
そう、ここは『邪界樹の洞穴』の最下層のはずなんだけど、何故かさらに地下へと続く階段が現れた。どす黒い魔力を纏った階段だ。いったい何処へ続いているというんだろうか。
「ちょっと覗くくらいなら大丈夫かな」
階段が続く先をちらりと覗いてみると、そこには闇が広がっていた。わずかな光すらない圧倒的な闇だ。私が魔力しか見えないからこうなってるのか、実際もこんな風になってるのかはわからない。好奇心のままに階段を1段降りるとメッセージウィンドウが出てきた。
《警告、この先には濃密な呪いが漂っています》
《現在のプレイヤー『ディラ』がこの先に踏み入ると、3秒後に直ちに死亡します》
《それでも先へ進みますか?》
▶YES
▷NO
帰りまーす。いや無理無理、3秒で死亡とか無理に決まってんじゃん。しかし呪いって言ったね今。なんかのアイテムのテキストに瘴気が溜まって呪いがどうこうって書いてたし、この『瘴気』ってスキルが進化でもしたら入れるようになるのかな。
そういえば、この階段だけ明らかに周りのダンジョンの壁と魔力が違うけどただの石じゃないのかな。
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冥府への階段
効果:???
死者を誘う冥府の入口。無念のうちに死んだ者の魂を感知し、その者の前に現れる。罪人の魂は更なる深淵へと向かわされる。
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スキル取得&階段回でした。
理菜がそこそこに戦闘できるようになってますが、あくまでも『細剣術・〇〇』というスキルのおかげなので細剣を手放したらただの人、いや骨になります。だからと言って格闘術を鍛えると常時強くなるかと聞かれたらそれはちょっとわかんないです。ゆるして。
あと多分次回は別視点です。違う可能性もあります。




